第427話 そこまでですか!?
スタスタと学園内を早足で、でも優雅に見えるように進んでいた。
「ねぇ」
「………」
話しかけられるけれど、私は無視した。
っていうかなんでついてくるの!?
「ねぇってば。ソフィアちゃん」
………ちゃん!?
思わず足を止めて振り返ってしまった。
「やっとこっち見てくれたね」
ニッコリ笑っているのは、私とラファエルが協力を断ったカイ王子だった。
私の周りは影’sがいるのだけれど、カイ王子に何も出来ない。
危害を加えられないように一定の距離が取れるよう、間に入ってくれているけれども。
「………恐れ入りますがカイ様。ラファエル様より、ソフィア様に近づかれませんようご忠告申し上げられていると思うのですが?」
「でもそのラファエル殿、今いないよね? 君達が黙っていればバレないし、ここでは皆平等だろう? 誰にも制限出来ることではないよね?」
………屁理屈は上手いね。
確かに、と頷きたくなるけれども。
「是非ソフィアちゃんとお友達になりたいな」
「わたくしにも、ご友人を選ぶ権利はあると思いますけれども?」
ニッコリ笑って言うと、カイ王子の笑顔が固まった。
「ラファエル様のおっしゃっていたことをご理解なされない方と、ご友人になるのはご遠慮致します」
私は一礼して踵を返した。
「あ、だからちょっと待ってよソフィアちゃん!」
「わたくし、そのように呼ばれることは、非情に不愉快です」
カイ王子を見もせずにそう言い放ち、私はその場を後にする。
影’sもそれに続いてくれる。
「話だけでも聞いて! 例の件に関係があるんだ!」
「………」
今一度足を止め、声もなく気付かれない程度に息を吐いた。
あれから1日だ。
それだけの時間で、彼が見返りを用意できたとは思えない。
「………影二、話を聞いてきてくださる? わたくしとラファエル様が聞く価値があるお話なら、ラファエル様に王宮にてお話が出来るよう取り計らいましょう」
「畏まりました」
「え? ちょ、ソフィアちゃん!?」
再度足を動かし、その場を後にする。
人気のない場所に足を進め、誰もいないのを確認して思いっきりため息をついた。
「ソフィア様」
「分かってる。………さっきの、どう思う?」
壁に近づき身体を預けて影’sを見る。
「間違いなく短慮な見返りを用意したと口にするつもりでしょう」
「何も用意してなかった人間が、一晩で考えられることなどたかが知れてます」
「だよね」
やっぱり直接聞くようにしなくてよかった。
「ソフィア様にご助力願うのであれば、それ相応の見返りとなりますから」
「事と次第によっては国の資産の半分以上――いえ、大半を失う覚悟でいなければ」
さすがに私はギョッとした。
「ちょっと。そんな高くないわよ」
「いいえ。ソフィア様の案は1国をここまで立て直し、なお今以上に経済を伸ばすことが確約されています」
「………確約されてるんだ……」
「はい。私達は全て見ていましたから」
断言されてしまうと、なんだか反論する気力もなくなる。
「指紋認証でランドルフ国の借金完済と数年間の同盟食物支払い不要になったのをお忘れですか?」
そ・う・で・し・た!
その場にガックリと崩れ落ちそうになった。
「ソフィア様、安易に他国へその頭脳を晒さぬようにお願い致します」
「あ、あんな事言われたら、ラファエルとかお兄様達以外に言えないわよ!」
私の出した案が1国の国庫どころか、国自体をなくしてしまうと聞かされたら、怖すぎる!!
く、口にチャックしておかなきゃ!!
自分に言い聞かせとこう!
ラファエルの許可がいる。
お父様の許可がいる。
お兄様の許可が――
「いいえ。ソフィア様は無意識に仰る場合が多いです」
「それが1番タチが悪いので、今まで以上にお気を付け下さい」
「丁寧にかつ、さり気なく貶すんじゃないわよ!」
従者が容赦ない!!
私の心をえぐるんじゃないわよ!
とは言えずに、私は影二が合流するまで、その場で影’sと話していたのだった。




