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第495話 疑わしい目で見られました




「………ソフィア…遊び場ってどういうこと?」


暫く音のなかった談話室で、ラファエルが口を開いた。

雪の遊び場は受け入れられるか不安だ。


「村や街の反対側の山の一角を切り開き、山の傾斜を利用して滑れるようにするんです」


私はオーフェスに手を出し、オーフェスが懐から紙とペンを出して差し出してくる。


「スキー板、スノーボード、ソリ…」


それぞれの構造を書き、ラファエルに渡す。


「山の頂上までリフトという自動で乗って移動できる乗り物を開通させ、山の上から下まで滑り降りるのです」

「………それ、面白いの?」


あ、ちょっと怪訝な顔をされる。

滑り降りるだけを甘く見ないでよ!?


「まぁ…! ラファエル様、人はですね、極めることに夢中になれば成る程、深みにはまるのですよ」

「………」

「ただ単に滑り降りるわけではございませんわ。技を磨き、如何に美しく極められるかが大事なのですわ!」


拳を握ってラファエルに詰め寄ってしまった。

ハッとしたときには、ラファエルが目を見開いて私を凝視している。


「そ、ソフィア……?」

「………ぁ、も、申し訳ございません」


つい熱が入ってしまった。

私も昔、スキーだけれど極めようと通っていたことがある。

結局鳴かず飛ばずだったけれども。


「他国からの観光客にもお勧めして、近くに宿泊施設などを作れば、こちらの土地も潤うと思うのですが」

「………どうだろう、公爵。ソフィアの案受け入れてみる?」


ラファエルが公爵に聞く。

ずっと考え込んでいた公爵は、私を見る。


「その…山を切り開くということは、それだけ雪崩が起きやすい、ということでは……?」

「スキー場はある程度押し固めなければなりませんし、定期的に手入れをすれば、問題はありませんわ」

「しかし……」

「雪崩自体は、雪が積もって手入れしきれなかった所が起きやすいのです。ですので、除雪機もラファエル様にご検討頂き、吸い込んだ雪はスキー場に行くようにして、手入れすればよいのです」

「成る程…」


公爵は頷き、ラファエルを見る。


「私は、ソフィア様の提案を受け入れてみようと思います。雪崩がもう起きないのであれば、それが1番ですし、なによりこちらにも足を伸ばして下さる他国の方が増えれば、ラファエル様の利にもなりましょう」


受け入れてくれた公爵の言葉に私は嬉しくなり、ラファエルを見上げると、ラファエルは頷いた。


「分かった。帰って早急に取りかかろう。勿論、公爵達にも手伝ってもらうぞ」

「勿論でございます」

「では、何処の山にするか検討しておいてくれ」

「それなんですが、他国の人を受け入れるのですから、北東の国境の方向が宜しいですか?」

「どうだろうな。テイラー国よりもサンチェス国の方が多いだろうから」


私は頭の中で地図を思い浮かべた。

北の領地

温泉街

王宮

城下街

南東と南西の国境

………ふむ…


「どちらでも大丈夫だと思いますわ」

「………ソフィア?」

「いずれにせよ、観光客ならば温泉街に寄るでしょうし、スキー場で遊んで帰りに温泉街にも寄るでしょう。冷えた身体を温めるために」

「ぁ……」

「そうだね。ソフィアの案は結果的に温泉街にも利があるのか」


公爵がハッとし、ラファエルがまた頷く。


「どちらかというと、北東の国境付近の方がテイラー国の人も来やすいでしょうね。サンチェス国の人間は温泉街経由になりますし」

「分かった。それでいこう。公爵もそれでいい?」

「はい。宜しくお願い致します」


話し合いが終わったところで、今日はもう遅いからと公爵が部屋を用意してくれた。

当然の如くラファエルと別々の部屋になり、ラファエルがムッとしていたけれど。

………いや、一般的にはまだ婚約状態だからね?

ベッドは別だと思われているからね?

内心苦笑しながら私は部屋へと向かった。

フィーアに着替えさせてもらって、ベッドに入るとすぐにウトウトしてしまう。

気付かないうちに消耗していたのだと分かる。


「………スキー場出来たら、ラファエルと遊びに……」


意識が無くなる直前に、何か温かいものに包まれた。

布団ではない。

だって、ベッドに入ったときに既に被ってたし。


「………ラファエル…」

「………だって……」


目を頑張って開ければ、目に映る誰かの腕。

そんなの1人しかいない。

呆れて後ろに顔を向ければ、ラファエルが私のベッドに潜り込んできていて、しっかりとホールドされている。


「ソフィアと寝たい」

「………1日ぐらい我慢しようよ」


そう言いつつも、身体を反転させてラファエルに抱きついてしまう私も同罪だ。


「ふふっ。おやすみソフィア」

「………おやすみ…」


限界だったために、私はすぐに眠ってしまった。

明日からも忙しくなるなぁ…


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