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第476話 本当にやめて…




ザワついていた会場が一瞬で無音になった。

ラファエルと私、そしてお兄様とローズが会場に足を踏み入れたから。

エスコートされながら会場内へと進んでいく。

背筋を伸ばして。

顎を引いて。

口角は上げて。

自信がなくてもハッタリでもいいから堂々と。

パーティーなんて久しぶりだから、緊張で足が縺れそう。

頭の中で何度も教育係に言われた言葉を反芻する。

どうせドレスで笑っている膝も、歩いている心許ないつま先も隠れてる。

バレやしないだろう。

馬車の中でラファエルに私達の定位置を聞いた。

王家の者は会場の奥の中央、そこに専用の椅子があり、私達は会場に入ってまずは座るそう。

そして開会後、ダンスを1度踊れば後はずっと座ってていいそうだ。

ダンスが1回で済むのは有り難い。

辿り着くとラファエルがまず私を左側の椅子に座らせてくれ、ラファエルは中央の椅子へ腰掛けた。

急遽参加になったお兄様用の椅子も用意されていた。

お兄様はラファエルの右隣に座った。

ローズは純粋な王家の人間ではないために、お兄様の右斜め後方に控えた。

ランドルフ国ではサンチェスの人間だと言っていたけれど、こういう所はやはり除外されるみたいだ。

そういうのもちゃんと覚えなきゃ。


「………皆様はこういう時だけ早いのですね」


唇を出来るだけ動かさないようにし、小声でラファエルだけに聞こえるように呟いた。

学園に来るときはみんなギリギリだったのに。

今は殆どの者が集まっているようだった。


「………まぁ、婚約者がいない者達も結構いるからね。この機会にお近づきになりたいとか思ってるんでしょ」

「成る程…」


確かに貴族もさることながら、平民もかなり学園に通っている。

平民は貴族と違って政略結婚の対象とはなりにくいため、婚約者がいない人が殆どだ。

辺境の男爵位ぐらいなら、平民と婚約することはあるかもだけど。


「野心ある者も結構いるねぇ。婚約者のいない三男、四男の貴族を狙っている令嬢に、逆に三女、四女の貴族を狙っている子息」

「………目が鋭くて怖いわ…」

「………まぁ、俺も人のこと言えない、か」

「え?」


ラファエルの呟きに、過敏に反応してしまった。

見られているかもしれない状況で。

内心慌てながら、でもラファエルに向けてしまった顔をゆっくりと元の位置に戻した。


「ああ、心配しなくてもソフィア以外の女は視界に入ってないよ」

「………じゃあ、どういう意味…?」


もう…

ビックリさせないでよ…

私、婚約者としても王女としても、対象の令嬢と一戦交えないといけないのかと思っちゃったよ…


「俺もサンチェス国でのパーティーの時に、多分同じ目をしていたと思うよ」

「………同じ…目……?」


またもや反応して首を傾げそうになり、思いとどまった。


「そう。ソフィアと目が合わなかったから知らないと思うけど」


………あの時私がラファエルを認識したのは、ラファエルにダンスに誘われたときだ。

それまでラファエルが会場の何処にいたのかも知らない。

その時、ずっと私は見つめられていたのだろうか?


「俺はソフィアが欲しかったからね」

「っ……ラファエル。私は今顔を赤らめるのは憚られるから、そういう事言わないで…」

「なんで?」

「なんでって……」

「ソフィアに俺が溺愛されていると周囲に思われるなら、悪くないと思うけど?」

「でき――!?」


私は慌てて唇を閉じた。

カァッと顔が赤くなっていく気配を感じた。

だ、ダメだって!!


「ふふっ」


嬉しそうに笑うラファエルの声で、私は自分の顔が赤くなっている確信を得る。


「か、からかってるの……?」

「まさか。俺はソフィアのことに関してはいつも大真面目だよ」


ラファエルの言葉に私はどうしていいか分からなくなった。

嬉しいのだけれど、公の場で言われてしまうと王女の態度が崩れてしまう。

止めて欲しいけれども、私にラファエルの口を塞ぐ方法は持ち合わせていない…

………ぁ……!


「………ラファエル、それ以上ここで続けたら、私お兄様と踊るから」

「ごめんなさい」


速攻で謝られ、私はホッと息をついた。


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