第444話 子供か
「ぅぅ……気持ち悪い……」
朝起きてフィーアに着替えさせてもらって、ラファエルを待っている間、私は口元を押さえていた。
「え? まさかソフィア様懐妊か!?」
スパコンッと馬鹿な発言をしたアルバートの後頭部に、綺麗に他の護衛3人の平手打ちが入った。
カコンッと私が投げたバインダーもどきは、アルバートの額に命中。
「いだぁぁーーーー!!」
アルバートがその場に蹲った。
「………まったく………ぅっ……」
あ、ダメだ…
また吐き気が…
「………気持ち悪いと仰っておられるのに、動くからですよ」
アマリリスに呆れられながらも水を差し出され、大人しく受け取って飲む。
「完全にソフィア様の自業自得だな」
「吐き気の原因に思い当たる件はありますか?」
「………ぅぅ……き、昨日はラファエルのお仕事に付き合って、執務室で甘味食べて……夕飯食べて……寝たよ?」
「食事内容は知っていますが、甘味はどれほど食べたのですか?」
「えっと……」
私は思い出しながら手折っていく。
両手を一周したとき、全員に呆れ顔を向けられましたとも。
はい、分かってます。
「食べ過ぎね!」
「………ご自覚なさっておられるなら、なによりです」
呆れ顔のまま言われるけれどね。
私は悪くないと思うんですよ!
「だってラファエルの甘味が美味しいのが悪いもん! 外はパリパリで中はトロリとした濃厚なクリーム!」
「姫様それって…」
「そう!」
「「シュークリーム!!」」
アマリリスと指差し合い、私達は声を上げた。
「わぁ。出来たんですね! それ、ラファエル様にレシピ教えてもらいたいです!」
「言っとく! アマリリスにも作ってもらいたいし!」
「言っておきますが、ラファエル様のレシピでの姫様のおやつには出しませんからね」
私は笑ったまま固まった。
アマリリスは笑顔のまま当然のように言った。
「なんで!?」
「ラファエル様に嫉妬されるからに決まっているじゃないですか。ラファエル様が知らない甘味を姫様に出すと、相当厳しい目を向けられますから」
「そ、それじゃあアマリリスのお菓子食べられないじゃない!」
なんて事をするのラファエルは!
「………まぁ、いらっしゃらないときならこっそりと…」
「絶対よ!?」
ラファエルの甘味は美味しいけれど、前世の私の舌はアマリリスの甘味の方がひどく馴染む。
当然って言えば当然だけれども。
ラファエルの甘味に不満があるわけじゃないよ!?
でも、懐かしい味を食べたい、っていう欲求もまた事実。
「………うっ!?」
「姫様!?」
「………はしゃぎすぎた……」
猛省してソファーに横たわる。
「………コレでは本日の学園はお休みですわね…」
「なんで!? 行くよ!?」
ガバッと起き上がってすぐに倒れ込む。
勢いよく上半身を起こしたのがマズかったらしい。
「………お休みしますよね?」
「………はい。ごめんなさい……」
我ながら、食べ過ぎで学校休むとか……子供か!!
内心涙しながら横になってため息をつく。
「消化に良い薬草を貰ってまいります」
フィーアが出て行き、アマリリスが氷水を用意してきて、冷たいタオルを額に当ててくれる。
あ~気持ちいい…
「………あんなに食べるんじゃなかった……今日は発表なのに……」
「試験のですか?」
「そぅ」
「ラファエル様も影’sも行くのですから、見てきて下さいますよ」
「え? 影’sも? 私はここにいるのに?」
「影’sは生徒ですよ。健康なら通わなければ」
「………そだね……」
影’sが影の仕事できない。
私のせいだけれども。
こうして私は影’sを見送ったのだった。
ちなみにラファエルは私の状態を見て、王宮に残ったのだった。
はは……次からは気をつけます……




