第436話 思ってもみませんでした
カリカリとペンで書く音がする。
現在教室で自習中。
「あ、ここはね――」
ラファエルの手が伸びてくる。
現在ラファエルに勉強を見てもらっている。
「そうなんですね……でしたら、こうすれば――」
「そうそう。やっぱりソフィアは理解が早いね」
「詳しい説明を受ければ、ですよ。先生のお話は簡潔ですので、時間がかかってしまいます…」
ランドルフ国民向けに簡略化されている説明は、1からの私には理解し辛い。
もう少し詳しく教えて欲しいと思うけれども、学園が休園になっていた時期があったから、駆け足なのも分かるから何も言えないけれど。
「そうだね。授業の合間合間に私が教えてあげるから、分からないことがあったら聞いて」
「ありがとうございます」
ラファエルが教えてくれると、すんなり頭の中に入ってくるんだよね。
教え方も上手いんだけれど、ラファエルの声も好きだから、それで覚えやすいのかもしれない。
………恥ずかしいから絶対に言わないけれど。
「ですが、ラファエル様のお勉強の時間を削ってしまいます…」
「大丈夫だよ」
「お仕事の時間も…休憩時間にもなさっておられるでしょう…?」
「最近は臣下も増えているから、仕事もそれ程ないよ」
あまりラファエルの仕事の時間を削るのは、申し訳ないんだけれど…
「ソフィアは私の言葉を素直に受け入れたらいいんだよ」
「………そう、ですか…?」
「うん。大丈夫って私が言ったら大丈夫だよ。無理してないし、無理だったら無理だって言ってるでしょ?」
首を傾げながら言われる。
………言ってたっけ?
無理して仕事やりまくってたと思うけれども?
「………そうですわね…」
教室内で否定できない…
「ソフィア、今日は時間取れるんだ。放課後、出かけない?」
「え?」
首を傾げると、苦笑される。
………ぁ、もしかしてデートかな!?
「ご一緒してよろしいのですか?」
「誘っているんだからいいんだよ」
「嬉しいです。ありがとうございます」
ラファエルとのデート久しぶりだ!
裏なく微笑むと、ラファエルも嬉しそうに笑う。
「では、私達もお供しますね」
………あれ…
いつの間にか影’sが近くにいるんですけれども?
自習時間といえども授業中ですが?
ってか護衛付きデートなんて知られたらマズいでしょ!
「お気持ちは有り難いですが、ご友人の貴方方に、そのようなことまでさせられませんわ」
「そうだね。カイヨウ国王女を拘束する時に、友人なのに手助けしてくれたんだもんね。それ以上はさせられないね」
ラファエルも便乗してくれた。
「………出過ぎた真似をお許し下さい」
影’sが解散する。
ついてくるなら、こっそりとやってくれ。
影なんだから。
「………いいですわね」
突然後ろから声が聞こえ、振り返るとローズが試験勉強している。
「ローズ?」
「………わたくしは婚約者とデートさえ出来ませんのに」
ローズの言葉に思わずラファエルと顔を見合わせる。
話している間も、ローズの顔は上がらず、ペンは動いている。
「………ラファエル、ルイスに休暇は?」
「あるに決まってるでしょ。でもルイスがデートに誘うとは…」
「………思えないわね」
「思えないね」
コソコソとラファエルと話す。
恋愛ベタなヒューバートとソフィーの仲、そして後の2組の仲は気にしていたけれど、ローズの事は頭になかった。
ローズのことだから上手くいっていると、心配などしていなかったのに…
「ルイスはラファエルの管轄でしょ」
「管轄って……まぁ、気にしてはみるけど」
「よろしく」
「うん…」
デート出来ると上がったテンションが、萎んでいった。




