第446話 動揺していました
「………ラファエル様、今日お休みできませんか…」
「元気でしょ? それに来たばっかりだよ」
「ぅぅ……」
寝て覚めて、昨日の影’sの報告はきっと夢だったんだろう。
ちょっと上位だっただけのはずだ。
と、言い聞かせていつも通りに朝一番、ラファエルと共に登校した。
そして誰もいない通路に貼ったままの順位表を2人で見るため、掲示板まで足を運んだ。
結果は、影’sの虚偽報告ではありませんでした。
しっかりとラファエルと横並びで私の名前があり、その下に3位の人の名前があった。
ちなみにローズは10位でした。
「………ラファエル様って、当然満点ですよね……」
「2年の試験だからね。さすがに3年の試験を今すぐやれっていわれたら、去年俺は途中で留学してたから、その間の勉強は分からないかな。………っていうかなんで誰もいないのに敬語なの」
ということは私も満点だったのか…
いくらラファエルに教えられたからといって、私が満点取れるなんて思ってなかったよ。
サンチェス国でも中くらいだったのに。
初めてじゃないかな…前世も含めて…
………さすがに小学生レベルではあるよ!?
そこまで遡って考えられたら泣くから!!
「ぅぅ……不正疑惑……」
「ないから」
ポンポンッと頭を軽く撫でられ、教室へと促される。
「………っていうかソフィア」
「ぅぅ……え? はい」
「ソフィアが弱音吐いてるのって、主に他人に思われることに関してだよね」
「………ん?」
「不正疑惑とか、次の試験の周囲のプレッシャーとか」
………うん、口に出してるのはそれだけれども。
おバカな私が全問正解っていうことにも、ビックリしてるよ。
ありえないって。
でもそれはそれで結果出せたと、ラファエルに恥じかかせずに良かったとは思ってる。
順位表が間違いないと分かった時点で、私頑張ったと。
王女として当然の、目に見えての結果をようやく出せたと思う。
「だって、私王女らしくないですから……」
「………」
ラファエルが沈黙した。
何か言って!?
私泣くよ!?
「………王女らしいって何?」
「え? それは、美しさですとか、優秀さですとか……お淑やか…」
………もしもしラファエル様。
何故顔を反らして肩を揺らすのでしょうか?
絶対に笑ってるでしょ!?
「酷い!!」
「あははっ。ごめん。全部ソフィアは持ってるのに、真剣に悩んでいるみたいだから」
「………そんなバカな…」
ラファエルの目が可笑しい。
「だってソフィアは元々美人だし、試験で俺と並んで1位取れるし、それ以前にランドルフ国に利益をもたらしてくれてるし、王女モードになったらお淑やかに出来るでしょ」
「顔はどうしようもないから一般的美人には入らないって分かってるよ」
「いつになったらソフィアは認めるんだろうね。他国王子に口説かれてるっていうのに自覚ないの?」
「あれは私のアイデアが欲しいだけ。持ち上げてるだけだよ」
「………はぁ」
ため息をつかれてしまった。
でもこれだけは絶対にありえないのだ。
私は他人として客観的に見られるから、鏡の中の私を見てきちんと判断してるもの。
ソフィーは可愛いのになぁ。
なんでだろ?
「………王女としてやれることはやるけど…なんかみんなに求められている王女の、ハードル高すぎる気がする……っていうか、当然の事として求められるというか…それに応えられているか……いや、応えられてない気がするし…」
「ソフィアの思い込み。またネガティブになってるし。1位取って動揺した?」
ラファエルの言葉に私はハッとする。
………動揺……
してたのか、私は…
「ぁぅ……ごめんなさい」
「落ち着いたね。敬語取れてるし、いつものソフィアになったね」
あ……しまった。
慌てて周りを見るが、まだ生徒達は登校してきてない。
「頑張るのは良いけど、ソフィアって周りっていうよりかは、自分でハードル上げてるよね」
「え……自分で?」
「昨日あれから従者に何言われたか知らないけど。聞く気も無いしね。何か不安なことあれば俺に言えばちゃんと答えてあげるし、ソフィアはそれを鵜呑みにすればいいの。何でもかんでも従者の言うこと受け止めない」
「………はい……って、全部鵜呑みには出来ないからね!? ラファエルが間違ってたら私止めなきゃだし!」
「チッ…」
………だから、本気の舌打ちしないで下さい。
「………ふふっ」
「あはは」
2人して吹き出し、いつもの調子を取り戻した私は、誰も見ていないことをいいことに、ラファエルの腕に抱きついたのだった。
今の私は1生徒。
羽目を外しても咎められないでしょう。
ラファエルもご機嫌になり、2人で貸し切りの教室に入ったのだった。




