第472話 気付いてませんでした
「そういえば姫様」
「何?」
侍女達に身体を拭いてもらいながら、ソフィーに顔を向ける。
………未だに慣れないな…
まだ日本人の感覚が残ってますから…
しかもサンチェス国では1人でそれこそしてたし…
ランドルフ国に来てからのこのやり取り、かなり恥ずかしい。
小さいときからやってもらってたら何とも思わないんだろうけど…
水気を拭ってもらって、肌を隅々まで手入れしてもらって、服を着せられる。
………羞恥プレイか!!
「お腹周りに少し脂肪が付きましたね」
「………………………………」
ソフィーの言葉に、私は固まった。
「………マジで?」
「はい」
恐る恐る下を向く。
………うん、ちょっと…ぷるんとしてるかな!!
「いやぁ!?」
「ラファエル様のご用意したドレスは辛うじて合うとは思いますが」
「辛うじて!? 辛うじてなの!?」
「はい」
真顔で頷かないで下さいますかね!?
真っ青になっていると、ドンドンと扉が叩かれる。
『ソフィア! どうしたの!?』
「な、なんでもない!! なんでもないです!!」
ラファエルの声が聞こえて、慌てて服を着る。
今入って来られたら、ラッキーなんちゃらにはならないけれども、私が恥ずかしすぎて死ねる!!
『なんでもないって、さっき悲鳴上げたよね!?』
「あ、上げてない!!」
侍女達にも手伝ってもらって、最速で着替えられた。
安堵の息を吐いて、脱衣場から表に出た。
「………ラファエル……女湯の前で立たないでよ…」
「ソフィアしか入ってないんだからいいでしょ」
「良くないよ! 恥ずかしいじゃない!!」
「今から慣れていくのも良くない?」
「よ、良くないです!!」
顔が火照っている。
温泉に入ったから、って誤魔化そう!
「………そういえばソフィア様、目が覚めてから初めてじゃないか? 顔赤くしたの」
「………そうですね。ラファエル様に抱きつく、とか、ラファエル様が1番と仰っていたときは、普通でしたね」
「慣れたんですかね。そういう言葉には」
………離れた場所から騎士達のそんな会話が聞こえる。
………そうですね。
今気付きましたよそれに!!
私何気に恥ずかしいこと言っちゃってたね!!
何か言ってやりたいのに、言葉が出てこなくて引きつった頬をそのままに、ニッコリと騎士らを見た。
その瞬間、直立不動になったけれど。
「………何か仰いまして?」
ブルブルと一斉に首を横に振る騎士達。
オーフェスとヒューバートも一緒になって軽口を言うようになって……
………ちょっと仕返ししてやろうかしら…
「………ソフィー、フィーア、貴女達の婚約者がわたくしのことを、最近下に見ているような気がするのですけれど……」
「「そうですね」」
………即答しないで!?
悲しいから!!
ジェラルドは何も言ってないから見逃そう。
「………わたくし、騎士より侍女を優先したいの。だから主を大事にしてくれない従者はいらないのよね。大事な侍女の婚約者が主を大事にできないなんて……解消して専属騎士から外しましょうか?」
「「すみませんでした!!」」
ヒューバートとアルバートが速攻で謝ってきた。
アルバートはともかく、ヒューバートはソフィーと相思相愛だからねぇ。
ベタ惚れだから、婚約解消は嫌だよねぇ?
ちょっとスッキリしてたら、ラファエルに苦笑されていた。
「ソフィア、意地悪だね」
「ちょっと心中穏やかじゃなかったから」
よしよしとラファエルに頭を撫でられ、湯冷めしないようにと早めに王宮へと戻ったのだった。




