第470話 どういうこと?
「ソフィアの1番は俺だよね!?」
目が覚めて、何故私がベッドに寝ているのだろうかと首を傾げて起き上がった。
寝る前と同じ格好だったのか、しわになったドレスを伸ばしながら、騒がしい隣室へと向かった。
そしてドアを開けてラファエルと視線が合った瞬間、ラファエルが必死な顔で向かってきて開口一番に聞かれたのがそれだ。
………何がどうしてそうなった…?
「………お兄様?」
説明してくれと笑っているお兄様に視線を向ける。
「ん? ああ。ソフィアがラファエル殿より上に思っているのは俺だって話」
「………意味が分からないのだけれど…」
政務的な話なら、歴が違うからそうなるよね?
「ソフィアの中で大事なのは、俺、ラファエル殿、父上母上、の順だってこと」
「………何がどうなってそうなったの…?」
思わず半目で見てしまった。
「ん~…ソフィアが言うことを聞く順番?」
「その順番だったら1番にお父様が来るでしょ!」
「あははっ」
私の言葉にお兄様が笑い転げる。
何がそんなに可笑しいのか…
「ソフィア、ソフィア」
ちょいちょいとお兄様が指差した先。
いつの間に移動したのか、壁に腕を付けてズーンと落ち込むラファエルが。
「………ぁ」
私はマズいことを言ったらしい。
「本当はソフィアに愛されている順」
「それならラファエルが1番に来なきゃ可笑しいじゃない」
そう言うと、ラファエルが素早く戻ってきた。
「だよね!」
詰め寄られて私は思わずのけ反った。
「え~」
「………なんでお兄様は自分が1番だと思うのですか……私、ブラコンじゃないんだから…」
「「ぶらこん?」」
首を傾げる2人に、あ…と思う。
これも通じないのか。
「………兄大好き人間のことです。それに、私が未だにお兄様にベタベタしてたら気持ち悪いでしょう」
「そんな事ないよ。いつでもこの胸に飛び込んできて大丈夫だよ」
バッと両手を広げられる。
満面の笑みで。
………そうでした。
この人シスコン気味だった…
「むしろもっと頼りなよソフィア。俺はソフィアが大好きなんだから」
「………お兄様…」
そんな芝居がかった感じで言わなくても…
逆に引くよ…
「レオポルド殿! ソフィアは俺のです!」
「正式にラファエル殿のモノになるのは婚姻してからだよ。それまでソフィアはサンチェス国優先だよ」
「ぐっ…」
………ラファエル…お兄様の屁理屈に屈しちゃってる…
いつもならちゃんと応戦するのに。
「さぁソフィア! 俺の胸に飛び込んで来なよ!」
「しないから」
「え~…」
だからなんでそんな残念そうな顔をするの。
「飛び込むならラファエルの腕の中がいいし」
「ソフィア…」
………何故ラファエルの目が少し潤んでいるのだろうか。
「大体、私がお兄様にべったりしてたら、カサブランカお義姉様に恨まれます」
「それはないよ。カサブランカはソフィア好きだし」
それとこれとは話が別だと思うけど…
自分の旦那が妹といい年して抱き合ってるの見たい?
私だったら見たくないけど。
ラファエルにもし妹がいたとして、抱き合ってたら嫉妬する。
たぶん、どんなに仲が良くても。
チラッと時計を見ると、もういい時間だった。
「………とりあえず、お食事にしませんか?」
「そうだね」
「アマリリス、用意を」
アマリリスが頷いて、他2人も一緒に出て行った。




