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第522話 自業自得 ―R side―




ルイスに執務室に無理矢理連れて来られた。

せっかくソフィアが甘えてくれたのに!!

書類にサインしながら、恨みがましい目をルイスに向けるも、さっきから無視され続けている。


「せっかく滅多にないソフィア甘えだったのに」

「………」


反応なし。


「滅多にない我が儘だったのに」

「………」


…反応なし


「ルイスが無理矢理引き離して、ソフィアに嫌われたらどうするんだ」

「………」


……反応なし!!

黙々とルイスは自分の仕事をしている。

何か返せよ!!


「………それにしてもソフィアは次々といい案を出すよね」


ピラッとアースがソフィアに確認してきてくれた書類を取る。

平民の行き来の道の暗さなんか考えもしなかった。

祭りばかりに目が行きすぎていた。


「そうですね。各領地にも常時暗闇を照らす灯りが作れれば、防犯にもなるでしょうね」


お、ルイスが反応した。

仕事じゃなくて、さっきの俺の恨み言にも反応しろよ!!

俺にとってはそれが一番大事なんだからな!!

ソフィアの機嫌を損ねたらどうするんだ!


「じゃ、それ任せる」


腹いせに丸投げしてやった。


「はい」


そして見事に簡単そうに引き受けやがった。

こういうのは簡単だってか!

優秀だな!!

もうお前が王になれば!?

そうしたら俺はずっとソフィアを囲む時間だけになる!!

ずっと至福の時間だ!


「そうなったらソフィア様との婚約解消ですね」

「………ぇ…」


ニッコリ笑って言われた。

………俺今声出してたっけ?


「ってなんでだよ!? 婚約解消なんかしねぇよ!!」


バンッと机を叩いて立ち上がる。

椅子が壁に勢いよくぶつかった。

そんな事になったら俺が死ぬ!!

生きていけなくなる!!

ソフィアを奪った奴を亡き者にしたくなる!!

………って!!

そうじゃない!!

ソフィアと離されるなんて考えたくもない!!

考えただけでも血の気が引く!!

不吉なことを言うなよ!!


「仕事しない男にサンチェス国王とサンチェス国王太子が、大事なソフィア様を任せると思いますか?」

「ぐっ……」


ルイスの言葉に何も返せなかった。

あの王とレオポルド殿が怠惰な男にソフィアをくれるわけがないな。


「でも! 臣下が出来て時間が余ってるだろ!? 詰め込みすぎだと思うんだよね! 俺にソフィアとのデートの時間を多めにくれ!!」

「それは自業自得でしょう。染料作るだの、柄縫い機械増やすだの、スキー場作るだの、除雪機作るだの、使用人増やして教育するだの、メンセー国と交渉するだの、祭りやるだのと言い出したり、自分で仕事増やしてるんですから」


目の前の積み上がった書類を叩きながらルイスがジト目で見てくる。

俺はお前の甥以前に王太子なんだがな!!

本来ならそんな目で見られるはずもないんだがな!!

だが、


「確かにな!! 自業自得だと思うよ!!」


ソフィアに喜んで欲しくて自分で始めたんだったな!!

八つ当たりだな!!

今気付いたよ!!


「でもソフィアとデートしたい!!」

「祭りまでお預けですね」

「鬼か!!」

「ですから自業自得です」

「ぐぬぅ……」


乱暴に椅子に座り直し書類に向かう。

ルイスと言い争っている間にどんどん時間が過ぎていく。

寂しそうな顔だったソフィアの元に早く帰るためには、書類を片付けないと意味がない。

俺は今から無心で仕事を終わらす!!


「ああ、屋台店から問題が上がってきてますよ」


ドンッと机に書類の山が置かれる。

何枚あるんだよそれ!?


「仕事増やすなよ!?」

「確認事項は最終的にラファエル様の仕事です」

「お前の決裁でもいいだろ!?」

「バカなことを仰らないで下さい。私がミスしたらどうするんですか。ラファエル様の責任になりますよ」

「お前ミスしないだろ!?」

「そうやって全面的に信頼するのはどうかと思いますけれどね」


しれっとした顔で言うな!!

絶対に嫌がらせだろう!?

俺はお前がミスったところを見たことがないんだぞ!?

俺が処理するより正確で的確で早いくせに!!


「ローズ嬢に格好いいところを見せたくないのかお前!」

「見せなくてもいいですね。ローズ嬢はソフィア様と違い、私の仕事を見ることは一生ありませんので」

「余裕持って足もとを掬われたらいいんだ!!」

「人の不幸を願わないで下さい」


ルイスはさっさと仕事に戻っていく。

くそぉ……!

俺はとにかく仕事を終わらせようとペンを動かしたのだった。

ルイスと言い合って、気分転換も出来たしな。

今ソフィアといられる時間が少ないのは事実だけれど、軽口たたくことでどんどん仕事が終わっていくのも事実で。

凝り固まった思考が解れるから。

それがわかってて俺たちはいつも口も手も動かすのだけれど。

………それにしてもメンセー国王が俺に手紙を送ってこなかったのは何故だ。

まぁ、実際にメンセー国王の要望を1番に解決したのはソフィアの案だしな。

おそらく手紙の意味することは、俺よりソフィアを重要視しているということなのだろう。

いや……ランドルフ国技術よりソフィアの能力を、かな。

結果より過程。


「………ふっ」

「………ラファエル様?」

「いや、何でもない」


王が見るところは、通常人が見るところではなく、見えない所、というところか…?

ソフィアが現在俺の婚約者で、ランドルフ国を重視している。

ソフィアはランドルフ国を何とかしようと案を出し、ランドルフ国の技術をもって実現。

つまりソフィアがいてこそのランドルフ国。

メンセー国王はランドルフ国を動かしているのは、現在ソフィアだと判断した?

という事は、王太子の俺は何の評価もされていない…?

………まぁいい。

情報が揃っていない段階で決めつけることは愚策。

まだ待とう。

影が手紙の意図を探っているはずだ。


――そして後日、手紙の意味を、更に仕事が増えることも、この時の俺はまだ知らなかった。

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