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第448話 抜かりありませんでした

誤字報告ありがとうございます!




「ドレス?」

「うん。私自分のことで頭いっぱいで、ローズにちゃんとパーティーあるのとか、伝えられてなかったから…」


私は今ローズの部屋にお邪魔している。

きちんと整理整頓されているローズの部屋。

ローズには専属侍女がいないから、自分で掃除しているのだろう。

サンチェス国から連れてくればよかったのに、勘当されているからとギュンター公爵家から連れてきていない。

更にお父様達にも願わず、身の回りの世話をする侍女がいない。

ちゃんと侍女を付けるからと言っても、頑なにローズは拒んでいる。

自分は姫扱いして欲しくて勘当されて来たのでも、王族の養子縁組を頼んだわけでもないから、と。

頑固な…

でも外では王族らしく振る舞わなければならないから、パーティー用のドレスも用意しなければと押し掛けた。

きっとローズも知らないだろうから。

時間がないし、さっさと準備進めなきゃ。


「必要ないわ」


キッパリと言われてしまった…


「で、でも……」

「わたくしは正式な王族ではないのだから、サンチェス国から何着か持ってきたドレスの中から選ぶことにするわ」


しれっと何を仰っているんですかローズさん……


「それはギュンター公爵にいた時のでしょう?」

「そうよ。ぁぁ、あの卒業パーティー時のドレスでもいいわよ。レオナルドの婚約者として、次期第二王子妃に相応しいドレスにしてたから、ちょっと豪華にしてたし。あの時着てたのを見てた人はこっちにいないし、バレないでしょ」


………普通は着回したりしないんだけど…

しかも曰くありげなドレスは、特に嫌がると思うのだけれど…


「………でも、ルイスが…」


前の婚約者用に作ったドレスを着るなんて、ルイスが良く思わないと思うのだけれど…


「そんな事気にされる方ではないわよ。ラファエル様じゃあるまいし」

「………」


こ、これはさすがに否定できない…

人に贈られてきた布でさえ、まるでかたきを見るような目で見てたし…

あれでドレスなんて作ったら…


「学園内のパーティーなんだから、ルイス様とは踊れないし、パートナーがいないパーティーに気合い入れることもないでしょう? ソフィアみたいに全校生徒の前で踊ることもないわ」


はぅっ!!

心に深く矢が刺さったような痛みがっ!!

い、嫌なこと思い出させないでよ…

………ぁ、また胃が痛くなってきた…

サンチェス国にいたときはパートナーなんていなかったから、私も気楽にしてたし、誘われることはまず無かったから楽観視してたんだよね…

実は公式の場でお父様とお兄様以外と踊ったのは、ラファエルだけなのだ。

だから、婚約者がいて確実に踊ると分かっているから、緊張が半端ない。


「まったく……わたくしよりソフィアは大丈夫ですの? あまり人前で踊り慣れていないでしょう?」

「ぅぅ……大丈夫じゃないけど……そうも言ってられないわ。これからもこういう事があるんだし、学園で慣れていないと…」

「そうね。貴族夫人を招いたら、それこそ失敗できないもの」


………うわーん!!

ローズが辛辣に、私の心臓に矢を射ってくるよぉ!!


「わたくしのことは心配せずに、自分の心配なさいな。ダンスの練習なら付き合ってあげるから」

「………本当に良いの? せっかくの機会なんだし、ローズも楽しんで欲しい…」

「わたくしはソフィアの絶対的な味方であるためにここにいるのよ? ソフィアが楽しければわたくしも楽しいし、ソフィアが悲しければわたくしも悲しい。怒ってたらわたくしも気分はよろしくないですし」

「ローズ…」

「ソフィアがわたくしを心配してくれるのはありがたいけれどもね。わたくしはソフィアが大好きだから見守りたいの」

「私もローズが大好きよ。だから、ちゃんと一緒に楽しんで欲しいもの」


一方的なんて嫌だ。

そんなの、友達じゃないし。


「ローズも楽しんで、前準備とかして欲しいもの! そんな悟りきった言葉は嬉しくないよ」


大体、同じ歳なんだから!

………ローズみたいに落ち着きを持て、なんて言葉はいらないから!!


「ソフィアは本当に、優しいわね」


クスクス笑っているローズは、本当に大人のお姉さん、って感じだけれども!

そんな事を話していると、ノック音が聞こえ、ローズが返事をすると王宮侍女らが入ってくる。

その手に大きな箱を持って。

ローズと顔を見合わせて、箱を侍女に開けて貰うと――


「あら…」

「わぁ!」


中にはこれまた豪華なドレスが収められていた。

私がサンチェス国の卒業パーティーで着ていたようなピンクローズ色のドレスで、紅の宝石が控えめに散りばめられており、上品な仕上がりのドレス。

ローズのナイスボディなラインを強調するかのような、身体にフィットしそうなデザイン。


「………紅……もしかしてルイスかな?」


ルイスの目の色もラファエルと同じで赤だ。


「………まったく……抜け目ないですわね……一体いくらしたのかしらこのドレス…」


あ、ローズも私と同じこと気にしてる…

やっぱり気になるよね!!


「………ぁの、ソフィア?」

「うん、行ってらっしゃい」


気まずそうな顔をするローズを私は笑顔で見送った。

何だかんだ言っても嬉しかったのだろう。

そそくさと部屋を出て行ったローズの後ろ姿を、微笑ましく見送った。


「ルイスも気にしてなさそうで、ローズにこんなドレスを用意するなんて。………ふふっ」


ルイスがローズを大事にしてくれそうで、私は笑いながら部屋を出たのだった。


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