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第441話 やっぱりやらかす




「お茶会?」

「そう。久しぶりにお庭で一緒にお茶しない?」


お昼の食事が終わって、私は私の庭にローズを誘うため、ローズに声をかけにアマリリスに向かってもらった。

最初は私がローズの部屋まで行くつもりだったのだけれど、オーフェスに止められてしまった。

王女の自覚をもて、と。

そして私の部屋に来てくれたローズにお茶に誘った。


「まぁ、よろしいですけれど…ソフィアもこの頃忙しくしているでしょう?」

「試験勉強は今お休み中だから」

「そう。分かったわ」


ローズが頷き、私は侍女と騎士を連れて庭へ向かった。

途中にいた何名かの侍女を引き連れて、ソフィーも合流。

王族相手の給仕も勉強させたいんだとか。

ここではローズも王族扱いだから、いい緊張感がある。

庭に向かい、スッと侍女が動いて私用とローズ用の椅子を引いて待機。

私とローズが座ろうとすると椅子を動かして丁度良い位置に。

最初は大丈夫だった。

次にお茶を用意される。

が、その侍女の手がカタカタと震えていて、何とも危なっかしい…

これは代われと言った方が良いのだろうか?

それともこれも経験と言って、最後までやらせた方が良いのだろうか。


「きゃっ!?」


悩んでいるうちに侍女が机までカップを運んできて、震えの方でお茶をこぼすとかではなく、何もないところで躓いて転んだ。

ガシャンとカップが落ちて地面で割れる。

侍女がその上に倒れそうになり――


「………大丈夫ですか――」

「あ、ありが――」

「ソフィア様、ローズ様」


侍女の腕を掴んで助けたのはオーフェスで。

オーフェスが声をかけ、オーフェスを見た侍女が真っ赤になってお礼を言おうとし…

グイッと侍女はそのまま後ろに腕を引かれ、後方へまるで物を放つようにして手を離した。

必然的に侍女は尻餅をつき、オーフェスは素知らぬ顔で私とローズの身を案じた。

………侍女に少しも視線を向けなかった。

侍女が哀れね。

さっきの瞬間オーフェスに瞬時に恋に落ちて、瞬間的にフラれた感じか。

心の中で合掌する。

オーフェスは公言している通りに、女には無関心。

さっきの大丈夫かも私とローズに向けられたもの。

徹底してるなぁ…


「ええ。大丈夫よ。ありがとうオーフェス」

「わたくしも大丈夫ですわ」


2人して失態侍女の存在を無視する。

気にしてあげたいんだけどね。

今私は王女としてここにいるから、手を差し伸べてあげられないんですよ。

貴族の家の使用人なら、主人次第で即切られてただろうね。

練習だから今回はスルーしますよ。

今回は、ね。

まず今、彼女がしなければならないことは、オーフェスにお礼を言うことではなく、私達に謝罪すること。

けれど彼女は尻餅をついたまま、呆然とオーフェスを見上げているだけだ。

周りの侍女達も固まっている。

割れたカップを片付けようとしないのかしら。

ソフィー達専属侍女には、よっぽどどうしようもない場合を除いては、手を出すなと言っているから動かないんだけれど。

チラリと見れば3人ともが怒りで顔が引きつっている。

必死ですまし顔を繕おうとしているけれど。

これはソフィーが指示しなきゃ無理だ。


「………ソフィー」

「申し訳ございません姫様。教育がなっておりませんで」


私がソフィーに声をかけた瞬間、ソフィーが頭を下げ、フィーアが即座にカップを片付けに入り、アマリリスがお茶を煎れ直し持ってくる。

なんて素晴らしい連携。


「失礼致します」


私のドレスにお茶がかかってしまっていたのか、フィーアが素早くシミ抜きする。


「シミは酷くない? 着替えて来た方がいいかしら?」

「大丈夫です。すぐに落ちましたので。失礼致しました」


フィーアが柔らかく微笑み返してくれる。


「ありがと」

「ソフィアのドレスにお茶をかけておいて謝罪もない侍女なんて、役に立ちますの? これではお茶会は夢のまた夢ですわね」


ローズが困った風に言うと、侍女達がハッとして、でもどうしていいか分からずにオロオロするだけ。


「それの練習なんですがね」


苦笑しながらお茶に口を付ける。


「ギュンター公爵家の者、寄越しましょうか?」

「ローズは縁を切ってるでしょう?」

「あ、そうでしたわね」

「それでしたら、ガルシア公爵家などの者達を借りる方がいいと思いますが」

「そうですわね。ランドルフ国貴族の使用人の方が、よく働くでしょうね」


………この周りにいるのは全員貴族令嬢なんですけれどもね。

行儀見習いと本家侍女とは違う、と言わざるをえないかな…

気構えからして違うから…


「これはルイス様にご相談すべき案件ですわね」


ローズの言葉に段々侍女達の身体が震えてきてますよ…


「まぁ、もう少し時間はありますから、まだ様子を見てあげて下さいな」

「ソフィアは甘いですわ…」

「甘やかしてはおりませんわ。本当に少しの期間しか時間はありませんもの」


長期休みまであと少し。

それまでに使い物にならなければ、ランドルフ公爵家に使用人の貸し出し許可を貰わなければならないから。

ルイスだけではなく、ラファエルにも報告しなきゃだし。

2人は容赦ないから告げた時点で、準備を始めるだろう。

でもここにいる侍女は、基本的な事を教わっていない可能性の方が高い。

それなのに最初から使えないと、切ってしまうのはどうなのか。

掃除などは丁寧にしているのだ。

給仕も繰り返しさせたら、出来るようになるだろうと思っているんだけれどね。

ソフィーの教育でどこまで伸ばせられるか。

取りあえずそんな感じでローズとのお茶会は最初から波瀾万丈でした。


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