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第498話 来ちゃいました




カサリと深夜に1人、暗がりで紙を広げる。


「………」


文面に視線を滑らせ、1つため息をつく。

そしてもう1度ゆっくりと読んでいく。

当たり前だけれど変わらない文面。


「………ま、そうだよね」


紙――手紙を折りたたみ、ソファーに身体を預ける。


「そうなるよね」


ラファエルが今日はまだ帰ってきてない。

この事を早く伝えたいのだけれど…


「姫様」


静かに足音なく近づいてきたソフィーに、顔を向ける。


「そろそろお休みになった方が宜しいかと。明日に響きます」

「………そう、ね」


分かっているのだけれど、身体は動かない。

動く気もないのだけれど。

ラファエルに伝えるまでは。


「わたくしが行ってまいりますよ」


ソフィーに言われ、私は視線を反らす。


「………それは、多分怒るから」

「………」


そっと頭を下げてソフィーは離れた。


「………どうしようかなぁ…」


悩む私の前に暖かい湯気を放つティーカップが置かれる。


「………ありがと」

「悩むなんて姫様らしくないですね」

「………ん?」


カップに口をつけながら、またソフィーに視線を向ける。


「姫様なら一言で断りそうなことですよ」

「………そぅ、なんだけどねぇ…」


カップを置き、私はさっきの手紙をソフィーに向ける。


「………ソフィーなら、断れる?」

「無理です」


キッパリと否定され、苦笑する。


「ですよねぇ……」


手紙をしまい、またため息をつく。

その時部屋のドアが開いた。


「………あれ、まだ起きてたのソフィア。もしかして、寂しくて待ってたの?」

「うん」


寂しくはなかったけれど、それを言ったらラファエルが不機嫌になるから言わない。


「ごめんね」


ラファエルは嬉しそうに近づいてきて、私は抱きしめられる。


「お帰りラファエル」

「ただいま」


額に口づけられ、続いて唇を奪われそうになる。

その前にと、私はラファエルの唇を手で押さえた。


「ほぉしはの(どうしたの)?」

「ちょっと話があって」


そう言ったらラファエルが途端にムッとした。


「………そっちの“待ってた”だったの?」


優しく手をのけられる。


「仕事頑張ってるラファエルを待ってたのは本当だよ」


やっぱり不機嫌になってしまったけれど、許して。

こっちも急ぎなの。

私は手紙を出した。


「来ちゃったよ」

「………ん?」


ラファエルが受け取って中身を出して読む。


「………来ちゃったんだ」

「来ちゃったんだよ…それでね……暫く留守にしなきゃいけないから…」

「………俺の許可が取れなくても、行かされるんでしょ」

「………ぅん」

「はぁ……」


私のせいじゃないと分かっているラファエルはため息をつきながら私を抱きしめる。


「………ソフィア」

「何?」

「………浮気しないでね」

「ハッ倒すよ!?」

「あはは」


笑ったラファエルの顔には元気がなく、無理しているのが丸わかりだ。

申し訳なく思いながら、ギュッとラファエルの身体を抱きしめ返した。


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