第447話 まさかの揃い
「わぁ……綺麗……」
私は部屋に届けられた贈り物の箱をフィーアとアマリリスに開けて貰った。
お届け物です、とヒューバートが預かってきたものだ。
首を傾げて恐る恐る受け取ったのは先程。
箱の中に収められていたのは、豪華なドレスだった。
紅を主体とした布に、紫色のビーズのような小さな宝石がちりばめられている。
フィーアとアマリリスが肩の部分を持って広げてくれて、私は思わず呟いて見とれた。
肩のラインは控えめに空いていて、ふんわりとしたスカート部分にはレースが惜しみなく付けられ――
「………って!! こんな豪華なドレス一体誰が贈ってきたの!!」
両手を頭に当て、叫んでしまう。
「「ラファエル様しかおられないでしょう」」
同時に突っ込まれましたとも!
「なんで!?」
そのままの体勢で侍女2人に慌てて聞いた。
「何故、とは……姫様がラファエル様におねだりしたのでしょう?」
「え!? 私が!?」
そんな覚えありませんけれども!?
私は贅沢するまいと、ラファエルにおねだりする事なんてないのに!
贅沢の極みのドレスを私が!?
2人の記憶違いじゃないの!?
「学園のパーティ用にドレスをリメイクするとおっしゃったときに」
「………ぁぁあああぁぁ!!」
そうでした!!
アルバートがバカな発言したせいで、ラファエルにおねだりして怒りをおさめてもらったんだった!!
ソファーに突っ伏してしまう。
「一体いくら使ったのぉ!?」
拳を握ってまた叫んでしまう。
ぜ、贅沢品!!
ラファエルのお金がぁ!!
わ、私の貯金を渡すにも、金額を聞くのが怖すぎる!!
「「そこですか……」」
「そこなんだ…」
「え……」
なんか1人、さっきまでいなかった人の声が聞こえたような…
恐る恐る振り返ってみると、片方の腰に手を当て苦笑しているラファエルさんが…
………今日もモデル立ちイケメンでなによりです…
って、違う!!
「ら、ラファエル……このドレスいくらかかったのぉ!?」
「ちょっ――」
「私の貯金で足りるのかしら!? は、払えなかったら分割払いに!!」
「ちょっとソフィア、落ち着いて……」
「あ、あと何個ぐらいアイデア出して利益出したらいいの!? 聞くのは怖いけど、私の一生をかけて――」
「はい、ちょっと落ちついて」
思わずラファエルの胸ぐらを掴んで彼を揺さぶっていた私は、その腕ごとラファエルに抱き込まれてしまった。
それで私は自分がかなりマズい状態で、ラファエルに詰め寄っていたことを知る。
お、王太子に対して私はなんて事を…
「気に入らなかった?」
「………」
「ソフィア」
み、耳元で、しかも低ボイスで名前呼ばないで!!
私その声に、すっごく弱いから!!
腰が砕けるっ!!
真っ赤になってしまう!!
「す、すごく素敵なドレスです…」
あ、既に腰砕けてた……
足に力が入らなくて、立ってられない…
「じゃあ気にせず着て。せっかくソフィアに贈ったのに、ソフィアからお金なんて受け取るはずないでしょ。贈り物の意味ないでしょ」
「ぅぅ……」
ラファエルは私の状態に気付いたのか、私の身体は掬い取られた。
ゆっくりソファーまで運んでくれて、座らされる。
「で、でも…」
「ん? 気に入らないところでもあった? 直しに出す?」
「そ、そうではなく、ラファエルの色と私の色……」
「いいドレスでしょ」
ニッコリと微笑まれ、私はもう何も言えず、真っ赤になった顔を伏せるしかなかった。
パーティー会場で、私はラファエルの色のドレスを身に纏って踊るのか…
は、恥ずかしすぎるっ!!
絶対に失敗できないのに、ドキドキする胸をギュッと押さえるのに必死になってしまいそう…
「………はっ!! ら、ラファエルの服は!?」
「一緒に作ったよ?」
な、なんて事だ。
それではお返しに作れないじゃないか…
あの時気付けよ私!!
「………ぁ……ま、まさか……」
「うん。ソフィアと色合わせてるよ」
ですよね!!
ラファエルがそんな絶好の機会を逃すことはないですよね!!
「紫の生地に紅の装飾品」
………オーマイガ……
私は手で顔を覆った。
当日は公開処刑の気分だ…
「サンチェス国じゃなきゃ、紫使っていいんでしょ?」
「………はぃ」
私は弱々しく返事をするだけだった。
あ、でも、みんな私の色だと気付かないよね…?
そこだけが救いだった。




