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第520話 重大なミス




「ソフィア、メンセー国王に恋文貰ったって?」

「ぶっ!!」


優雅にお茶の時間を過ごしている時だった。

中庭にラファエルもやってきて、にこにこして機嫌がいいなぁ…って私も微笑み返した後、ラファエルが着席して私がお茶に口を付けた瞬間に言われた。

何故に人が飲み物飲んでいるときにそんなこと聞くかな!?


「恋文!?」


ガタリと思わず立ち上がってしまった。

誰だ!

そんな誤報をラファエルに吹き込んだのは!!


「違うの?」


よく観察すればラファエルは機嫌がいいんじゃなくて、機嫌がすこぶる悪かった。

私は急いで1番足の速いカゲロウに使いを頼んだ。

私の部屋からメンセー国王の手紙を持ってくるようにと。

そんな誤解をされるぐらいなら、ちゃんとラファエルに伝えておくんだった!

手紙を貰った後のティータイムだ。

すぐに言っていればこんなことには――


「姫様ぁ」


カゲロウが手紙を持ってきて、私はすぐにラファエルに渡した。


「た、確かにメンセー国に来て欲しいってお誘いがあったけど! お礼がしたいってだけだから! 来国も断ったし!!」

「なんで断るの」

「え……」


頬杖つきながら手紙を読んでいくラファエル。

私の言葉に即返答しながら。

唖然としているとラファエルが手紙から視線だけ私に移す。


「なんで断るの?」


もう1度聞かれた。


「なんでって…」


私は言葉に詰まってしまった。

………ぇ……これって断っちゃダメだったやつ…?

ど、どうしよう…

もうジェラルドに配達手配頼んじゃったよ…

今頃はもうメンセー国行きの荷の中に混ざっちゃってるよね…


「………」


ジッとラファエルに見つめられて居心地が悪い。


「お、往復に10日前後かかっちゃうし、こっちもまだ長く離れられないでしょ…?」

「………ま、そうだね」


感情のない声で言われ、身体が硬直してしまう。

ど、どうしよう…

ラファエルの不興を買ってしまったみたい…

ちゃんとラファエルに報告して判断を仰いだ方が良かったようだ。

私宛の手紙の返事だったから、油断した。


「回収頼んだから気にしなくていいよ」


誰に、なんて聞かなくても分かる。

ラファエルは私の手紙の内容を誰かから聞き、即行動していた。

自分の精霊に頼むことによって。

多分、報告は影だろうな…


「………ご――」


私は謝ろうとした。

でも止められた。

ラファエルの人差し指を唇に当てられたことによって。


「気にしなくていい、って言ったのが聞こえなかった?」


表情と同じく、なんの感情もこもっていない声色で言われる。

私はラファエルの何らかの逆鱗の一線を越えてしまったらしい。

私は、一体何をしてしまったのだろうか。

理由が分からなくて混乱する。

じわりと視界が歪む。


「………ぁ、ご、ごめんソフィア!」


突然ラファエルが立ち上がって私の目元に触れた。

いつの間にか頬に涙が伝っていたようだった。


「ごめん、言い過ぎたね」


少し困った風に微笑まれ、私は首を横に振る。


「一応、これでも王太子だからね。他国との重要人物とのやり取りはどんなことでも把握しておかないといけないし、それが国王相手なら例えソフィア宛でも――」


ラファエルは手紙を私の方に向けて机に置いた。

そしてトンッと1カ所を指差す。


「ここに“ランドルフ国との同盟を検討している”と書かれてある以上、ランドルフ国として対応しないといけない。これは下手に返事をすると――ソフィアが書いた気持ちだけ貰う、という返答は、こちらが同盟を拒否すると取られかねない」

「―――あ!」


ラファエルに言われてようやく私は重要なことを見落としていたことを知る。

サァッと血の気が引いていく。

反射的に手で口を覆う。

気を抜いてしまうと、飲んだお茶を吐き出してしまいそうな気がした。

自分がしてしまった重大なミスに、押しつぶされそうだった。


「大丈夫だよソフィア。ちゃんと分かってるから」


ラファエルが机を回り込んできて私の肩を抱いた。


「ソフィアが感謝の言葉は嬉しいけれど来国出来る余裕が今はないから、感謝の気持ちだけ貰うと書いていたと聞いているから、同盟云々に絡んでいないことも分かってる」


カタカタ震える手をそっと包み込んでくれた。

ラファエルの体温にホッとし、少し力が抜ける。


「でも出す前に俺に確認して欲しかった。そういうことも政に絡んでくるから、事の重大さをソフィアに知って欲しくて。………同盟国相手じゃないから、必要以上に神経質になったことは謝るよ。怯えさせてごめんね」


ちがう……

違う違う!

ラファエルのミスなんかじゃないから謝らないで!

また首を横に振ってラファエルの身体に飛びつくように抱きついた。


「ご、ごめんなさいっごめんなさい!」


ぼろぼろ流れる涙が止まりそうにない。

良かった!

ラファエルが止めてくれて!

手紙を回収してくれて!


「ソフィアは知らなかったんだから仕方ないよ。これから俺に相談してくれたらそれでいいから」


優しい声でラファエルが言ってくれ、私はこくこくと頷くことで返事をした。

背も優しく撫でてくれるから段々落ち着いてくる。


「俺の手紙と一緒に改めて送ろうね」

「………っ……はい…」


微笑んで私の顔を覗き込み、また優しい声で言ってくれるラファエルに感謝し、私も少し微笑んで頷いた。


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