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第45話 まずはトップから




「ただいま戻りました」


キラキラした大広間。

ここも壁全て金色か。

思わず頭を下げたまま思ったのはそれだけだった。


「………サンチェス国で何か掴んだのか」

「はい。ランドルフ国の為になる利益を生み出せる1つの事をもう実践し、借金の一部を返済し、同額の金額を持ち帰ってきました」


目の前の上座に座っているのはランドルフ国王。

食が細いのか、食べるものがなくなったのか、精神的なものか分からないが、酷く頬がこけていた。

ここに来る途中で飾られていた肖像画とは酷く違っていた。

声色も弱々しく聞こえた。

………って、ラファエルさん?

お金持ってるって言っちゃって大丈夫!?


「………そうか」


私の予想に反して、王は興味を示さなかった。

………なんだこれ。

想像していたのと違うんですけど……


「一応兄達の様子を探ってきましたが」


ガタッと王が前のめりになった。

………息子の様子には反応するんだ……

それだけでも、本当に可愛がっていたのだと分かる。


「サンチェス国王女の脅迫という大罪ですので、当分は牢から出られません。処分も本格的には決まっていないようです」

「………そう、か……」


王が力なく椅子に座り直した。

………はぁ。

これが一国の王なんだ。

私の父とは大分違う。


「………ご紹介が遅れました。こちらはソフィア・サンチェス王女。私の婚約者になった方です。彼女の手腕でランドルフ国民救済が出来たのです」

「ソフィア・サンチェスと申します。宜しくお願いいたします」

「………ぁぁ」


………

………………

………………………

それだけ、ですか。

言いたくはないけれど、貴方の国の民を救う手助けをしたんですよ。

他に言うことないんですか。

………まったく。

ホント、トップから変えないといけない国ね!

改めて腹が立った。

これが王族なんて、王家なんて認めない!


「お言葉ですが、同盟国の――一国の王女に対しての返しとは思えない返答ですわね」


強い口調で俯いたまま言ってしまった。

面を上げて良いとは言われてないから、顔を上げられないからね。


「民を見捨てておいて、まだその椅子に座っておられるのですから、お礼の一つでも言ったらどうなのです。それとも、ランドルフ国はサンチェス国など眼中になく、民も眼中になく、王子達の行方だけ考えていたら良いと思っておられるのでしたら、今すぐその椅子から降りられたらどうです。幸い、優秀な跡継ぎがここにいらっしゃるのですからさっさと譲ったら良いのです。貴方のような王が上にいては民が哀れですわ」


私の言葉に、息を飲む音が聞こえた。

隣からではなく、頭上から。

まだ私の言葉を理解できる頭は持っているようだった。


「民をあれだけ見捨てておきながら」


脳裏に各街の人々の亡骸が浮かんでくる。


「泣くほど食に困らせておきながら」


私に対して泣きながら頭を下げていた人達。


「罪悪感や贖罪の言葉が浮かばぬようなら、貴方に王の資格はありません! 貴方に親の資格もありません!! 人としての非常識を許容している時点で、子の親であることを恥じるべきです! 自分のことしか考えられないのなら、そんな国との同盟など続けられません!」


つい感情的になってしまった。

ガタンッ!! という音にハッとする。

………喧嘩売ってしまった……

ラファエルの嘘つき。

王がまともに戻っているなど嘘ついてどうするの。

目の前の人物は、王家の資格などない、ただの男じゃない…


「………その通りだな」


先程の声色が嘘のように、ハッキリとした言葉が頭上から聞こえた。


「申し訳ない。我が国の問題を他国の王女に対応させてしまったことを、深く詫びる」


衣擦れの音がする。

どうやら王が頭を下げたようだ。


「心苦しかったが、そなたを見定めさせてもらうために一芝居うたせてもらった」


………ん?


「………ラファエル、いい伴侶を見つけたな」

「お褒め頂き、光栄です」


………ちょっと待って。

何なの?


「ソフィア、もう良いよ頭を上げてもらって」


ラファエルに言われて、恐る恐る顔を上げると――


「………ぁれ…?」


上座には先程までいなかった男がいた。

入ってきた時チラッと見えた、私が王と認識した男は、上座に座っている男に足蹴にされていた。

………何その状況。


「今王座に座っているのは、俺の叔父で、ルイス・ランドルフ。俺の父マテウス・ランドルフの弟にして、俺が王に付くまでの代理で王座に座って貰うことになったんだ。双子だから顔そっくりだし、国民には王が正気を取り戻した呈で周知する」

「………………………因みにいつから立ててた計画?」

「サンチェス国行くちょっと前から。俺がいなくなった後にルイスに動いてもらってた。宰相だから取り仕切るのはお手の物」

「………だったら、こんな国の状況になるまで何で動かなかったの……」

「ルイスは頑張ってたけど、何せ王族貴族の大勢に対してルイス一人じゃ対抗できないし、俺が利益出して金作れるまではどうやっても国を立て直すのは無理だったよ…」


ラファエルの言葉にルイスが苦笑する。


「ソフィア王女がどのように動くかも試させてもらった。中途半端な王族では、今のランドルフ国でやっていけないと思ったし、ラファエルはソフィア王女のことをどれだけ愛しているかを説明するだけで、肝心な能力的説明がなかったもので……」


ルイスの言葉に、カッと顔が熱くなった。

なんて事を話してるんだ!

と叫びたくなった。


「る、ルイス様は味方ということは分かりました。ですが、何故このタイミングで……」


ラファエルが信頼している人だ。

信用して良いだろう。

何かあったらライトとカゲロウが動いてくれるだろうし。


「ソフィアのおかげで民の飢えが解決し、俺もソフィアのアイデアで利益を上げて金を作り出していけてる。ランドルフ国を変えていくタイミングを見誤ると取り返しが付かないからね。今がそのタイミングだと思った」


………ランドルフ国の変化が良い方向に変わってきたタイミングで、って事ね。

隠さずため息を付く。


「ラファエルのバカ」

「え!? なんで!?」


………さて、これから大変だぞ……と、私はラファエルに渡すアイデアを頭の中で考え始めた。


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