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第43話 突然です




「………帰る?」


突然ラファエルに言われた言葉を、返した。


「うん。甘味店俺がいなくても回るようになったから、そろそろランドルフ国に帰って、向こうの対策を考えないとと思ってね」

「ランドルフ国の対策……」

「利益は取れるようになった。だから3分の1の利益を使ってランドルフ国に必要な物を揃えようと思って」

「必要な物?」

「食はサンチェス国王のおかげで民に渡る。借金は3分の1使って返し、残りの分は甘味店の経費にすればいいし」


ラファエルの口からポンポン出てくるので、私は唖然としていた。


「借金を先に全部返すんじゃないんだ……」

「それはダメだよ。確かに今の利益を全部つぎ込めば、借金をすぐにでも返せるだろうけど。でも同時進行でランドルフ国の事もしていかないと、民の救いにはならない。サンチェス国への借金は確かに重要だけど、だからって民を見捨てて良いわけないだろ?」

「そうだけど…」


失礼なこととは分かってる。

分かってるけど………

ラファエルそこまで考えてたんだ!


「それにサンチェス国王は目処をつけられれば、ソフィアと婚約者でいて良いと言った。ソフィアが18になれば結婚できる。ソフィアと結婚するまでに、ランドルフ国を少しでも立て直したい。だから、同時進行でやる。幸いここに来てから一月余りで金が稼げてる。今はまだ上昇しているからこれからも手取りは増える見込みで、ランドルフ国でも出来ることを探す。テイラー国の人も幸い協力的だ。何か新しいことが出来る気がする」

「ラファエル……」


改めて、凄いと思った。

ラファエルは普段私への……その…ほ、褒め言葉? しか……私に言ってこなかったから…。

こうやって何をするのか話してくれて、私は嬉しかった。


「………ありがとうラファエル」

「え? 何が?」

「私の店も、ラファエルの店の手伝いをさせてくれて」

「………ソフィアの、店?」


キョトンとして首を傾げるラファエル。

………可愛い……

じゃなくて!!

そ、それは調べてないんだ……


「店長から聞いたよ。ある御方からテイラー国の人間を来させてくれて、店で雇わせてくれ、鞄を発注してくれて、さらに循環するように買い取りしてるという噂を流してくれて」


私が言うと、ポカンと見られる。

口が開いてるから、間抜けに見えるよ。

他ではしないようにね……


「ソフィアの立案した店って!?」

「あのリメイク店だよ。オーナーは私」


自分を指さすと、ガックリとラファエルはカーペットに両手と両膝をついた。

………ぁ~……ショックだったのね…

ごめん…


「………最初からソフィアに言えば良かった……」

「内緒にしたくて彼方此方探ってた人の台詞かしら……私に内緒にするからだし」

「最初からソフィアが言ってくれてれば!!」

「だってテイラー国に提案してもらえないかと思って、ラファエルの今抱えてる仕事が一段落してから話そうと思ってたんだもん。ラファエルが一人で仕事を抱え込みすぎてるから」

「ぐ……」

「ラファエルが私に内緒で色々動いてるし、目の下にクマ作ってるし。これ以上抱え込まないようにしたんじゃない」

「うぅ…」


ラファエルが葛藤している。

これはあれだな…

私に惚れ直してもらうと言っていたように、見栄を張りたかったか。

最初から私に相談して協力してもらった方が良かったか。

二つの意見で揺らいでる。


「ま、それは置いておいて。私にも結構利益入ってきてるからそれを借金に当てて――」

「ダメ」


即却下!?


「な、なんで!? 元々ラファエルの案で入った利益でしょ!?」

「それはそれ。ソフィアの店の利益は、ランドルフ国関係に使わないで。借金はランドルフ国の王族がしでかした結果だ。何も関係ないソフィアの店の利益は使えない。自分の店やソフィア自身に使うべき金だよ」

「私がラファエルの力になりたいから使うのよ!?」

「ありがたいけど、ダメ。ランドルフ国や、交渉でテイラー国から入った金なら使う。でもソフィアの店のは使わない。約束して」

「………でも……」

「ソフィアの店はソフィアの物。俺の物じゃない。聞き分けて」


真剣な顔で言われ、私は頷くしかなかった。

私の力じゃないのに……


「でも、アイデアはもらう」

「………ぇ?」

「ソフィアのリメイク店。テイラー国への交渉に使えると思う。それ用の機械開発できたら良いかなって」

「そ、それで取れた利益はちゃんと使ってくれるの!?」

「うん。だって、ソフィアが一から作った店とか機械とかじゃないからね」

「……ぁ…」


そっか。

既存店から取れた私の利益は使えないけど、私のアイデアでラファエルが一から作った店や機械から出た利益は使ってもらえる。

それが分かっただけで充分だ。


「じゃ、私もちゃんとこれからラファエルの仕事手伝わせてくれる?」


ニッコリ笑って聞けば、ラファエは苦笑する。


「分かったよ。でも、アイデア出しだけだよ? 物作ったりはソフィアが怪我したらヤダだから手伝わせないよ?」

「はぁい…」


不器用なのは分かってるから自粛します……。


「甘味店もランドルフ国で出せれば良いね」


何気なく言っただけだった。

いつかランドルフ国が立て直せれば、街に活気が戻れば、サンチェス国を本店としてランドルフ国に支店を出せれば、わざわざランドルフ国の人間も食べたくてサンチェス国に行く、なんて必要はないし。


「それだ!!」

「………へ!?」

「今の国民には疲れが溜まっている! 少しでも疲れを取るには甘味が一番だ!」


そう言って、机に紙を置いて凄い勢いで何かを書き始めるラファエル。

………どうでもいいけどラファエル?

今のランドルフ国に甘味店作っても売れないよ……

国民にお金が無いんだから……

国民にお金が渡るような政策を作る方が先だよ…


必死に何かを書いているラファエルに言える雰囲気ではなく、苦笑しながら眺めていた。


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