第484話 コツを教えて下さい
誤字報告ありがとうございます!
『ソフィア、明日出かける準備しててね』
昨日そうラファエルに言われて、起きて日課を終え、お出かけスタイルでラファエルを待っている。
私の侍女らに服装の指示をしていたのか、普通にお出かけドレスを着せられた。
王族用だからデートじゃないな。
………視察かな?
何処に行くんだろう。
「おまたせソフィア」
ラファエルが戻ってきて見ると、彼もきちんとした正装だった。
やっぱり視察らしい。
「西に行くよ~」
「………西?」
首を傾げながらソファーから立ち上がる。
「………ぁ、エイデン公爵のところ?」
「うん。正確には道の整備状況を見に行くよ。ソフィア、見に行きたいって言ってたでしょ?」
「あ……ありがとう」
「視察だからそれ相応の格好じゃないといけないから、窮屈だろうけど我慢してね」
「大丈夫」
手を差し出され、私は自分の手をラファエルの手の上に置いてエスコートされる。
「共はソフィーとオーフェスとヒューバートでよろしく。残りは留守番ね」
ラファエルに指示され、皆それぞれが返事した。
………その人選はどういった……?
心の中で首を傾げながら、ラファエルに促されるまま部屋を出た。
馬車まで行くとラファエルと乗り込み、ソフィー達は御者台に乗り込んで出発する。
ラファエルの護衛は別で馬に乗ってついてきていた。
「ラファエル……私の従者の人選はどういう…」
「ん? 他の貴族の前で失態おかさない従者」
み、身も蓋もない!!
反論できないよ。
ごめんねアルバートにジェラルド…
「侍女は一番ソフィーが古株だから」
「そ、そう……」
ソフィーもまぁ納得だ。
「西に着くまで時間かかるし、寝ててもいいよ?」
「いくら何でも、起きて2時間も経ってないのだから、眠くないよ」
「そう? ………まぁ、これから――」
ガタンッと馬車が大きく揺れた。
「うひゃぁ!?」
「ソフィア!」
油断していた私は椅子から滑り落ちそうになり、慌てたラファエルに腕を引かれて、彼の膝の上に乗ることとなった。
「………へ!?」
それにも油断していた私は、ラファエルの顔と近くなったことに、思わず顔を赤くしてしまった。
「大丈夫?」
し、心臓の方が大丈夫じゃないです!!
とは言えず…
「だ、大丈夫…ありがとう」
「どういたしまして」
ニッコリと微笑まれるけれど、私は笑い返すことが出来ない。
ガタガタと振動が凄く揺れる馬車の中で、捕まるところがラファエルの身体しかない。
恥ずかしいけれど、私は動けず、大人しくラファエルの膝の上に座ったまま、彼の身体に捕まって小窓の外を見た。
「ず、随分、揺れる、のね」
喋るたびに揺れるから言葉が途切れる!!
「砂利道だからね」
ラファエルも小窓の方を見る。
「まだまだ道の整備はかかりそうだな」
………どうでもいいけどラファエル…
なんで普通に話せてるの!?
物凄くコツを聞きたい!!
「でもまぁ、合格かな」
「ぇ……?」
ガタガタ揺れる道なのに合格って可笑しくない…?
私はラファエルから滑り落ちないよう必死ですよ?
ラファエルに腰を抱かれてるから落ちないだろうけれど…
「俺はエイデン公爵に、“国境から温泉街までの道の整備を早急に”って命じたからね」
「………ぁ、そっか。必然的、に、王宮、へ向かう、道、は、後回し、になる、んだね」
「そういう事。こっちは俺達の方でやった方がいいね」
「そ、そう、だ、だね」
必死に返していると、ラファエルに真剣な顔で見下ろされた。
ぅぅ……舌噛みそう…
「………大丈夫ソフィア…」
「だ、だいじょ、ぶ」
だからなんでラファエルはちゃんと喋れるの!!
「こればっかりは慣れないとどうしようもないね」
「ぅ、ぅぅ……」
コツというコツはありませんでした…
私は内心ガッカリしながら、綺麗な道に出るまでラファエルにしがみついていたのだった。




