第423話 真に受けない方が良さそう
「さぁソフィアすぐ帰ろうさっさと帰ろう今すぐに」
………ラファエルが超必死だ。
授業が終わってすぐにラファエルに手を引かれ、学園を後にする。
まぁ、私もあの人に会うのが嫌だから、さっさと帰りたいけれども。
でも、王宮で話聞くって言ってたよね?
私もやっぱり会わなきゃダメだよね!?
私に協力を求めに来たって言ってたし…
ぁぁもぅ……
どうすればいいの…
「ソフィアは部屋で待機でいいよ」
馬車に乗り込み王宮へ戻っている途中で、そうラファエルに言われる。
「え……でも……」
「これ以上ソフィアに触れられたくないんだけど」
「はい。大人しく部屋にいます」
ラファエルの顔が怖いし、あの時の気持ち悪さも思い出し、すぐに私は言うことを聞くことにする。
「だよね」
すぐに嬉しそうな笑顔になるから、こっちも笑ってしまう。
「………で、彼の目的聞いた?」
「………あ……う、うん。メンセー国の生地が売れ悩んでいるみたい」
「………生地が?」
「実際に売れ行きの資料があれば、原因とか分かるとは思うけれど……」
私の言葉にラファエルが考え込む。
「お兄様とお友達らしいから、下手なことは出来ないし言えないから……」
「レオポルド殿の? ………可笑しいな……王太子だから、他国王子とは親しくしても、そういう意味での親しみは命取りだから、よっぽどのことじゃないと友人にはならないはずだよ」
「………ぁ……で、でも、ラファエルとは……」
「俺とソフィアの関係故、だよ」
そうでした……
ラファエルとはその“よっぽど”の理由になり得るんだ…
「メンセー国の生地自体は精霊の力で素材とかは劣化するとは考えにくいから、それが影響するとは思えない」
「そうね……じゃあ、買い手の問題かな……」
「それは気になるから、その辺俺が聞いておくよ。………あっちの出方次第だけど」
「ぁ、お願い」
私はラファエルに託し、後の報告を待つことにする。
王宮について、ラファエルにエスコートされるまま、自分の部屋へと向かった。
部屋についたらラファエルと別れ、私が着替えるとソフィーに持っていた書類を渡される。
「何?」
「侍女の解雇一覧と、精霊侍女増加人数です」
「………ぁぁ、ありがとう」
私は読みながらソファーに座る。
段々増えていく精霊に、私は思わずため息をつく。
これでは王宮が段々精霊の大盤振る舞いになってしまう…
「………早々にラファエルに改政してもらって、平民も専属侍女にはなれなくても、下働き程度の侍女に――見習いなら入れるようにして欲しいわ……」
「………流石にこれでは姫様がやりたいことは出来ないかと…」
「………ダメかぁ……」
グッタリと思わず机に突っ伏してしまう。
「姫様はしたないです」
「………見逃して……」
出来るだけ人の手でしなければ、精霊に頼りっきりの国になってしまう…
それは本意ではない。
今、私達の都合に振り回してしまっている形だ。
嫌がらず、むしろ積極的にやってくれているからありがたいけれども…
申し訳なく思っているのが、精霊達にとっては不満らしいけれども…
やっぱり気になるから…
蔑ろにしているわけではないんだけどね。
「姫様」
「ん。今日の学園では、メンセー国王子に絡まれたよ」
のそっと身体を起こし、ソフィーに、騎士に、報告する。
毒を口にしてから、学園での出来事は常に報告し、共有することと念押しされた。
毎日の出来事を共有すれば、何かあったときにすぐ対応できるからと。
「影’sの皆様は、知っていると思いますので聞いてみてはいかがでしょう?」
「………ぁ、そうだね。影’s」
………って何気にソフィーも影’sって言い方してるね。
スッと目の前に5人の影が降りてくる。
「カイ王子は、お兄様のご友人なの?」
「「「「「いいえ」」」」」
………綺麗に声を揃えて言ってくれるね…
「………じゃあ王子が、お兄様が私がアイデアを出してくれるって言っていた、っていうのも嘘かな…?」
「可能性は高いでしょうが、完全にない、とは言い切れません」
「そうなの?」
「レオポルド様が頻繁にやり取りする1人でしたから」
そうなんだ…
あながち嘘とは言い切れないんだ…
「………誰か、お兄様に聞いてきてくれる?」
「では私が行ってきます」
影三が少し手を上げ、すぐに姿を消した。
私はラファエルが報告に来てくれるまで、ゆったりとした時間を過ごした。
………今日もハードな学園時間だった…




