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第513話 ない物は作ればいい




清掃見習い用に洗剤付きの掃除道具の開発。

洗剤を忘れるなら最初からくっついてればいい。

洗剤が入ったタンクとモップのように布巾をくっつけたらどうだろう。


洗濯見習い用に洗濯機の開発。

タライで洗ってると腰痛めるし、なにより手洗いは手も布も傷つける。

………ひっくり返るのもいたし。

フィーアなら何かいい柔軟剤とか作れそう。


給仕見習い用に食券発行機の開発。

オーダー用紙もないから口頭で覚えるしかない。

だから間違うんだよね。

食券を最初から作って、半券をオーダー用紙にすればいい。


騎士見習い用には……これは特にないか。

よし、これでラファエルに提案――

ふと顔を上げると、頬杖ついたラファエルの顔が目の前に…


「お、かえり、ラファエル…」

「ただいま」


ニッコリと微笑まれる。

ビッ、クリした…!!

いつの間に帰ってたの!?


「視察の成果は上々のようだね」


ラファエルが私の書いていた紙をスッと取っていく。


「………」


顎に手をつけ読んでいくラファエル。

考え込むラファエルはやっぱりイケメン……ってそうじゃなかった。


「所々問題があるのよね」

「そうだね。でもそれを解決できる案がこれでしょ? 作らせるよ」

「あ……うん……」


ラファエルっていつも簡単そうに言うよね。

実際簡単なんだろうけど…

改めてランドルフ国の技術は凄いと思う。


「………ぁぁ、そういえば針子に見習い派遣したって?」


ラファエルが道具の設計図を書きながら聞いてくる。

考えながら話できるのも凄いな…


「うん…さすがに注意力散漫な侍女はいらないよ。何処で何やらかすか分からないから」

「そうだね。主の手を煩わせる使用人なんて、使えないからね」


不意にラファエルの視線が壁側に立っている騎士の方へ向く。

見られた本人は肩を揺らした。

………ぁぁ、いたんだアルバート。


「まぁ、そこで使えるなら使って、無理なら研修期間終わった後に出せばいい。自分に合う仕事が他にあるだろう」


こういう時のラファエルって本当に非情よね…

私も人のことは言えないけれど。

本当に切羽詰まっている人は、縋りついてでもその職にしがみつく。

彼女の場合、泣くだけで私に必死に食い下がっては来なかった。

だから、怒鳴っていた彼よりかはずっと余裕があるのだろう。


「貴重な王宮の物品を壊されても困るし、ね」

「そうだね」


ラファエルは頷いて書いていた手を止めた。

………もう出来たんだ。


「見習い教育が終わった後に、例の――」


ラファエルが言いかけたとき、バタンッと部屋の扉が壊れるかと思うぐらいの音を立てて勢いよく開かれる。


「ソフィア様ぁ~、たいへ~ん」

「………いや、大変って雰囲気じゃないんだけど…」


思わずそう返してしまった。

ジェラルドが開けた扉の勢いと音とでは緊急だと分かるけど、ジェラルドの言い方…


「買い出し行った見習い達が、追い剥ぎにあったってぇ~。今巡回騎士が追ってるぅ」

「………呑気口調止めなさい…」


内容は大変なことなのに、ジェラルドの口調に脱力してしまう。


「盗まれた物は」

『所持金に、明日のラファエル様とソフィア様用の食材、あと平民にしては美人の部類に入る侍女が』


ラファエルが天井に言い、聞き覚えのない声が返ってくる。

中性的な声で、声だけでは男か女か分からない。


「………追い剥ぎっていうか、人攫いじゃないのよ!」


私は暫く固まった後にソファーから立ち上がった。


「ソフィア、慌てないで」

「なんでラファエルは冷静なのよ!!」

「だってもう精霊に追わせてるから」

「え……」


あっさりと言われ、私は拍子抜けして再度ソファーに座った。


「精霊より早いのはいないからね。騎士らを今から走らせるよりかはずっと早いし、巡回騎士が追いつくまでその場に留めておける。すぐに解決するよ」

「そ、うだね……」


なんだか狼狽えている私がバカみたいだ…


「ん。追いついたみたいだ」


ラファエルの精霊が話しかけてきてるのかな。


「そのまま待機していてくれ」


空に話しかけているラファエルは少し変な人に周りから見られるから、人前では止めてね…

取りあえず人攫いと見習い侍女が無事に帰ってくるようにと、祈る以外の事はすることはなかった。


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