第481話 今後の予定
学園のパーティーが終わり、私達は帰路についた。
自分の部屋に戻った瞬間、私は侍女達にすぐさまドレスを脱がせてもらった。
苦しいコルセットをはずされ、開放感が半端ない。
「はぁぁぁ……」
深い息を吐いてソファーに身体を預けた。
「お疲れ様でした姫様。お茶をどうぞ」
「ありがと~!」
私はティーカップに飛びついた。
喉カラカラだったんだ。
学園のパーティーだから食べ物は勿論、飲み物もなかったし。
1人だけ用意してもらうのもね…
「明日から長期休暇ですね」
「ええ。サンチェス国よりも長くて驚いたけれど」
ランドルフ国はサンチェス国の休暇よりも20日程長い。
多分地域性故にだと思う。
今では普通に過ごせているけれど、前までランドルフ国は雪の積もっていないときがない国だったから。
おそらく今の時期にいつもより積もる量が多かったんだと思う。
ラファエルに短くしたらと言ってみたけれど、学園の規則は基本的に学園の教師が決め、ラファエルが決めるのではないそうだ。
完全に学園は教師に任せているそうだ。
不測の事態があればラファエルに意見を求めてくるそうだけれど。
よほどの事ではない限り、ラファエルは口を出さないらしい。
教科書見直しみたいな大掛かりなこと以外は、今までラファエルは何も言っていないらしい。
………人と人とのトラブルは当事者が解決しないとだけどね。
「姫様のご予定は」
「ないよ」
ソフィーの言葉に即答したら、侍女達の動きが止まった。
全員に注目される。
「………ぇ、な、なに…?」
騎士達にも唖然と見られている。
「姫様……」
ソフィーが額に手を当てて肩を落とした。
………ぇ……
な、何か間違ってるの私!?
「………どうりで使いを頼まれないと思ったんです」
「………使い?」
「………姫様、長期休暇は格好の社交日和です」
………社交日和って…
「学園がない分時間があるのですから、ランドルフ国での味方を増やす為にも茶会やパーティーを開かなければ」
「………まぁ、言い分は分かるけれども」
私はずずっとお茶を啜った。
なるほど…
使いとは、招待状や会場準備の指示ということか。
けれど開けないわけが色々ある。
今の王宮内には精霊が大半だ。
侍女に使用人に役職の臣下。
いつ誰に見られて追求されるか分からない。
貴族の当主であの会議でラファエルと私の精霊を見た者達はともかく、夫人らに見られて噂で広められても困る。
私はこれ以上、ラファエルに迷惑をかけるわけにはいかない。
周りを信用出来る人間で固められるまで、私は下手に動けない。
そしてそれは一朝一夕ですぐに出来るはずもない。
「開けない理由があるの」
私はそう言って、簡潔に説明した。
すると全員納得してくれた。
「………確かに王宮内が精霊で埋まっていますね…」
………埋まってるって…
「私がみんなに頼みたいのは、職を失って今も生活が苦しくなっている平民の――貴族階級がない者達の選出。不正をしない真面目な人間を集めて欲しいの」
「………畏まりました」
「貴族階級でも真面目に働く跡継ぎ以外なら採用してもいいけど、この王宮で階級通りの扱いを受けなくても不満を出さない人限定がいい」
「また無理難題を言うなぁソフィア様は」
「それぐらいじゃないと、ラファエルと私に仕えられないわよ」
ふんっと鼻息荒く腕を組むと、全員に苦笑いされる。
日頃の行いだから文句は言えないけれど、すぐに納得されるのも悲しいものがある。
「交代で街に行ってくれる? 出来るだけ早く人数を集めて教育したい」
「「「「「「「畏まりました」」」」」」」
全員が私に頭を下げて了承してくれた。




