第465話 何故でしょう
「悪かったねラファエル殿。うちの公爵が迷惑をかけた」
「いえ。多少の事は大目にみますよ。同盟国間のことですし、公爵の非礼は俺とソフィアしか知らないし」
「感謝するよ」
………どうして私は2人の会話を座って聞いているのだろうか。
私は街に行くって言ったよね?
言ったよね!?
何もかも予定が狂ったんだけど!
「………わたくしはそろそろ失礼してもよろしいかしら」
これからの会話は王太子同士、国同士の話になるでしょ。
私の判断はいらない。
元々結果を聞くだけの立場の私だ。
首を突っ込むことじゃないんだから。
「どうしたのソフィア。会ったときから機嫌が悪いけど」
………お兄様は気付いてて無視してたのか!
「お兄様には関係ございませんわ。お気になさらず」
「ん? 痴話喧嘩?」
「決してそのようなことはございませんわ」
ニッコリ笑って言うと、何故か2人とも渋面になった。
「わたくし気分がよろしくないんですの。退出を許可して下さいませ。部屋でゆっくりしたいので」
「ソフィア――」
「気分が、よろしく、ないんですの」
ラファエルに聞こえなかったようだから、もう1度ゆっくりと伝えた。
「………」
「………ラファエル殿」
お兄様に促され、ラファエルはゆっくりと頷いた。
渋々だったけれど。
「失礼致します。お兄様はゆっくりなさいませ」
それだけラファエルと顔を合わせずに済む。
「うん。ゆっくり休むんだよ?」
「はい」
ゆっくりと礼をして、退出した。
………これで無断で出かけたら雷落ちるよね。
大人しく部屋には帰ろう。
部屋の外に待機していた騎士と兵士の中で、私の騎士だけに視線で合図し、その場を立ち去る。
「ソフィア様」
「何です」
「よろしいんですか? 話し合いに参加なさらなくて」
「どうせ処分についてですわ。わたくしは結果を聞くだけです。結果を聞くだけでしたら、あの部屋にいる必要ございません」
スタスタと歩いて部屋に向かった。
「………まだ怒ってるなぁ」
「怒ってますね」
「暫くはそっとしておいた方が良さそうですね」
………はぁ…
もう護衛達はヒソヒソ話にせずに、堂々と話してくれてる。
どっちにしても怒られると開き直ってるのかもしれない。
「………その口今すぐ閉じなさい。首斬られたくなかったら、ですけれど。別の主に付きたければいつでも仰って下さい。すぐに許可します」
「「「「申し訳ございませんでした!!」」」」
言ってしまった後になんだけど、騎士も、ソフィー達侍女も、私の何が気に入っているのだろうか。
普通なら別に左遷(?)させられても、何も思わないと思うんだけどな。
自分で言って虚しいけれど、王女らしくない王女に仕えても良いことないと思う。
面倒くさいだけだと思うんだけどね。
私は肩書きだけの王女だもの。
能力ないお飾りだもの。
………って言ったら怒られるよね。
「アイデア出してるソフィアが、お飾りとか能力ないとか肩書きだけだなんて絶対ないから!!」ってラファエルなら言いそう。
その言葉に自惚れていたら良いんだよね。
イラついていると、段々マイナス思考になって、最終的にネガティブになる私の悪いクセだ。
………直せるかな…
「そ、ソフィア様…?」
「………何です?」
「ほ、本気じゃないですよね…?」
「………何がです?」
「首斬るって!!」
「………ぁぁ。冗談ですわよ」
ちゃんと言ったのに、騎士達が一斉に真っ青になった。
………何故だ。
顔色が悪くなった騎士達を連れて、私は部屋に戻ったのだった。




