表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/740

第430話 それは仕方ない




お茶のお代わりを貰って口を付けたとき、ふと私は顔を上げた。


「そういえば影三アクア

『はい』

「かなりお兄様と連絡つくのが早かったけど、どうして?」

『走っていたら攫われました』

「「………は?」」


静かに聞いていたラファエルも、思わず私と共に声を上げた。

他の騎士も侍女もポカンとしている。


『鳥に首根っこ掴まれたと思ったら、一瞬の間にサンチェス国王宮の上でした』

「………ぁぁ、そう……」


十中八九、火精霊ホムラかその属性の精霊だろう。

火精霊ホムラ達も相当怒ってるなぁ…


「で、帰りも?」

『はい』


ラファエルの言葉にも影三アクアは答える。

そりゃ1晩で戻ってこれるわね。

今後の連絡も火精霊ホムラ達の力を借りれれば、早い連絡が可能になるね。

電話やネットがない世界で、これは助かる。


「………ぁ、ラファエル」

「ん?」

「カイヨウ国の王女はどうしてるの?」

「なんで?」


興味なさげに返される。

いや、だって…


「私、ずっとカイ王子に付きまとわれて逃げ回っていたから、カイヨウ国の王女にまで気が回らなかったし。言い寄られてたり、しない?」

「………へぇ」


今度はニヤニヤしながら、頬杖ついてラファエルに見られる。


「………気になる?」


………ラファエルの顔を見ていたら、言いたくなくなる…

なんかムカッとしたし、なにより恥ずかしい…


「ソフィア~?」

「~~~~~ぁぁもう! はい! 気になってます!」


ヤケクソで火照った顔で叫べば、ラファエルが嬉しそうに笑う。


「ソフィアの嫉妬、嬉しいなぁ」

「ぅぅ……」


何故かラファエルが隣に座り直してくるよぉ…

腰抱かれるし…

恥ずかしいからジッと見ないでぇ!!


「心配いらないよ。何度か近づいてこようとしたけど、その都度用事がある呈を装って、すぐその場から離れてたし」

「そ、そっか……」

「ソフィアにあの王子の行動と思考を知るために、囮になっててもらったからね。ソフィアがいないことで俺もあの王女の行動を観察してたし」


………知らない間に囮にされてたのか…

別にいいけど…

学園で別行動多いなとは思ってたんだけどね。

教師に呼ばれた、とか、少し用事があるから、とか言ってたから疑ってなかったよ。

ラファエルの役に立ったのなら良かったと思う。


「もうそろそろあの王女も潮時だろうね」

「え…?」


サラリと言われ、私は理解するのに少し時間がかかった。


「あの王女からも得られるものがないと、ハッキリ分かったからね。もしかしたら養殖とかのヒントが得られるかもと思ったけど」


ぁぁ、そういえば…

カイヨウ国は唯一海に面した国で、魚類はカイヨウ国でしか手に入らない。

それをランドルフ国で、魚の養殖場を作ろうとしてるから、養殖に関する何かを得たかったんだ。


「……それは難しいと思うけど…」


多分カイヨウ国では養殖はしてないだろうし、あの王女は国に関することは殆ど知らないだろうね。

あの時、私とラファエルの言葉について来れなかったから、それ関係には一切関わってないと推測できる。


「うん。だからこのままこの国にいさせるメリットってないんだよ」

「そうだね」


彼女はラファエルの――ランドルフ国の正式な来国者ではない。

あくまで個人的に彼女がこの国に来ただけ。

この国で問題を起こしている彼女を、このままこの国に置いておく意味はなくなったということ。

得られるものは何もないのだから。


「………ラファエルが、というかルイスがこの国に、他国王族の来国を無条件に許可しているのは、情報を得たいがため、なんだね?」

「そうだね」


………何処か他人事だねラファエル…

ラファエルにとっては、どっちでもいいって事なのかな?

それは王太子としてどうなんだろう…

首を傾げると、ラファエルが笑う。


「俺にとってはソフィアと国民優先だからね。他国のことよりこの国の繁栄が目先の目標。他国に関しては後でいいよ。落ち着いてから手を伸ばしていけばいい。でも、偶然手に入るだろう情報は取りこぼすつもりはないけど」

「………ぁぁ、なるほど…」

「こっちに他国王族が来るのは別に制限しないよ。こちらが何もしなくても、情報を持った者が来るのは願ったりかなったりだからね。相手の国に対抗する手段を講じれるから」


実際には成果は得られなかったけれどね。

この世界の王族大丈夫か? とは思うけど。


「今回もまた失敗だけどね」

「ラファエルとルイスの思惑通りにはいってないね」

「他国がうちを気にしてるのは当然だからね。急に立て直している手段を探りに、まだまだ送り込んでくると思うよ。――非公式を装って」


………うん、ラファエルが良い笑顔だ。

意地の悪いこと考えているんだろうなぁ。

次に来る人はまともな人が良いなぁ。

ちゃんとした対応できる人が来るのを期待する。


「ソフィアにしたことをカイヨウ国王に伝える。強制送還をする、とね」

「………分かった」


ラファエルの決めたことなら、それでいい。

私はもう1度お茶に口を付けた。

………ただ、あの王女は転生者だ。

強制送還になったら、何かするかもしれない。

気をつけないと…

私はあの王女がしそうなことを考えながら、そっと目を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ