第435話 強制は止めて下さい
「ソフィア、大暴れしたって?」
教室で次の授業の用意をしていると、教室に帰ってきたラファエルに言われた。
………何のこと?
首を傾げるとラファエルが席に座って、改めて私を見る。
身体ごとこちらに向けて。
「カイヨウ国王女に対して」
「………ぁぁ」
あのことか…
………って!!
「大暴れ、って何ですの…? わたくしは、カイヨウ国王女にお言葉を返しただけですけれど…」
教室の生徒の目が好意的なのはそのせいだろう。
私は、当たり前の説教――って言えばいいのかな…? をしただけで…
「なんか嬉しいことを言ってくれてたみたいだね」
「え……」
「もう1度言ってくれない?」
「お、お断り致します!!」
カァッと体温が上がっていく。
教室の雰囲気が、好意的な空気からほんわかな空気になってる!?
いやぁ!?
「どうして?」
「ど、どうしてとおっしゃいましてもっ!!」
い、言えるわけがない!
ムカついたと言っても、公衆の面前でラファエルが私のモノ、的なことを声高々に言ってしまったのだ。
お、思い出したら、は、恥ずかしすぎる!!
私はなんてことを!!
「た、民のことを考えない王族は、民に認められない、と申し上げただけですっ」
「………」
あ、あの……ラファエルさん……?
ニッコリ笑って無言で見ないで欲しいんですけれどもっ!
無言の圧力怖いです!!
「ら、ラファエル様…」
「ん?」
良い笑顔で首を傾げられる。
こ、これ、言うまでダメなやつ…!!
うぅ……
「ら、『ラファエル様の婚約者はこのわたくしです』とか『わたくし以外の女性がラファエル様に近づくことは一切許しません』など、でしょうか…」
心の中で涙した。
ラファエルの追及をかわせる技量など、私にはないです…!
「他にもあるでしょう?」
「え……ほ、他ですか…?」
ラファエルが喜びそうな言葉って、それぐらいだと思うんだけど…
考えても分からず周りを見ると、みんな私が言った言葉を思い出そうとしているのか、思案顔だった。
………って、このクラスの生徒全員いたの!?
「が、影一、影五…分かる?」
「………そうですね…」
「………あれですかね…」
影五が私に耳打ちしてくる。
それを見てラファエルが眉をひそめたけれど…
「うぅ……わ…『わたくしの婚約者であるラファエル様を侮辱しないでいただきたい』…?」
「嬉しいなぁ。ソフィアが私を大切にしてくれてるのがよく分かるよ」
嬉しそうに頬杖ついて、とろけそうな笑みを向けないで下さい。
私が熱で溶けます。
今すぐに消え去りたい!!
穴の中に入って一生閉じこもっていたい!!
「ソフィアは俺には言ってくれるけれど、なかなか公言してはくれないからね。これからは言ってくれるのかな?」
「ひ、人前でそのようなこと…!!」
人の前で惚気て欲しいなど、その要求には応じられません!!
痛い人を見るような目で見られるじゃないの!!
私は真っ赤な顔のまま首を横に振る。
2人きりならいいけれども――い、いや、それもダメかもしれない…!!
私が羞恥心でどうにかなっちゃう!!
予告とか強制されて実行するものじゃないから!!
「………そう」
あ、あの……何故そんな残念そうな顔をするの…
居心地が悪くて、私は視線を彷徨わせて助けを求めるも、全員が視線を合わせないという。
私は今日1日、学園での居場所がある意味なかったのだった…




