第422話 本当にどうでもいいですから
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メンセー国のカイ・メンセー王子から解放され、ラファエルの元へ戻れた。
その瞬間、ラファエルの殺気が消えた。
………私が言っちゃなんだけれど……単純すぎる…
「ソフィア、大丈夫!? 何もされてない!?」
「ナイフ取られただけですから」
「………へぇ……」
………あ…あれ……?
なんでラファエルの殺気が再び……
「………ソフィアのナイフって太ももに固定するタイプにしてたよね?」
「そうですけれど……」
そのせいでスカートの中に手を入れられた形にはなったけれど。
「………ソフィア」
「はい…?」
「俺がメンセー国で裁かれて投獄されることになっても待っててくれるよね?」
………え……
この人何言ってるの。
ラファエルが目の前からいなくなり、再び金属がぶつかり合う音が……
って、何やってるの!?
もしかしてラファエルはメンセー国王子を亡き者にしようと!?
「や、止めて下さいませラファエル様!!」
「ソフィアの身体に触れて、ただで済むと思ってたら大間違いだ。俺のソフィアに手を出した報いは受けてもらう!!」
そこでようやく私はラファエルが何に怒っているのかを、正確に理解してしまった。
いや、分かっていたのだけれど、認めたくなかった、が正しいかもしれない。
「わたくしはラファエル様をお待ちするより、ずっと一緒にいて下されば、他の者がわたくしに何をしようと、どうされようとも、どうでもいいのです!!」
ピタッとラファエルと王子が固まる。
「………ソフィア……それはさすがに自分に無頓着すぎる。自分の身体に俺以外が触れて、気持ち悪くなかったの?」
「勿論気持ち悪かったですが、ラファエル様が来て下さったので、どうでも良くなったのです」
ロードの時と同じだ。
ラファエルがいれば、さっきまでの不安も嫌悪感も全て無くなった。
殺気は別として…
ラファエルがいるだけで、私はこんなにも落ち着いている。
「ですから、ラファエル様がわたくしと共にいてくれさえいればいいのです」
「ソフィア…」
「………ラファエル様、1つ我が儘を言わせてもらっても、よろしいでしょうか…?」
「何?」
「わたくしを愛して下さっておいででしたら、その手を汚すのではなく、その手で抱きしめて下さいませんか…?」
顔が赤くなっている自覚はある。
でも、これ以上ラファエルに怒ったままでいて欲しくなかったし、本当の犯罪者にさせたくない。
私はラファエルに両手を伸ばして、首を少し傾げた。
ラファエルがここに来てから、1度もラファエルに触れられてないんだもの!
ちょっとは気にしてよ!
他の男に触れられた気持ち悪さを、ラファエルで消して欲しいと思う女心を察して!
恥ずかしいけれど、ラファエルの意識を私に向けるために思い切って言ったのだけれど…
………ラファエルが一向に動く気配がない…
あ、あのぉ……
ラファエルさん……放置プレイですか…?
恥ずかしくて死にそうなんですけど…
でも視線を外せない。
外したら最後、私はラファエルの顔を見れなくなってしまう。
「影一」
やっとラファエルが口を開いたと思えば、私の名前ではない。
内心ガッカリして、思わず俯きそうになった。
………泣きそう…
と思ってると急に温かいものに包まれた。
「………ぇ……」
「ソフィア」
耳元で名前を呼ばれる。
途端にぶわっと顔が更に熱くなっていく。
い、いやいやいやいや!
そんなサービス期待してませんよ!?
内心混乱するけれど、他の人もいるところで取り乱せない。
自分から抱きしめて欲しいと言った手前、どうにも出来ない。
ラファエルはしっかりと私を両腕で抱きしめてくれてる。
………ぁ、さっき影一を呼んだのは、剣を手渡すためだったんだ…
「………あのぉ……もしもし?」
突然声がし、ハッとしたけれど、ラファエルの腕の力は緩まなかった。
しっかりと抱きしめられていて、私は安心してるから離れようと思わない。
「俺のこと忘れてないですか?」
「ああ、すっかり。すみませんね。で? 何の御用ですか」
「うわ、冷たいですね」
「私のソフィアに手を出した人に、優しくする義理もないですね」
あ……2人の視線の間にバチバチと火花が見える気がする……
丁度その時チャイムが鳴った。
「………話は王宮で聞くことにしましょう」
「学園では聞いてくれないんです?」
「私達とカイ殿では、接点がありませんからね。Sクラスと――Bクラスですから」
………え…?
彼を思わず凝視する。
微笑んでいた彼の頬が引きつった。
カイ王子は勉強があまり出来ないらしい……
人のことは言えないけれど。
「では、王宮でお待ちしております。ソフィア、行こう。遅れるから」
「あ、はい……」
私はラファエルに連れられ、部屋から出たのだった。
またトラブルに巻き込まれそうだから、王宮へと帰りたくないな…と思ってしまったのだった。




