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第460話 交渉不成立




アーク・ディエルゴがランドルフ国に来国し、更に談話室へ通して数時間。

相手するために対面に座っているのだけれど、そろそろ話題がないぞ。

だってさっきから叔父様は話しかけてもブツブツ呟いていて、会話にならない。

そんな相手に根気よく話しかけている私を誰か褒めて欲しい。

何杯目かのお代わりのお茶を煎れてもらっていたとき、ノック音が聞こえてきた。


「失礼する」

「ラファ――」

「ラファエル様!!」


入室してきたのはラファエルで、ソレを目にした叔父様――いや、アーク・ディエルゴは勢いよく立ち上がった。


「ディ――」

「子供達に会わせて下さい! まだデビューも済ませていない子供です!! 寛大なる温情を! すぐにこちらへ引き渡して頂きたい!!」


………最早交渉じゃなく、ただの我が儘になっているのが分かっていないのだろう。

お父様と似た顔で詰め寄られているラファエルの心情は、穏やかではないだろうな…

公爵なのだから、他国王太子に対してまずは挨拶でしょう。

そんな事も忘れてしまうほど、自分の子供が大事なのか。

けれど、今は公爵家の者としての立ち振る舞いが優先でしょうに。

この場で父親でいられては困る。


「………それ以上仰られるなら、貴方も不敬罪で捕らえようか?」

「も、申し訳ない――いや、申し訳ございませんでした…」


静かなラファエルの声がし、勢いがよかったディエルゴ公爵は、大人しくなった。


「貴方は王弟といえども、公爵の位。共通規約により、私が貴方を処分することも可能なんですよ」


ラファエルの堂々とした立ち振る舞いに、ディエルゴ公爵はソファーに崩れ落ちるように座り込む。


「貴方の子供達は、私はともかく、自国の王女に対しても不敬でした。そんな子供に育てている貴方に、温情を与えるのは躊躇しますよ」


ラファエルの目は笑っておらず、内心怒っているんだろうな。


「は!? ソフィアに――いえ、ソフィア様にもですか!?」


本気で驚く彼をチラ見した後、お茶に口を付けた。


「ええ。自分たちの兄を無実の罪で罪人に仕立て上げた悪王女だと」


ラファエルの言葉にサァッと顔を青くさせるディエルゴ公爵。

ようやくラファエルがソファーに座る。

非公式だから私は今までずっと座ったままだけれど。

公爵は余裕がないからそんな事も気付かないだろう。


「………ロードの件で、わたくしがディエルゴ公爵家の中でどう言われているのか分かりましたわ」


ようやく私の言葉が届いたのか、ハッと私を見る公爵。

ずっといましたよ。


「そ、そんな!? 誤解でございます!! 私は決して王家に牙を向けるような!!」

「貴方が何を言おうとも、ソフィアの事を子供達がそう言ったのは事実。私の婚約者で未来の王妃に対して、サンチェス国貴族家の者が、どのような理由であれ、言っていい言葉ではない」


ギリッとディエルゴ公爵は歯を食いしばる。

………今のディエルゴ公爵は、ラファエルの逆鱗に触れることばっかり言いそうだな…


「今日はこの王宮に部屋を用意させよう」


ラファエルが私の手を取って立ち上がった。


「ちょ、お待ちを!!」

「良い夜を」


問答無用でラファエルは私を連れ出し、公爵はそのままラファエルの騎士に阻まれて談話室に残った。


「………怒ってる?」

「怒ってるよ。大事な跡取りだろうけれど、ロードの件はまだ片付いていない」


………ぁ…

そういえば、まだだったね。

思わずギュッとラファエルの手を握った。


「大丈夫。俺がいるよ」

「………うん」


忘れた頃に恐怖って再び甦ってくるよね…

どうして人って辛かったときとか悲しかったことを、記憶から消してしまえないのだろうか。

………まぁ、あの子供達のせいでもあるんだろう。


「公爵との今後の対話は俺がやる」

「え? 私も――」

「ソフィアはいない方がいい」


やんわりと拒否された…

ここで私は蚊帳の外になるのか…


「公爵がソフィアを人質に子供達を返せと言われるかもしれないから」


………ぁ、そっち系で…


「分かった。任せてしまうけれど、お願い」

「任された」


私に任されたからか、良い笑顔を向けてくる。

ラファエルの手を離して、私は彼の腕に抱きついたのだった。


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