第486話 ちょっと大袈裟
ラファエルとオーフェスとヒューバートが怒ってしまい、私は大人しくラファエルに引かれるまま、エイデン公爵の別荘へと連れて行かれた。
肩身の狭い思いをしている子供達も騎士達に連行されている。
………ラファエルが許容すると言葉にしたはずなんだけど…
まぁ、言動と表情が違ってたから、許してはいないのだろうけれど…
「ソフィア」
「はい」
「着いたら着替えさせてもらおう」
ラファエルに言われ、自分を見ると、泥が乾いてポロポロと落ちていくものの、桃色のドレスが茶色いシミを彼方此方に作っている。
「………ぁぁ……せっかくみんなが綺麗なドレスを着せてくれたのに…」
ちょっと気に入っていたために残念だ。
こんな格好で歩くことも恥ずかしい。
今まで気付かなかった。
私を押した子供は泥だらけだったのだから、こうなるよね。
「ソフィー、着替えを用意してる?」
「はい」
え……
なんで着替えがあるの…?
「こんな事もあろうかと、ご用意しておりました」
「こんな事って…」
「姫様は活発ですからね。ドレスを汚すこともあるかと」
「いくらわたくしでも視察ではしゃぎ回りませんわよ!?」
評価が可笑しいよ!?
ソフィーの中の私のイメージってそれなの!?
「冗談はさておき」
………いや、今マジな顔だったよね!?
「こちらの侍女が姫様に粗相をしないとも限りませんので」
「………公爵家の侍女ですから、そんな心配はいりませんでしょう…」
「子息が子息でしたので」
「………そうですの…」
反論できなくなった。
そうだよね。
あの子息がもし使用人に好かれていたら、恨まれている可能性も捨てられないよね。
可能性は低いだろうけれど、ない、と言えるほど私は公爵家の使用人達を知らない。
「とにかく少し急ごう。濡れてるし、ソフィアが風邪を引いたら一大事だよ」
「そんな…大丈夫ですわよ?」
「………ソフィア…」
あ、ため息つかれた。
また間違えた…?
「ソフィアが風邪を引いただけで、原因となった者は最悪、打ち首になることもあるということを理解しなさい」
チラッとラファエルが後方に視線を向け、ラファエルの言葉にビクッと飛び上がる子供。
私を押した子供だ。
そ、そっか……
私、王女だしね…
「ごめんなさいラファエル様……わたくしまた甘かったのですね…」
「いいよ。間違っていたら私が教えるから。というわけで急ごう」
「はい」
私達は足早に公爵の別荘へと向かい、辿り着いた先でエイデン公爵の挨拶をそこそこに、ラファエルが私を部屋に案内するようにと告げた。
一瞬呆けた公爵だったが、私の格好と騎士達が泥だらけの子供達を見た瞬間に理解したらしく、慌てて部屋とそして湯を用意させるように使用人に告げる。
ソフィーに手伝ってもらって湯を使わせてもらい、真新しいドレスに身を包んだ。
そのドレスは赤を主体としていて…
「………ねぇ」
「はい」
「………こんなドレス、持ってなかったわよね…?」
「………」
ソフィーの返事がない…
ジッと見るけれど、ソフィーは答えなかった。
ラファエルがまた勝手に仕立てた!?
追求しようにもここでは無理だ。
帰ってからちゃんと追求しようと思い、私はラファエルと公爵が待っているだろう応接室へと向かった。




