第477話 社交パーティー
開会の挨拶はやっぱりラファエルだった。
ラファエルの挨拶とお兄様の紹介もあった。
そしてラファエルに手を取られ、私は会場の中央へと誘われた。
………まさかの独壇場ですか!?
なんてことは言えるはずもなく、笑みは絶やさずラファエルを見上げる。
「………ソフィア、目が笑ってないよ」
ラファエルも微笑みながら、小声で言ってきた。
「せっかく綺麗が過ぎる程に綺麗になったんだから、ちゃんと楽しんでね」
綺麗が過ぎる綺麗、ってなんだ…
「わたくしは楽しんでますわよ。ラファエル様とせっかく踊れるのですから」
「じゃあ目も笑おうか」
曲が流れ始め、ラファエルにリードされながらステップを踏み始める。
「そういえばソフィア」
「なんです?」
「長期休暇中に例のお祭りをしようと思ってるんだけど」
クルッとラファエルの誘導で回りながら、頬がヒクついた。
せっかくダンスしてるのに仕事の話ですかー?
最近ますますラファエルが仕事人間になってきている気がする。
「わたくし長期休暇の間に、たくさんラファエル様とデートしたいですわね」
ラファエルの言葉に返事をせずに、私が言うとラファエルの目の色が変わったのが分かった。
「ぁぁ、ごめん。レオポルド殿が来てるからつい。ダンス楽しもうか」
「はい」
前までは仕事よりも私だったのにぃ…
………
………………
私は何を考えているのだろうか。
真面目な旦那様(予定)でいいじゃないか。
ベッタリから程々になっただけじゃないか。
………でも、構ってもらえなくて寂しいのもまた事実で。
積極的なのはまた恥ずかしくて困るんだけれども。
矛盾してるよね。
自重しなきゃ。
「ソフィアはどんどん我が儘言っていいからね」
「………ぇ…」
「我慢せずにしたいこと、して欲しいことあったら言ってよ? 最近我が儘っていう我が儘言ってないでしょ」
不意に言われた言葉につい考えてしまって、ステップが乱れそうになった。
危ない…
まぁ、ラファエルならフォローぐらいお手の物だと思うけれども。
それにしても我が儘…っていうか、お願いのことだよね?
ラファエルと一緒にいること以外、私の願いはないのだけれど…
「俺の仕事のことなんて考えなくていいから、一緒にいて欲しいとか、デートしたいとか言ってね?」
忙しいラファエルにそんなこと言えないよ…
問題が山積みだし。
他国の王族も問題持ってくるし。
………うちも含めて。
ラファエルの時間が空いたら、デートしたりしたいだけ。
邪魔なんてしたくないし、ランドルフ国を立て直すのが優先事項で、私のアイデアで豊かになれば、私の立場も確立される。
国民に認められての婚姻が1番良いと思っているから。
まぁ、デートしてても邪魔されたりするんだけれどね。
「ラファエル様の時間が空いたときで大丈夫ですわよ」
「………ソフィア」
「ラファエル様、笑みを絶やさないで下さいませ」
眉を潜めたラファエルに私は笑ったまま言う。
素早く元の笑みを浮かべるラファエルに、苦笑しそうになる。
「………ソフィアって本当に欲ないなぁ……俺といたくない?」
「いたくなければここにはいませんわ。ラファエル様はわたくしの大切な人ですから」
「ありがとう」
「ですからわたくしの為に無理せず仕事をされて、休養もしっかり取って頂いて、元気なラファエル様と過ごせる時間が出来れば、わたくしを構って下さいませ」
作り笑いではなく、自然な笑みを浮かべた途端に、曲が終わった。
踊り終えた私達に四方から拍手が贈られる。
礼をしてラファエルにエスコートされながら元の場所に戻った。
入れ違いでお兄様とローズ、そして生徒達が中央へと動き出し、新たな曲が流れ色とりどりのドレスが舞い始める。
「毎日ソフィアを可愛がってるつもりなんだけどな…」
「変な言い方をしないで下さい…」
夜一緒に寝てるだけでしょ…
「………ごめん。俺のせいでソフィアに我慢させてるんだよね」
「ラファエルのせいじゃないよ」
「長期休みの前半に必ず片付けるから。カイヨウ国王女も、メンセー国王子も、サンチェス国公爵子息も」
「………デート、楽しみにしてますわ」
ニッコリ笑うとラファエルも微笑み返してきた。
そのまま私達は上座に座ったまま、生徒達の交流風景とダンスを眺めていた。




