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第443話 醜態を晒してしまった




学園のチャイムが鳴り響く。

私は閉じていた目を開いた。

そのタイミングで伏せていた用紙を機械が回収していった。

本日期末試験。

全ての教科の試験が終わった。

………しまった。

最後の見直ししてない。

そう思ったけれど、時間を残して全て解答し終えた私に、学園の椅子が眠りに誘った。

………座り心地最高なんだよね。

ふかふかのソファーみたいな椅子は、やっぱり学園には必要ないと思う。

勉強に身が入らないくらいに気持ちがいいのだ。


「ソフィア、気持ちよさそうだったね」


ハッと横に顔を向けると、ラファエルが頬杖ついて微笑んでいた。

………いつから見られていたのだろうか。

誤魔化すようにへらりと笑う。

見られたのはどうしようもないのだから。


「ラファエル様が教えて下さったおかげで、今回は大丈夫そうな気がします」

「スラスラ解いて、余った時間に眠っちゃうぐらいだからね」


………その事は忘れて欲しいのだけれど…


「ですが見直しの時間を取れなかったことが、唯一の不安要素です…」

「大丈夫でしょ。私の作った問題が解けるぐらいだから」


ラファエルが立ち上がって、私に手を差し出す。

相変わらずスムーズな動作で。


「帰ろうソフィア。早く帰って私の手伝いしてくれる?」

「はい。本日のお仕事はどんなものですか?」


差し出された手に自分のを置き、立ち上がった。


「帰ってからね。ローズ嬢も一緒に帰ろう」

「はい、少々お待ち下さいませ」


ローズが急いで机の上を片付け、立ち上がる。

ラファエルがローズに声をかけるなんて珍しい。

普段なら勝手に帰って来い、みたいな感じで声もかけずにローズを置いていくのに。

今日の用事はローズにも関係あるのかな?

3人で学園を出て馬車に乗り込む。

さすがにこの時はローズ用の馬車があるので、二手に分かれて乗ったけれども。


「………あれ?」


馬車の小窓から、ローズを乗せた馬車が私達の乗った馬車とは別の方向に行くのが見えた。


「ラファエル、ローズが……」

「それでいいの」

「え…?」

「今回ローズ嬢にも頼まれて試験模擬問題作って渡してたんだ。慣れない土地の慣れない勉強を頑張ったご褒美に、時間を作ってやれとルイスに命令した」


………ラファエルが、知らぬ所で動いてました。


「じゃあ、あの馬車の中には既に?」

「ルイスに迎えに来させたから、乗ってると思うよ」

「そっかぁ!」


ローズの楽しい時間が作れたと知って、私は嬉しくなった。


「ということで、ルイスも俺もいない王宮は心許ないから、今日は俺がお留守番。ちゃんと自分の仕事は片付けなきゃね」


ラファエルのその言い方に、私はクスクスと笑ってしまう。

ラファエルがいないときはルイスが仕事をやってたから、心配はなかったものね。


「じゃあ私はラファエルの書類整理のお手伝い?」

「いいや? 俺の癒やしを傍に置きたいだけ」

「癒やしって…」


想像してなかった言葉が出てきたぞ…?

私は仕事の手伝いの為と言われたのでは…?

………私の手は必要ないのか…と落ち込んでしまう。


「ルイスがいたら俺の執務室に入れないでしょ。門前払いで」

「まぁ……」

「ソフィアがいてくれるだけで、俺のやる気が上がるって事を、ルイスは理解してないから」


………いや、そうじゃないと思う…

ルイスは多分、私がいることでラファエルの手が止まってしまうと、分かっているから禁止しているのだと思う。

私でも想像できちゃうよラファエル…

私が部屋で待っていると思うから、ラファエルは早く仕事を終えられるのでは…

そんな事を言えるはずもなく、嬉しそうに笑うラファエルに私も笑顔で返した。


「あ、そうだ。俺の執務室にいる間、新作甘味の味見してよソフィア」


その言葉に私は仕事を手伝えない不満や気落ちを、一瞬で忘れ去った。

我ながら単純だと思う。


「新作できたの!?」

「うん。まだ誰も食べてないよ」

「やった! ラファエルの甘味楽しみ!」


新作甘味の話題に盛り上がりながら、私達は王宮へと戻ったのだった。


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