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第537話 双子の行き先




ガガガガッ!

カーンカーンッ!

ゴゴゴゴッ!


「………なるほど」


あの件から翌日、ラファエルと共に服従を誓った双子を連れて国境から少し道を外れた所まで来た。

双子と近づけないように、私の周りは私の騎士が囲っている。

僅かだった音が、近づくにつれ大きい音となり、私は耳に手を当てた。

国境から歩いて3分ほどの所に長方形型の台が作られており、そしてそこから細長い線が2本、平行に地面に彫られ、街の方向とは反対側に伸びていってる。

その作業の音だった。


「線路を作ってたんだ」


お父様が丸を付けたラファエルの案が、無人で動く路面電車。

その案を優先的にしているらしい。


「この少し地面から上がっている台は駅か」

「へぇ。ソフィアの言葉では駅と線路っていうんだ」


大きな音の中で呟いたのに、ラファエルには聞こえていたようだ。

地獄耳?


「いいね。その呼び名もらって良い?」

「いいよ。………はっ!! これも案に入るの!?」

「入らないよ」


慌てていると、ラファエルに苦笑されました。

だって、何が原因で共同開発になってしまうか分からないもの…


「サンチェス国側の国境――ここと、ガルシア公爵領街と、温泉街と、北のスキー場予定の場所と、テイラー国側の国境で繋ごうと思ってね」


ガルシア公爵領にある街は、ガルシア公爵領街って呼び名なんだ…

もうちょっとひねりが欲しいと思うけれども…


「エイデン公爵領には?」

「考え中。あの辺何もないし」

「でも、そっちの国境を使う人もいるんでしょ? だったらエイデン公爵領側の国境から温泉街へ直通繋いだら? 温泉街の駅を一緒にしてたらそのままスキー場行きも出来るし」

「………そうだねぇ…」


あんまり乗り気でないラファエルに首を傾げる。

利益を考えるなら、その方がいいと思うけど…


「………ああ、先に国境が完成しそうなのが南東の、こっちの国境だからね。南西の国境に着手するのはまだ先になるから、こっちだけでいいかなって」

「そう?」

「それにあっちにまで回せる手がないから。こっちを先に仕上げてテイラー国の国境まで完成したら、温泉街から南西国境までしようかと」

「なるほど」


私が頷くと、ラファエルが双子を見た。


「ということで、手が足りないからね。猫の手にもならないけれど、労働力確保したかったんだよね」


………ぁ…悪い顔をなさっておられる…

双子はラファエルに見られ、顔色を悪くした。

労働などしたことがない――いや、汚物処理でこりごりだっただろうに。

私に雇えと言ってくるから。

けれど働かなければ食べていけないからね。


「騎士見習いに採用できなかった者達いたでしょ? だから彼らをこっちに回した。足腰が強い候補者達だったから、こっちでもいいか打診したんだよね」

「………で、食いついたのね?」


チラホラ見た顔があり、聞けばラファエルが頷く。

平民にとっては、願ったり叶ったりだろう。

働き口が見つかり、お金をもらえるから。


「技術者には同時進行で乗り物作ってくれてるよ」

「よく路面電車なんて思いついたよね…」

「路面電車って言うんだ? それももらって良い?」

「いいよ。でも大丈夫なの? そんなもの、一朝一夕では出来ないでしょ?」


首を傾げると、ラファエルは笑った。

あ……ランドルフ国民には簡単なんだ…

ラファエルの笑みだけで察してしまった…


「馬車をそのまま大きくして、耐久性を考慮して丈夫な外装にし、タイヤ、だったっけ? それを自動で動かせればいいんでしょ?」

「電車なら車輪、かな……?」

「そうなんだ。自動答案回収機の原理を利用して大きくするだけだから、そんなに難しいことはないかな」


………ぁ、そういえば、私がランドルフ国に来る前に、既に回収機があったっけ…

自動で動けるタイヤを作ったのは私の案で思いついたって言ってたけど…


「………っと、忘れてた。お前らはとっとと仕事しろ」


急にラファエルが双子を冷たい目で見て言った。


「働かなければ給金も出さないぞ」


つまり食べ物に有り付けないということ。


「私ももう助ける義理もないしね」


双子の前でもう繕うことをしなくていい私は、素でラファエルと話し、双子にも素で言った。

2人は怯えながら、真っ青の顔のまま働いている者達の元へ歩いて行った。

一応見張りという名で双子の後に続いたラファエルの騎士らが、職人達に事情を説明し、双子達は持ったこともない機具を渡され混ざっていった。


「………さて、何処まで保つかな」

「………多分音を上げるのは早いと思うよ」

「だね。甘やかされて育ったお坊ちゃまだから」


私はラファエルに腰に手を当てられ、その場を後にするように促された為、抵抗なく従い私は足を動かした。

アーク・ディエルゴが見たら卒倒しそうだと思いながら、私は帰ったらお父様とお兄様に手紙を出さなきゃな、とため息をついたのだった。


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