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第434話 いい加減にして




「ソフィア様」


学園内の人気のないところを歩いていた。

もちろん、影’sと共に。

ゆっくりと振り返ると、そこには見たくもない顔があった。


「………何か御用でしょうか。カイヨウ国王女、ユーリア様」


もう接触してこないと思ってたんだけどな。

静かに強制送還まで過ごせると問題視してなかったのに。

それに、あれで懲りたと思っていたのだ。

ラファエルに手酷くフラれたのだから。

公衆の面前で。


「………お願いがございます」

「………何でしょう?」


嫌な予感しかしない…


「ラファエル様とデートさせて下さい!」

「却下します」


私は即答した。

予想以上にくだらなかった。

何処の世界に自分の婚約者と逢い引きさせる馬鹿がいるの。

ラファエルに情報を探るとか、行動を観察したいとか、頼まれたのならともかく。

彼女にそんな許可を出す必要などない。


「何故ですか!?」

「当然でしょう。貴女こそ、共通規約以前に常識を学びなさい。ここは貴女の国ではありませんよ」


彼女が騒ぐからまた野次馬が集まってきている。

こんな醜態をさらすのを、何とも思っていない彼女は、王女たる資格などあるとは思えない。


「貴女の国では、婚約者がいる殿方を誘惑するのが当たり前でも、他国はそうではありません」

「わ、わたくしは誘惑など…!!」

「誘惑以外の何があるというのですか! 婚約者がいる方に必要最低限以上の会話はしてはならないという常識を備えていない貴女に、わたくしの大切なラファエル様に近づいて欲しくありません!」


私の声が通路に響き、野次馬達は、彼女の視界に入らない位置で頷いている。


「第一、貴女はラファエル様に近づくなと言われているはずです。なのによくわたくしにラファエル様との逢い引きを許可しろなどと、侮辱する言葉を仰れますね!」

「ぶ、侮辱した覚えは…」

「それを理解されておられない時点で、貴女は非常識だと告げているのです!」


今回は私の言葉が聞こえている彼女。

ちょっとは成長したと言いたい――はずもなく、成長してない!

まだラファエルに近づこうと思えるのが、信じられない。

何処までラファエルを、私を、侮辱すれば気が済むのだろう。


「わ、わたくしはラファエル様の婚約者なのに……!」


涙声になる彼女に、冷ややかな目を向けてしまう。

それはゲームの中の彼女ユーリアであり、現在いま彼女ユーリアではない。

それに、自分が被害者とでも言いたいのか。

こんな人前で涙を見せるなど。

私が彼女を虐めているとでも印象付ける気なのかしら。

ここでは通用すると思えないけれど。

この学園の生徒は、あの1件以来、ラファエルと私の関係性を嫌でも理解したはずだ。

ランドルフ国には私が必要である、と。

ラファエルを繋ぎ止めるためにも、私がいなくなってはいけない、と。

それでいい。

どんな風に思われようとも、ラファエルから離されないのなら、理由など何でもいいのだ。


「………貴女は妄想癖でもおありなのですか?」

「………なっ……」

「ラファエル様の婚約者は、このわたくしです!」


今度は意図的に、通路に私の声を響かせた。

ハッキリと、ラファエルは私のモノだと。

そして、私もラファエルのモノなのだと。

野次馬の中にいた――また私にまとわりつこうとしているのだろうカイ王子の耳にも、しっかりと入るように。

何度言えば理解するの。


「わたくし以外の女性が、ラファエル様に近づくことは一切許しません! 交渉ならともかく、私的な目的で人の婚約者に近づくなど、わたくしが許可すると本気で思っていらっしゃるなら、わたくしを侮辱しています」

「………」


………ごめん、ラファエル。

秘密裏に動いていたのに、もうこれ以上……ラファエルに近づいて欲しくないの…

私的理由でごめんなさい…


「申し訳ございませんが、これ以上勝手はさせません。先日ラファエル様がされておりますが、サンチェス国からも、正式にカイヨウ国王へ抗議させて頂きます!!」

「そ、そんな!? 言わないで! お父様に、言わないで!!」


手遅れだよ。

すでにラファエルがカイヨウ国に抗議書送ってるんだから。

私に手を伸ばし、縋りつこうとした彼女は、影二シスト影四モンドに拘束された。


「ソフィア様に触れるな」

「サンチェス国王女に無礼を働いたお前はもう、1国の王女としてではなく、罪人として拘束させてもらう」

「無礼者!! わたくしはカイヨウ国の王女です!! 1生徒がわたくしを拘束するなど!!」


影’sの存在はバレてないようだ。

普通の私の取り巻きとでも思ってくれていて、好都合だけれど。


「関係ありません。ソフィア様への侮辱、暴行未遂で連行します」

「わたくしにこんな事して! カイヨウ国の王族が…民が黙っていませんわ!」

「………さて、貴女に家族はともかく、国民の支持があるとは思えませんが」

「なんですって…」


睨みつけるようにして見られるけれど、私は冷ややかに見つめ返す。


「………周りをご覧になって、まだそう言えるのならば、どうぞ」


私の言葉にユーリア・カイヨウが辺りを見渡した。

野次馬で既に埋まっている通路。

生徒達は冷たい視線を彼女に向けていた。


「………ぇ……」

「王族故に求められる行動、言動があるのですよ。貴女の行為は王族では――いえ、一般的にもありえない行為。こんな所で…他国で騒ぎを起こす王女が、自国できちんとした行動、言動をしているとは思えません。そんな王女が仮にラファエル様の婚約者になれたとして………どうやって今の国民の信頼を得るというのです? 王族は、民に慕われなければすぐにでも地位を下ろされるのですよ。そんな事も分からない人に、このランドルフ国を預けられるはずもありません!」


生徒達の視線が彼女を通り越して私を見てくる。


「この国は――ここの民は将来ラファエル様が治める国のたからです! この国のたからを侮辱しないでいただきたい! わたくしの婚約者であるラファエル様を侮辱しないでいただきたい!!」


私の言葉は生徒達に伝わったようだ。

生徒達は力強い目で、カイヨウ国王女を睨みつけた。

その視線に怯えて何も言えなくなり、彼女は私の影達に大人しく連行されて行った。

息を吐きたいが、生徒達の前では無理だ。


「皆さん、お騒がせして申し訳ございませんでしたわ。これ以上、カイヨウ国王女の好き勝手にはさせません。お約束致します」


私が言うと、生徒達は礼をして解散していく。

その表情に嫌悪感はなく、私は集まった生徒達の心に認められたようだと、思ったのだった。

ただ、サンチェス国王女の私が、色々やらかしちゃったから、共通規約ギリギリかもしれない…

私自身への攻撃ことばだったから、大丈夫だとは思うけど。

…さて、お父様に報告しなきゃな…

誰に頼もうかな…

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