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第421話 どっちが怖いか分からない




メンセー国王子に唇を奪われるということは回避できた。

手でガードすることで。


「………ああ、その抵抗もあるんだ。今まで俺の唇拒否する女はいなかったから」


………こいつ、最低だ……

自分の顔がいいことを知っていて、それを武器に気に入った女には手を出していたのだろう。

私をそこらの尻軽女と一緒にしないで!!

っていうか、そんな事出来るようなはしたない女だと思われたら、迷惑なんですけど!?


「ますます気に入った」


むしろ嫌ってくれ!!


「………でもこれさ…」

「ぎゃっ!?」


ぞわっとした。

手の平をな、ななな舐め!?

バッと手を離す。


「両手拘束されたら出来ないよね?」


両手首を頭上で拘束された。

男の右手のみで。

改めて体格が違う男だと認識させられる。


「これで口づけできちゃうんだけど」

「っ……」

「それにしても……もっとこう、色気のある悲鳴でないの?」

「大きなお世話ですけれども!?」


咄嗟に出る悲鳴が「きゃぁ!」とかなら、もう少し可愛い女の子になると思いますけれども!!

これが私なんです!!


「やっぱり君は他の令嬢とは違うね。ますます欲しいな」

「お断りします!! それよりそろそろ何が目的か教えて下さい!」

「ああ、そうだったね」


私は男から解放され、バッと男から離れた。

よ、良かった!

腰は抜けてない!!


「傷つくなぁ」

「早く本題に入ってくださいませ!」


私は極めて冷静に対応しようとして、王女らしく立ったけれども……

身体の震えは止められない。

情けないっ。


「俺の国、メンセー国は今ちょっと困ったことになっててね」

「………困ったこと、ですか……?」

「そう。国の特産品である布製品の売上が伸び悩んでいてね」


………それが、ラファエルに何の関係があるんだろう…

この人、ラファエルにお願いがあるって言ってたよね…?


「レオポルドに相談したら、『妹のソフィアに相談すれば何かアイデア出してくれるかもしれない』って」


お兄様が原因だった!!

ラファエルにお願いって、もしかして……!!


「是非ソフィア王女にこちらに来ていただこうと」


ニッコリ笑って言われた。


「お断りしますわ」


こちらもニッコリ笑って返した。


「なんで!?」

「何故も何も、わたくしはこちらに花嫁修業も兼ねて来国しておりますので」

「いや、それは俺の傍に来てくれたら解決するよね? 俺の花嫁になるんだから」

「なりませんから行きません」

「え? さっきまで愛を語らい合ってたよね?」

「語らい合っていません。カイ様が勝手に盛り上がってはおりましたが」

「キスしたのに!」


してない!

っと叫びそうになった瞬間に、部屋の扉のロックが解除され、誰かが入ってきた。

とは言っても、ここに入れるのは私の他にあと2人だけ、だけど。


「………私の国で随分好き勝手されてますねカイ殿」


こ、怖い顔をしたラファエル様が、いらっしゃってくださいました…!

嬉しいような嬉しくないような…

い、いや、やっと来てくれたんだから助かったんだ。

嬉しいんでいいんだ。


「これはラファエル殿。ここはランドルフ国内でも、学園であり、身分は関係ありませんよね? どんな関係であれ、対等では?」

「………私の婚約者に何の用です?」

「私の国へお誘いを。ソフィア王女にご助力いただけないかと」

「………それで? 何故私に話を通さず、更に密室で2人きりになる必要があるのですか? 編入初日に問題行動を起こすなど」

「ソフィア王女に一目惚れしましてね。私と一緒になっていただきたくて」


ギィンッと金属がぶつかり合う音がした。

2人の王子が剣を交えていた。

男の方は私から奪ったナイフだけれど…

………って!

その剣どっから出てきたの!?

ラファエル手ぶらだったよね!?

ラファエルの後ろには影’sがいて、その内の1人、影一ガーネが剣の鞘を持っていた。

余計なことを!!

非難の目を向けると、影’sは一斉に首を横に振った。

………イケメン達が涙目になっている。

あ、これ……ラファエルが脅したやつだ…

ご、ごめんなさい…

影’s達が涙目になるって、ラファエルは何したの!?

よっぽどだよ!?


「ソフィア! こっちに!」

「あ…は、はい!!」

「何勝手に動いているの」


ラファエルの方に行こうとすれば、男に腕を掴まれて阻まれた。

ちょ、ちょっとっ!!

ラファエルからの殺気が怖いから!


「最初から穏便に事を進めるということが出来ないのか貴様」


あ……悪いラファエルさんが……!


「最初はそうしようと思っていたのだけれど、ソフィア王女が思っていた以上に可愛かったから、欲しくなってね」


やめて!!

ラファエルからの殺気が強くなってるから!!

ラファエルが来て助かるどころかピンチだよ!!

思わず涙が溢れてきて、男が怖いのかラファエルが怖いのか分からなくなっていく。

………はっ!!


『ふ、風精霊フウ!! 私を風で覆ってカイ王子から守って!!』


心の中で風精霊フウに願えば私は風に囲まれ、男の手から解放された。

ラファエルに意識が向いていたおかげでなんとか逃げ出せて、更にラファエルの元に戻れたのだった。


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