第452話 八つ当たり
「ちょ、ちょっと、ローズ…っ」
私は強い力でローズに引っ張られながら街中を歩いている。
っていうかローズ力強いな…
知らなかったよ。
「お待ち下さい!」
護衛達が慌てて私達に追いついてくる。
「困ります。ラファエル様の命令なしにソフィア様を連れて行かれるなどと!」
「あら。ソフィアは物じゃないのよ。ラファエル様とてソフィアの行動を制限できるはずもないですわ」
「しかし!」
ローズは聞く耳を持たず、私を引っ張っていく。
………何がローズを動かしているのだろう。
私はまだ何かを言い出しそうな護衛に手の平を向け、黙らせた。
「構いません。1度離れた方が良いでしょうから」
「ソフィア様!」
護衛に焦った顔をされるが、首を横に振る。
「ローズを落ち着かせないと、このまま鬼ごっこですよ」
「鬼……」
私は護衛達に笑みを見せ、ローズの腕をトントンと叩いた。
ローズが私の腕を放し、私の前から横に並ぶ。
「ここは私の護衛だけで結構です。貴方達は戻って下さい」
「ですが……」
食い下がられるけれども、笑みを向ける。
「大丈夫です。私の護衛は少数精鋭ですから」
王宮騎士を下がらせ、私の周りは私の護衛だけにした。
「………で? 何を怒っているのローズ」
ガヤガヤと騒がしい街の人達の声に紛れ込ませながら、ローズに聞く。
「あの子供達に腹が立っただけよ」
「ローズ」
眉を潜めてローズを見る。
「例え平民の子供でも、相手の服装を見れば立場がある程度分かる。わたくし達の服装は紛れる貴族の格好。それだけでも彼らはあんな口を叩けない。それすら分からないランドルフ国の平民。王族の教育が行き届いてない証拠。まだまだラファエル様とルイス様は頑張る必要があるわ」
こ、子供相手に大人気ない…
私もあの子達の言葉にはカチンときたけれど。
苦笑するとローズに睨まれた。
「そもそもソフィアが威厳ある王女になってないから」
と、飛び火してきた!!
「ローズ……今はお忍びだから…」
「それでも貴族の服装している時点で、ある程度の立ち振る舞いしなさいよ。なんなのあの子供に話しかける姿。ただの平民に成り下がって」
何故私はローズに説教されているのだろう。
こんなはずじゃなかったのに…
「ご、ごめん…」
「謝る前にちゃんとして」
「は、はい…」
「背が丸くなってるわよ」
「はい!」
私は落ち込んで背が丸くなっていたけれど、ピシッと伸ばす。
………ローズといると気楽なんだけど、たまにこうなる。
いつもは許容される事も、一切ダメ。
大抵は八つ当たり気味に正論言われるから、こっちが全面的に悪いと思っちゃうから。
………いや、私も悪いんだけど…
「いやぁ、このやり取り久しぶりだな。ソフィア様、王とローズ嬢には弱いから」
私の護衛が余計なこと言う。
「………アルバート。帰って鍛錬増やしたいならそう言ってくれればいいのに」
ニッコリ笑って振り返れば、ビシッとアルバートが固まった。
「鍛えてあげるよ。………総勢力で」
「全力で拒否します!!」
本当に全力で遠慮され、私は心の中で舌打ちしたのだった。
とにかくローズの機嫌を直すため、私はローズが好きな店に向かったのだった。




