表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/740

第42話 どうやら私のせいだったようです




暫く息を整えていたラファエルは、ゆっくりと顔を上げて私を見上げてきた。

………どうでも良いんですが、どさくさに紛れて私の胸元で休むの、止めてくれませんか……


「もう怒ってないか?」

「………へ?」


私が、ラファエルに怒る?

………ぁぁ……

確かに一瞬怒ってたな……

後は寂しかったんだけど。

あの時、話をしないでラファエルを追い出したんだった。


「ソフィアが王女だからとか、関係ないとか思ってないからね!」

「は、はい…?」

「大体、甘味のアイデアはソフィアが出してくれたんじゃないか! こんなに当たるとは思ってもみなかったけど!」

「そ、それはラファエルの案でしょう? 甘味も、売り方も」


私には、テイラー国の人間に鞄を作らせるとか、考えつかなかったし。

貴族用と平民用で分けることも。

それに元々甘味だってラファエルが作ったんじゃないか。

私のアイデアは何処にもない。


「売り方はそう難しいことじゃなかったよ。強欲な人間を身近で見ていたからね」


それは王や兄たちのことだろう。


「テイラー国の人間が作る鞄の相場も調べ、甘味の種類もランク付けし、でも一定の金額で販売だからそれこそハズレもある。ハズレを多めに作っているから苦情来るかと思えば、次の日から使用人増やして手に入れようとする貴族で溢れた」

「………」

「一人一つ、だからね。それが希少価値を上げるんだろうな」

「成る程……」


つくづく貴族は湯水のようにお金使うよね……


「鞄と甘味代。結構高額にしても問題なく買っていくよ」

「………」


悪い顔をしてらっしゃいます…

これはあれだな……

ぼったくってると気づかれないような金額付けしてるわね…


「………あ、そうだ。材料となる食材は定期的に手に入れられるの?」


これを聞くの忘れてた。


「それは大丈夫。ここは食材の宝庫の国だよ。それに俺が作っている甘味は平民でも手に入れられるのが殆ど。更に一人一つ二つと制限することで一日に仕入れる量を調整。影響ないよ」


ホッとすると同時に、平民が食す材料だとは貴族には知られないようにしないと、と思った……


「………で、もう怒ってない?」


………あ……

最初に返事してなかった。

不安そうな顔で見上げてくるラファエル。

………可愛いから!!

止めてくれる!?


「お、怒ってないよ最初から」

「じゃあ何で俺を追い出したの」

「………そ、それは……」


視線を反らすとラファエルがその方向へ顔を出してくる。

逆方向に向けるとそっちに移動してくる。

どうあっても自分を視界に入れさせる気だ…


「ソフィア、俺はお前だけがパートナーだ」

「………え……」

「だから、聞きたいことがあるなら直接聞け」

「でも私が外出するぐらいなら答えた方が良いと言ったじゃない。外出しないように仕方なく教えようとしたんでしょ!? 王女の私が関わることじゃないって! 大人しく部屋に居ろって事でしょ!? 国のことに関わるなって! お金のことに関わるなって! 借金の事にも首突っ込むなってことでしょ!?」

「ち、違う! あの時はまだ隠しておきたかったんだ!」

「………“まだ”?」


首を傾げると、ラファエルが不意に立ち上がった。


「軌道に乗って、今あるサンチェス国への借金を半分ぐらい返済してから! 成功したと言って俺とソフィアのアイデアが上手くいったぞ、と! 俺頑張ったと! そしたらソフィアが惚れ直してくれるかもしれないだろ!! ソフィアから抱きついてきてくれるかもしれないだろ!! 好きだと言ってくれるかもしれないだろ!」


………

………………

………………………

そんな、意気込んで言う事じゃない……

そして私は抱きつけないよ。

は、恥ずかしいし……

そ、それに、好き……も言える気がしない……

じゃなくて!!


「不純な動機を声高々に言わないで欲しいんだけど!!」


これか!!

ライトが言いよどんだ理由は!!

そしてラファエル!!

離れてた間に性格変わったような気がするけど、気のせい!?


「ソフィアは俺が好きじゃない?」

「んな……!?」


カァッと赤くなるのが分かる。


「俺傷ついたな~……いきなり追い出されて」

「う……」

「遠くに捨てられたけど、急いで戻ったらソフィアいないし」

「……ぁ~…」

「王宮探してもいないし。街中走ったけどどこにもいない」


街中走ってきたのか。

それであの息切れ……

何だか申し訳ない……


「ご、ごめんなさい……」

「疲れたなぁ……」

「ごめん……」

「そんな俺にソフィアは何もない……」

「うぅ……」


そういうのって、催促だと思うんですけど……

けど言わなきゃ終わらない気がする……

でも……

傷ついたのは私の一緒だと……

言っても無駄な気もするけど…


「わ、私も傷ついたんだからね! ラファエルは何も手伝わせてくれないし!」

「だって、ソフィアに包丁持たせられないし」

「………ぇ」

「怪我されたら困るし。詰める作業だってソフィアにさせられないし。それは平民の仕事でしょ。交渉だって下の者がするし」

「………そ、そうだけど……」


改めて言わないでよ!!

何も出来ることがないって再確認させないで!!


「そんなソフィアも可愛いよね」


………なんでも可愛いで済ませようとしないで下さい……


「やっぱり待てないや」

「え!?」


ギュッとラファエルが私を抱きしめてくる。


「久しぶりのソフィア。堪能させてね」


そのまま私はラファエルに抱きしめられたままで一日を過ごした。

何をやっても離れてくれず……

でも、ラファエルとは仲直りできたようです。

これで、よかった、のかな……?

なんだか曖昧なまま仲直りしてしまったような……

………まぁ、いいか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ