第449話 紛らわしくてすみません
私は昼食を終えた後、考え込んでいた。
ラファエルが帰ってくる前に、対策考えておかないと…
「………う~ん…」
刺繍をしながら考えていたけれど、どうにもどっちも進まなかった。
私は刺繍を諦めて道具をしまった。
「ソフィア様、何をお悩みで?」
オーフェスに聞かれて、私は素直に話した。
「パートナー?」
「そう。誰にしようかなと思って…」
ソファーに座って膝に肘を乗せて、手で顔を支えた状態で悩む。
王女としてありえない?
放っておいて。
「う~ん……学園に通っているとなると…やっぱり影’sの中から選ぶしかないか…」
「………ソフィア様は影’sを亡き者にしたいのですか…?」
「………へ?」
ヒューバートに言われ、私はキョトンと彼を見た。
すると、壁際に立っている護衛の顔色が悪い。
更に上からも負のオーラが…?
「ちょ、どうしたのよ」
「どうしたもこうしたもないですよ。何故パートナーを探す必要があるんですか」
「必要でしょ?」
パートナーを連れて行かないだなんて、格好のネタを貴族令嬢達に与えることなんてする必要もないし、したくない。
「ですから、何故探す必要があるんですか!」
なんで怒鳴られなきゃならないのだろうか…
私間違ったこと言ってないし。
「じゃあパーティーに1人で行けって言うの!? 酷くない!?」
「そもそもラファエル様がいらっしゃるでしょう!? 探す必要ないでしょう!!」
「な――!?」
私はソファーから立ち上がって腰に手を当てた。
「ラファエルは私のパートナーよ!? なんでローズのパートナーにしなきゃいけないのよ!!」
「「『『え………』』」」
護衛と影’sの声が重なった。
「そもそも私の婚約者よ!? 私がパートナーとして一緒に行くのは当然でしょ!? そもそもラファエルを貸し出したりしないわよ!! ラファエルは私――」
ハッとして私は背後を振り返った。
なんか気配を感じたから。
「“ラファエルは私”、の続きは何?」
………どうして満面の笑みで背後に立っているの…
っていうかいつ入ってきたの…?
お仕事中でしょ?
しかも何故か手に剣を持っている。
それも剥き出しの……って、危ないよ!!
「………ラファエル、今から鍛錬でもするの?」
「いいや? ソフィアのパートナーに選ばれた奴の首を、胴体から離そうと」
「物騒なんですけど!? そもそもなんで私のパートナー探しに話がすり替わってるの!?」
「「『『そもそもソフィア様がローズ嬢のパートナー探し、と言わなかったからです!!』』」」
おぉぅ……
全員(ラファエル除く)に突っ込まれてしまった…
「………ぇ? 言ってなかった?」
「ええ」
「言ってませんね」
「言ってなかったね」
………途中から会話を聞いていたと思われるラファエルからも、何故か言われてしまった…
「ローズ嬢のパートナーなら影一か影五がいいと思うよ」
キンッと剣を鞘に収めながらラファエルが言う。
「え……?」
「彼女の身長につり合うのはその2人だよ」
「あ、そっか…」
じゃあどっちかに務めてもらおう。
「ありがとうラファエル」
「どう致しまして」
ラファエルがニッコリ笑って、剣をヒューバートに渡した。
あれ、ヒューバートの剣だったんだ…
みんなはホッとして、いつもの雰囲気に戻った。
………紛らわしい言い方してすみませんでした…
私は誤魔化すように刺繍の続きをと、道具を手に取ったのだった。




