第480話 社交パーティー④
「ソフィア様、ラファエル様」
スッと前に跪く2人。
「楽しんでる? マーガレット嬢、スティーヴン殿」
「「はい」」
笑って顔を上げて見上げてくるのは、マーガレットとスティーヴン。
2人はやはりその身分相応の装いをしている。
「綺麗ですわマーガレット嬢」
「ありがとうございます。スティーヴンの見立てですの」
「まぁ。素敵ですわ」
さすがマーガレット大好きスティーヴン。
マーガレットの似合う色やデザインを熟知している。
「ソフィアのドレスは私が仕立てたんだ。どう?」
「素敵です」
「ラファエル様のお色1色ですね」
ニッコリ笑って私の心臓を刺してくるなスティーヴン…
頭から消してたのに!!
「少しお話してもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
「ありがとうございます!」
マーガレットが嬉しそうに笑い、私も自然と笑顔になる。
「ラファエル様もソフィア様も、長期休暇はいかがお過ごしの予定ですか?」
「私は仕事があるからね。空いた時間にソフィアとゆっくりしようと思っているよ」
「やはりラファエル様はお忙しいですね。我々に手伝えることがありましたらいつでも」
スティーヴンがラファエルを見上げながら真剣な顔をしている。
………その目はキラキラしているけれど。
あれは王宮に入れたらラファエルの精霊目的や、研究室に行こうと思っているのかも…
ヒューバートの言葉が思い出され、思わず苦笑する。
「ありがとう。マーガレット嬢もスティーヴン殿も、ソフィーやヒューバートに会いたいならいつでも伝えてくれれば時間作らせるよ」
「まぁ。嬉しいお気遣い、感謝致します! ………ですが、ソフィー様は王族の身…こちらの茶会などにご招待できませんわ…」
私とラファエルは端から除外されるからね…
「抜け道を使えばいいよ」
「………抜け道、ですか?」
ラファエルの言葉に私は反応してしまう。
「ヒューバートに招待状を送ればいい。ヒューバートは公爵の名を持っている。ヒューバート・ガルシアに同伴者を伴うように招待状を出せば、婚約者としてソフィーを招けるよ。婚約者の立場は男の立場が優先されるから」
「………なるほど…」
「ソフィーに直接出せないなら、ヒューバートを使う手にすればいいよ」
「あ、ありがとうございます!」
マーガレットが嬉しそうに笑う。
罪を犯して家を出されたわけじゃないから、そういうパーティーにヒューバートは何の障害もなく出られるんだ。
覚えておこう。
「ソフィアとローズ嬢は抜け道ないけど、我慢して」
苦笑気味にラファエルが言う。
ラファエルもルイスも王族だものね。
「はい、心得ております」
「ミルンクとコッコの飼育は順調?」
「はい。すくすく育って、ミルクもタマゴも生産量は少ないですが、長期休暇中には、王宮へ献上できるかと思います。王宮で使用できる物かどうか調べて頂ければと」
「分かった。引き続きよろしく」
「畏まりました」
それから少しの雑談をし、2人は離れて行った。
笑い合い歩いて行くその後ろ姿を、少し羨ましいと思ってしまった。
貴族だから制限はあるけれど、スティーヴンはラファエル程忙しいはずもなく…
「………自由に会えるんだろうな…」
ポツリと呟いてしまい、ハッとして急いで口を噤んだ。
何を考えているんだ私は。
ラファエルと私は、この国のために働かなくてはいけないのに。
民達の笑顔のために。
「ソフィア」
隣から静かに呼ばれ、ビクッと反応してしまう。
ラファエルだ。
………聞こえてしまったのかもしれない。
恐る恐るラファエルを見る。
そこには優しい笑顔のラファエルが……
………ぁれ……?
内心首を傾げる。
「急ぐね」
ニッコリ笑って言われた言葉に、私は凍り付いた。
これ以上ない我が儘で、ラファエルの負担を増やしてしまったことに気づき、顔を青くさせることしか出来なかった。




