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第488話 恐るべし




「この後はどうされるおつもりでしょうか? 宜しければお食事でも」

「いや、この後も予定があるんでね。この辺で失礼させて頂くよ」


ラファエルが公爵の誘いを断り、立ち上がったとき、扉が開いた。


「あなた」

「お父様、少し宜し――きゃぁ!?」


………女の人の声がし、振り返る間もなく、声が飛んでくる。


「ラファエル様ですわよね!? わぁ、こんなお近くでお目にかかれるとは思いませんでしたわ!」

「これ。はしたないですわよ。すみませんラファエル様、娘が失礼を」


いや、貴女もね。

ラファエルが許可してないのに口を開くのは、とてつもない非礼に当たるよ。

公爵が顔を真っ青にしているじゃないか。


「わたくし、頑張ってラファエル様に釣り合う女性になろうと必死に自分を磨いてますの!」


………へぇ?


「もう…この子はラファエル様の名を出さない日はないんですのよ! そのおかげで日々、公爵令嬢として育ってくれております」


………ふぅん?

そんな事ないと思うんだけどな?

婚約者がいる男性に、しかも王太子に遠慮なしに近づいて捲し立てることが、令嬢としての嗜み?

非常識この上ない。

それに挨拶がないのもいただけない。

ラファエルをチラリと見上げると、笑みを浮かべているけれど、怒っているのが分かった。


「………公爵」

「は、はいぃぃい!!」

「さっきのに追加で、妻と子の教育もするように」

「申し訳ございません!!」


ガバッと頭をまた下げる公爵。


「え? お父様?」

「あなた? どうしたの?」


………どうしたもこうしたもないよ。

教育を放置すると、こうも非常識な妻と子が誕生するんだ…

あれか。

使用人にヘコヘコさせることによって、自分が1番偉いとか考えるようになるのかな?

アダム・エイデンの愚行は、この夫人のせいかもね。


「………はぁ」


思わずため息をついてしまう。


「ソフィア」

「すみませんラファエル様…」

「いいよ。私も同じ気持ちだから」


ラファエルに許容され、ホッと息を吐く。


「あら。誰か他にもいらっしゃったのね。気付かなかったわ」

「もう口を慎め!! むしろ喋るな!!」


エイデン公爵が顔を真っ赤にして怒鳴る。

その怒鳴り声に2人は思わず口を噤んだようだ。


「申し訳ございませんラファエル様、ソフィア様!! 私の身内が失礼を!!」

「………もう公爵の身内の非礼はお腹いっぱいだよ。これも次はないって分かってるよね」

「はい!!」

「それと君」

「え……」


ラファエルが令嬢を見た。


「私に釣り合うようにとか訳の分からないことを言っていたけれど、来客に対しての挨拶もなってない者に、一定以上の嗜みが身についているとは思えないね」

「あ……わ、わたくしはエイデン公爵の――」

「いらない。興味ないし」


ガンッと彼女の頭に今頃架空の岩が落ちたかしら?

未だにソファーから立ち上がってないし、見てもない。


「私に今後一切近づいて欲しくないね」

「そ、そんな!?」

「私には婚約者がいることをお忘れかな?」

「え、それは噂ですわよね!」

「「は?」」


思わずラファエルと声が被ってしまった。


「未だにサンチェス国の王女なる者を見ていませんし、お披露目もされてませんから、架空の人物で――」


………まじかー!!

教養が出来てない令嬢ってここまでバカなの!?

学園の女子の方がよっぽどマシなんだって思ってしまう!!


「ぷっ!」


思わず噴き出してしまった。


「………ソフィア。笑っちゃダメだよ」

「そういうラファエル様も笑ってますわ」


ようやく私はソファーから立ち上がり、2人を見た。

そして2人は今私を認識したのか、目を見開いている。


「お初にお目にかかりますわ。わたくしはソフィア・サンチェス。サンチェス国の第一王女でラファエル様の婚約者ですわ」


私が完璧な挨拶をすると、固まっていた2人があわあわし出した。


「まさかわたくしが架空の人物になっているとは思ってもみませんでしたわ」

「そうだね。架空の人物になるなら、ソフィアのアイデアは何処から来ているんだろうね?」

「ラファエル様からでは?」

「私からなら、もっと早く国を立て直して、民ももっと多く救えてたよ」

「それもそうですわね」


2人に口を挟む暇も与えず、ポンポンと会話をする。


「じゃあそろそろおいとまするよ」

「失礼致しますわ――ぁ、そうですわ」


私は令嬢を見た。


「――ラファエル様の隣をご所望でしたら、今の自分勝手な行動を改めることですわね」

「ソフィア」

「そして、民を救える案をわたくし以上に出しなさい。そうすれば、手に入ると思いますわよ」

「ソフィア!」

「――無理でしょうけれど」


クスッと笑って私はラファエルに引かれるままに公爵家の別荘を後にした。


「余計なこと言わなくていいから」

「ちょっと腹が立ちましたので」


ラファエルを奪いたいなら、正々堂々と勝負する準備はある、と示したかった。

謝りながら、私はラファエルの腕に手を回した。


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