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第464話 取り返しはつきません




「やぁ、邪魔するよ」


ガタガタと音を立てて立ち上がる男。

言わずとも分かるアーク・ディエルゴ公爵だ。


「れ、レオポルド…!!」

「王太子である私を呼び捨てですか」

「っ……!! こ、これは失礼しました!」


ディエルゴ公爵が頭を下げた。

………私、ここにいなきゃいけないのかしら…

街でストレス発散したい。

温泉入りたい。


「王に謹慎を言い渡されている身でありながら、許可なく国から――それ以前に謹慎中に家から出るなど、どういうつもりかな」

「そ、それは! 息子がランドルフ国に無断で来国していると連絡があったからで!!」

「でももう彼らはソフィアとラファエル殿に保護され、身の安全は保証されていたはずだよね」

「そうですが!」


お兄様も無断で来国しているよね?

王族がそうホイホイと来られるはずがないんだけど。

仕事しなよ――って、これもお兄様の仕事か。


「ロードが捕らえられ、跡取りとして継がせられない以上、弟達のどちらかが継ぐことになってしまった。今彼らが罪人になったらディエルゴ公爵家の跡取りがいなくなるよねぇ」


………ぁぁ、成る程。

それでなりふり構ってられなくなったんだ。


「………で? 自由奔放に今まで遊ばせていた息子達が、王家の者に暴言を吐くようになってたからって、今更慌てて来ても遅いと思うけどね」

「っ……」


お兄様の尤もな言葉に、ディエルゴ公爵はぐうの音も出ない。

ディエルゴ公爵家の内情をよく知っているようだった。


「こんな事になる前に、教育を施してなかった自分を恨むことだね」


室内を歩きながらお兄様はいつもの声色で公爵を責めていく。

真っ青になっていく公爵には同情心もわかない。

胡座をかいていて、高みの見物していただろう公爵の自業自得。


「この国で犯した罪は、この国の王家が下す。それはサンチェス国と変わらない。むしろ貴方がここに来たことで状況が最悪だよ」

「え……」

「ラファエル殿に迷惑をかけ、さらに貴方の息子達がまたソフィアに無礼を働いた」


………あれ?

お兄様に情報が筒抜けなんですけど?

私は天井を見上げた。

一体ランドルフ国王宮の屋根裏にお兄様の影が何人いるのだろうか。


「さ、更に……?」

「更に、だよ。自国王女にタメ口、王女が許可してないのに話しかける、などなど。たとえ血が繋がっていようとも、許可してないことを公爵家の者が王女にしていいことじゃない」


公爵大丈夫かしら。

もう顔色ないんだけれども。

足が震えてもうちょっとで倒れてしまいそうだ。


「きっちり教育してなかったせいで、跡継ぎがもういないねぇ」


今度こそその場に崩れ落ちてしまった。


「奥さんに頼んでまた1から作り直す?」


………お兄様。

私の前でそんな事言わないで……

嫌でも想像しちゃって顔が赤くなりそう。

ち、知識はありますから…


「まぁでも、王も今回の貴方の行動には呆れかえってますからね。謹慎では済まされないでしょう」

「ぁ……ぁぁ……」

「………王弟だからと言って、許容されると思ってましたか? ソフィアの嫁ぎ予定の国で罪を犯すなど、ソフィアの立場を著しく損ねた代償を軽くみないことですね」


お兄様がスッと手を上げると、扉から次々と兵士が入ってきた。

………ぇ?

どっから湧いてきたの!?


「ラファエル殿に許可を貰って、国境に待機していた兵士を急いで呼び寄せたんだよ」


………いつラファエルとやり取りしたのよ。

影だったとしても、国境からここまでどれだけ時間がかかると思ってるの。

前もってラファエルには伝えてたね、これ…

私に内緒のこと多すぎる。

………これもラファエルの計算だったのかな。

精霊侍女と騎士の足止めは、最終的にお兄様が到着するための時間稼ぎ。

お兄様が来れば、私は出かけられないから。

私はひっそりとため息をついた。


「アーク・ディエルゴ。貴方を王命違反により、サンチェス国へ強制送還。及び、王家尋問対象者とする」

「ま、待って下さい!」

「待ちません。連れて行け」

「「「「「「はっ!!」」」」」」


連れ出されていくディエルゴ公爵を横目で見送り、私は今度は盛大に息を吐いた。

まだ公爵の処分を、ラファエルがお兄様に委ねてくれただろうことに、感謝すべきかもしれない。

お兄様が公爵を強制送還できるということは、ラファエルが公爵自身の無礼を穏便に済ませてくれたということだろう…

これ以上問題を犯されれば、私の居場所がなくなってしまう。

それだけは、阻止しなければ。

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