第451話 疑惑、はありません
「「お父様!!」」
ラファエルと、そして珍しくルイスとローズと一緒に、街へ視察に出ていた時だった。
ガシッと死角から飛び出してきた2つの影。
一瞬誰も反応することが出来ず、その影はガシッとラファエルとルイスにそれぞれ抱きついた。
当然私達4人プラス、後方の護衛達も身動きできなくなった。
「………ラファエル……隠し子?」
「………ルイス様…」
私とローズが思わず引くと、2人の顔が真っ青になる。
「ないから!!」
「ありえませんから!!」
2人同時に必死に否定する。
「いやでも……ラファエルは格好いいし、遊びの1つや2つで隠し子が――」
「ルイス様もお年がお年ですし…未婚でそういう事も…」
疑惑の目で見ると、2人の顔色がなくなった。
「………ソフィア……俺、泣くよ……?」
「私がそんな不誠実なことするわけないでしょう」
あ、2人が怒った。
「「冗談です(わ)」」
さすがにこれ以上悪乗りすると2人がキレそうだ。
2人の腰にしがみついている子供は、どう見ても10歳前後。
ルイスはともかく、ラファエルの子供節はないだろう。
「………そんな理由でないと否定している訳じゃないよ」
おっと……
心を読まれた上に、半目で見られちゃいました。
「私も女性に手を出したことなどありませんよ」
………ルイスも声が怒ってるなぁ…
私はしゃがみ込んで、2人の子供より視線が下に来るようにする。
「お名前言えるかな?」
「「なんだよこのおばさん」」
………声を揃えて言われましたとも。
せめてお姉さんと呼んで欲しかったな!!
「………君達何処から来たのかな?」
「うっさいおばさん!!」
私のHPを0にするつもりなのかな?
ピクピクと頬が引きつっている気がするなぁ。
「お言葉が少々過ぎるようですわね、このお子様達は」
後ろからローズの声がし、私が振り返ると…
………ぁぁ、振り返らなければよかった。
「なんだよねぇちゃん!」
………なんでローズは姉ちゃんなの!?
「ラファエル様、ルイス様、わたくし達は失礼致しますわね」
「「「え……」」」
2人もだけど、私もローズを唖然と見る。
「お2人の子供ですし? わたくしのソフィアを邪険にする者は、例え子供といえども許せませんから」
私は腕を引かれ、たたらを踏みながら立ち上がる。
「私達の子供ではありません!」
「ローズ嬢のじゃなくて、俺のだけど!?」
「………ラファエル……そこなんだ……」
私は苦笑するも、ローズは険しい顔のまま。
かと思えば顔に笑みを浮かべた。
目は笑っていないけど。
「わたくしはともかく、ソフィアの顔を知らない者はありえませんから」
ニッコリ笑うローズが怖い。
「サンチェス国では、物心ついた子供でも全員がソフィアの事を知っています」
………一般人に紛れれば、平民は一切気付きませんからね?
私の“名前だけ”は知れ渡っているけれども。
「この国の王族に対する民の知識はまだまだですわね」
………これはあれだな。
私をダシにしてここから立ち去りたいだけだ。
私はそのままローズに引きずられるように、その場を立ち去るしかなかった。
子供にまとわりつかれている2人は追いかけてくることが出来ず、護衛も慌てて二手に分かれたのだった。




