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第428話 必要です




暫く経って影二シストが帰ってきた。

ニッコリ笑って私が聞く価値がない話だったと短い報告を受けた。

内容は言ってくれなかった。

本当に私に聞かせる価値のない話だったようで、影二シストは何度聞いても何も言ってくれない。

気になるんだけどなぁ……

影だけに1度口を噤むと決めたら、絶対言ってくれないだろうなぁ…

主に何でも――小さな事でも報告するのは当然だけど、どうでもいいことまで報告するのは三流の影だし…

影’sはさすがお兄様の影だっただけあって、主に聞かす価値のない事は伝えないんだろう。

頭の中で情報を整理し、必要とそうでない情報を瞬時に判断する。

それをするためには主より優秀な頭脳を持っていなければならない。

お兄様の頭脳より優秀って事は、私より数倍も賢いということ。

………そんな一流影はいらないんだけど…

そういう優秀な影はそれこそお兄様とかラファエルに仕えるべきだと思うんだけどなぁ…

それに、影’sは分かってない。


「ライト」

『メンセー国王子の見返りとして提示されたものは、メンセー国産の布を贈る、というものでした』

「ライト!」


私が学園の天井裏に潜んでいるだろうライトに声をかけると、すぐに声が返ってきた。

それを影二シストが咎めるように名を呼んだ。


『我が主は、どんな些細な情報もお耳に入れておかないと、どんなことをしでかすか分かりませんから』

「一言余計よ!」

『それに、レオポルド様やラファエル様はどうか知りませんが、我が主は全ての情報をお望みです。1国を背負う王子達には、確かに情報は厳選された、必要最低限でよろしいかと思いますが、姫は違います。全ての情報をお伝えし、ご自分で判断する。そうしないとどんどん姫はば――ご自分で判断できなくなりますから』


………今、バカって言いそうになってなかったライト…!?


「なるほど……」

「………って、納得してるんじゃないわよ!」


影二シストだけでなく、他の4人も深く頷くんじゃない!!


「………とにかく……私、布貰っても意味ないよね。ランドルフ国にもサンチェス国にも利益ないじゃない」

「ですから報告の必要はないと――」

「そういう問題じゃないから」


影二シストの言葉は手の平で遮る。

それを知っているのと知らないのでは、カイ王子に対抗できないから。


「あ! ソフィアちゃんいた!」


………また出たぁ…


「君の友人では話にならないんだ!」


………友人?

影二シストの事かな。


「ソフィアちゃんに似合う色の布を何枚か贈るよ! 君は女の子だし、オシャレな布は当然好きでしょ? どんな物でも仕立てられるように長めに贈るからさ」

「いりませんわ」


ニッコリ笑って言った。

ライトに聞いていたおかげで、戸惑うことないわぁ。

さすが私のライト


「な、なんで? 女の子達は食いついてくるのに!」

「わたくしは、王女ですので」

「は…?」


カイ王子はポカンと私を見る。


「カイ王子が相手にしてきたのは、1対1の男女の関係で、ですよね?」

「そうだよ」

「ですが今、カイ王子がわたくしと交渉おはなししているのは、国と国との話ですよね」

「い、いや、これは……」

「ああ。失礼しました。ランドルフ国――いえ、サンチェス国とカイ王子とのお話ですわね」

「違うよ! 俺とソフィアちゃんとの話だよ!」

「は?」


………何言ってるんだろうこの人…


「………カイ王子の要求は、メンセー国の布製品の売上向上案ですよね?」

「そうだよ?」

「それをわたくしに仰るということは、メンセー国がサンチェス国へご相談しに来たことになるのですよ。お分かりですか?」

「え……」


今理解した、という顔をしないでよ。

昨日ラファエルとも話したでしょ…


「ですから、わたくし個人に布を贈られても、受け取るどころか提案することはありません。ランドルフ国かサンチェス国へ、“何年か分の国民分の布”を贈られるのならともかく」


私の言葉にカイ王子が真っ青になっていく。

そんな事は出来ないでしょうね。


「で、でもレオポルド殿がソフィアちゃんに相談すればって!」

「お兄様は一切そのような言葉を発してはいないとお返事を頂いております。思い込みで仰られても困ります。どうしてもと言うのならば、お兄様にご署名頂いた正式な協力依頼書をお持ち下さいませ」


無理だろうけどね。

お兄様を動かし、お兄様が私を動かそうとするような見返りは用意できないだろう。

固まったカイ王子をそのままに、私は影’sと共にその場を後にした。


「………なるほど。ソフィア様が自分でご判断できなければ先程の対応がスムーズに出来ない。情報はどんなものでも必要なのですね」

「レオポルド様とは違うな」

「レオポルド様は正式な書類でやり取りするから」

「ソフィア様にはそういうのないから」


影’sが後ろで何か言ってるけど、気にしなかった。


「ライト、ありがと」

『いえ』


私はもうカイ王子が追ってこないよう、急いで教室へ戻った。


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