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第471話 なんか甘やかされてる




かぽん、と音が響く。

貸し切りの温泉で、私は両手足を伸ばしてゆっくりと息を吐いた。


「はぁぁ……極楽ぅ……」


丁度良い温度の温泉に浸かっているのは至福の時だね。

しかも王族専用温泉のため、貸し切り状態。

男女別れているので尚更。

今頃隣の男湯には、ラファエルとお兄様が入っているだろう。

………裸の付き合い。

一体どんな話をするのだろう。

ちょっとドキドキしながら壁を見る。


「………姫様はしたない……」

「なんで!?」


後方にタオルを持って待機している3人の侍女のうちの1人、ソフィーに言われる。

ただ男風呂の方向へ視線を向けただけで、はしたないの!?


「覗きなど……」

「してないよね!? この距離でどうやって覗くの! むしろラファエルの方が平気で覗きどころか遠慮なく入ってきそうだよね!?」

「否定はしませんが…」

『いや、否定してくれる!? 俺そんな節操なしに思われてるわけ!?』


あ、向こうから声が聞こえてくる。

案外普通に聞こえるんだ?


「だってラファエル前科持ちじゃない」


忘れてないよ。

私が入浴中に浴室に堂々と入ってきたのを。


『え、ラファエル殿、婚姻前にソフィアの肌を見たの?』

『肩だけだよ。湯は濁ってて見えなかったし』

『手を出したの?』

『出してないよ』


………何の話になってるのよ…


『まぁ、そんなにソフィアがお望みなら今からそっち行くけど?』

「誰もそんな事言ってないよ!!」


見られてもいないのに思わず胸を隠してしまう。

ない胸を隠しても…なんて突っ込みはいりませんからね!


『ラファエル殿、ダメだよ。結婚したら許可するけど、その前にソフィアに手を出したら強制婚約破棄だよ』

『それは拒否します』

『ははっ』


………気になってた男同士の会話は、私の話題だった。

もっとこう……なんていうか……男同士で盛り上がる話題とか……


『あ、そうそう。最近さ、メンセー国の――』

『その情報系待ってたんだよ。そういえば――』


………ぁ~、うん。

2人に普通の男の会話を期待した私がバカでした。

王太子同士の話って、やっぱり政務のことになっちゃうよね。

女同士なら、男の話題とかになる。

誰々が格好いい、とか。

だから男同士もそうなのかなぁと思ったんだよね。

誰々が可愛いだとか、男なら剣の話とか色々。


「ぽつーん…」


ラファエルとお兄様の声は徐々に小さくなっていき、私の方まで届かなくなった。

さっきまで2人の話し声が聞こえてたから寂しくなる。

こうなるなら最初から話しかけないで欲しかったな。

最初はリラックスして貸し切り露天風呂楽しんでたのに。


「………つまんないけど、気持ちいいからいいか…」


無理矢理気持ちを切り替える。


「………そういえば、なんでいきなり温泉街に来たんだろ…」


アマリリスに飲み物を手渡され、口を付けながら首を傾げる。


「姫様が行きたいと仰ったからでしょう」

「いやそうなんだけど……なんでいきなり何処に行きたいか、なんて聞かれたのかなって」


昼食を取り、一息ついたところでラファエルにそう切り出されたのだ。

忙しいはずなのに…

私がそう言うと、侍女達は視線を合わせ、同時に分かりかねると言われた。

………今の一瞬のやり取りは、何か知っている動作だろう。

けれど私に聞かせる必要ないってことか…

私は行儀悪く口元までお湯に浸かり、ぶくぶくと空気を吐き出したのだった。

………仲間はずれは拗ねちゃうよぉっと……

私がキレちゃったから、望みを叶えようとしてくれたのかな…?

申し訳ないな…

何であんなことでキレちゃったんだろ…

身内ではなかったけど、軽んじられることなんて日常茶飯事だったのに。

…私、ラファエルに甘えちゃってない…?

ラファエルなら許容してくれるなんて…そう思ってなかった…?

自分に甘くなっていることに恥ずかしくなる。

でも、ラファエルが私を甘やかしてくれてることに、ちょっと嬉しくなり、そんな自分を諌めるようにぶくぶくと頭まで湯につけたのだった。

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