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第532話 原因はやっぱり




ふと目が覚める。

こんな事滅多にないのに。

………昼間怒りすぎたのかな…

感情がまだ高ぶっているのかもしれない…

隣に寝ているラファエルを起こさないようにゆっくりと起き上がる。

部屋は暗く、けれど今まで眠っていたので、なんとなくは見える。

1つ欠伸をしてベッドから降りようとして、目の前に黒い物体が降りてきた。

ビッ……クリしたなぁ…もぉ…


「………お帰りライト」


ラファエルを起こさないように小声で言う。

ゆっくりと頭を下げるライトに、私は隣の部屋を指し、自分も向かった。

裾の長いカーディガンを羽織りながら。


「………どうだった?」

「こちらが、サンチェス国王からのお返事になります」


ライトが差し出してきた手紙を私は無言で受け取り、取りだして読んだ。


『ソフィア、元気そうだな。

 ラファエル・ランドルフの案だが、いいだろう。

 同封されていた案の中で1番良いだろう物に印を付けてある。

 それが早急に完成すれば、メンセー国との同盟はスムーズにいく可能性はあるだろう。


 ソフィア、ラファエル・ランドルフをあまり甘やかすな。

 王として立つなら、これしきのこと乗り越えられなければ、この先厳しいぞ。

 間違えるなよソフィア。

 お前の案ではなく、ラファエル・ランドルフの案がランドルフ国に必要だということを。

 お前はソフィア・サンチェスということを忘れるな。

 お前はランドルフ国の何の助けにもなれないことを自覚しろ。

 所詮お前はサンチェス国王女なのだ』


私は思わずお父様の手紙を握りつぶしてしまった。


「~~~~~あの頑固親父っ!」

「………姫」

「~~~~~分かってるわよ」


私がランドルフ国の――ラファエルの助けにならないって、どういう事よっ!

そりゃ私は王女だけど!

サンチェス国王女の肩書きだけだけど!!

私の案はちゃんとランドルフ国のためになってるじゃないっ!!

怒りに任せてぼふんっとソファーに座った。

ぁぁ、もぉ……

お父様を認めさせるにはどうしたら…


「………姫、よろしいでしょうか」

「………何……」


お父様をどう言いくるめようか考えるために頭を抱えていたら、ライトが床に片膝をついて私を見ていた。

その真剣な目に、私は目を見開きライトを見返す。


「サンチェス国王のお言葉をそのまま伝えます。――――」


ライトはお父様と話してきたのか、珍しい。

と思っていたけれど、ライトを通じてのお父様の言葉に、またもや私は驚きで目を見開くことになる。


「………わ、私の案って……私に権利があるだけなの……? 作ってくれたランドルフ国――ラファエルの物じゃなくて…!?」


そんなこと、ラファエルもお父様もお兄様も言ってくれなかったじゃない。

私はずっと、ランドルフ国の物だと思っていたのに!!


「はい。この目でその契約書も見てきました。サンチェス国王とランドルフ国王の玉璽が押された正式な物でした」


私は愕然とした。

どうしてそんなことに…?


「わ、私はそんなの聞いてない…っ」

「………」


真っ青になりながら首を横に振るも、ライトは何も反応してくれなかった。

そのままライトが頭を下げてその場から姿を消した。

報告は終わったから消えるよね…

そうだよね…

力なく項垂れてしまう。

こんな状態で、1人にしなくたって……


「ラファエル……どうして……」


お父様の厳しすぎる言葉の意味が分かってしまった。

私が案を出しても、ランドルフ国の助けにならない。

………本当に、そうだ……

そんな契約書があったのでは……


「………やっぱり、私がラファエルを追い込む原因じゃないの…」


お父様の脅しがなくても、私がラファエルの足枷になっていたことを知った。

お父様が私を引き合いに出さなくても。

どちらになっても私がラファエルを追い詰める原因だった。

お父様に向けていた怒りが消えていき、まるで相手に向けていた剣先が自分に向いた気になる。

私は顔を手で覆った。


「………そんな契約書……なんで無理矢理奪ってきてくれなかったの…」


契約書さえなければ、なんて思ってしまう。

分かってる。

そんな事出来ないことは。

だったら今後、私は案を出せないじゃない……

ラファエルの力になれない……

………何とか……


「………ぁれ……?」


“私の”案はダメなのよね…?

じゃあ、“ラファエルの案に”助言するのは……有り……?

………うん、とにかくラファエルが起きたら聞いてみよう。

契約書の件も、その契約書の抜け道も。

そう決め、私は心の中でソフィーを呼んだ。

お茶の用意をしてもらい、私は乱れた心を落ち着かせるようゆっくりと目を閉じた。


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