第419話 多すぎませんか?
ラファエルが私が考えた王宮人事案を調整するために、先に学園に行ってくれと私は送り出された。
私の周りは影’sが固めてくれているから、危険はないだろう。
………うん。
やっぱり護衛がいると心強いよね。
鬱陶しいと思っている普段の護衛――まぁ主にアルバートなんだけど、騎士が囲んでいるよりかは断然こちらの方が過ごしやすい。
だから、ちょっとだけ、ちょっとだけだよ!?
安心してたんだよ。
トラブルないだろうって!
………なのに……
「ああ、なんて素敵で、綺麗な人なんだ。是非結婚を前提にお付き合いして下さい!」
………何でこんな事になったのだろう。
私は何故学園の入り口で、美男子に手を取られ、跪かれ、告られているのだろうか。
彼はサラサラ金髪のイケメンだ。
ラファエルと優劣付けがたく……
ってそうじゃないわよ!!
なんで私がイケメンに跪かれて、告られてるかって事よ!!
心臓が煩いのは、恥ずかしいとか嬉しいとかじゃない!
気味が悪い!!
言っちゃなんだけど、私は16年間、前世含めて32年間告られた事なんてないんだから!!
ロード?
あれは愛の告白なんかじゃない!!
あれは回数に入れない!!
この人何か企んでるでしょう!?
私を素敵とか綺麗だなんて、目が可笑しい人だから!!
他にこの学園には綺麗なことか可愛い子いるから!!
「が、影一! 影五!!」
困って後ろを振り向くが、何故か5人ともがその場に跪いているじゃないですか!
なんでよ!?
助けてよ!!
「申し遅れました。私はメンセー国第3王子、カイ・メンセーと申します」
………あ、これ絶対従者が助けられないやつだ。
目眩がした。
こ、この学園、他国王族受け入れすぎだと思う!!
私含め、現在3カ国の王族を同時期に受け入れるなんて本来ありえないし!
またまたラファエルかルイスは私に大事なこと隠して!!
「………わたくしは――」
「ああ、これは運命だ。他国で嫁を探してこいと送り出され――」
「い、いや、あの……」
「手始めと言われ送り出されたこのランドルフ国で――」
「ですから……」
「こんな素敵な女性と出会えるなんて!」
………聞けよ!!
なんだこの王子!!
「今日から初登校だったんです! そして貴女のような素敵な女性に出会えた! これは運命だ!」
「………わたくし、運命、という言葉はあまり好きでは……」
「はぁ……長旅をしてきたかいがありました! さっそく我が国に来ていただき、誓いを立てましょう!」
うっとりした顔で思いに耽っているところ悪いんですがね…
人の話を聞かない王子はどうかと思うんですよね。
でも、私、突っ込んでいいの…?
他国王子に対して無礼をしていいの……?
ラファエルに影響は……ランドルフ国には…
「ああ、でも心の準備が出来ていませんよね! 私としたことがすみません気付かなくて! 勿論、私もここで学ばなければいけないことがありますし、ラファエル様や王にお目通りが叶うまでいなければいけませんし、ああ、同時進行で花嫁衣装を作らなければなりませんよね! 我が国が誇る絹や綿で作られた最高級品の着心地良いドレスを作りましょう!」
それは止めてーー!!
突っ込みたかったけれど、ラファエルがいない場でどういう対応をすればいいか分からない。
聞いておけば良かった。
カイヨウ国王女とは違い、悪意でなく好意を向けてくれている相手に対して、わざわざ喧嘩を売るような行為は出来ない。
影’sも戸惑い、間に入れない。
お兄様の護衛で、彼の顔は知っていたのだろう。
だから、最初から跪いて…
基本、ここでは身分関係なしで接せるけれども、ここはまだ学園内部ではないし、彼自身も言った通り、今日から登校なのだろう。
他の生徒達は戸惑いながらも、彼の自己紹介を聞いて次々と膝をついていく。
ど、どうすればいいのラファエルー!!
っていうか生徒達よ!
何故私の時は跪かなかった!?
この差に涙したいよ!!
「さぁエスコートさせて下さい」
「ぁ……」
有無を言わさず腰を抱かれ、私は校舎内へ入らされた。
慌てて影’sが追いかけてくる。
「………あまり騒がない方が、というか抵抗しない方が良いですよ。サンチェス国王女ソフィア様」
「――っ」
耳元で囁かれた言葉に、ゾクッと全身に悪寒が走った。
この人――私のこと知って……!
「貴女は聡明な方だ。どうすればいいかなんて、言わずとも分かりますよね?」
腰を抱いていた手が怪しく動く。
ぞわっと全身に鳥肌が立つ。
「や、めてくださ……」
「………震えてる? 可愛いな。大人しくしてたら、悪いようにはしないよ」
いつの間にか王族専用の扉の前に立たされ、扉を開けさせられ、影’sが入ってくる前に扉を閉められた。
もう校内の把握をしているのも、ある意味怖い。
ドンッと壁に押しつけられ、退路を断たれた。
サッと血の気が引いていく。
「精霊にも手出しはさせないでね。それにこう見えて、俺、レオポルドと親しい友人なんだ。友人を実の妹が傷つけたと知ったらどうするかな?」
ニッコリと微笑まれ、指示しようとした私を止められた。
な、んで……この人が精霊のことを……?
この人は……次期……王だという、の…?
「初日から接触できるとは思ってなかったけれど、ラファエル・ランドルフと共にいなかったのは幸運だな」
スルリと太ももに触れられ、嫌悪感が半端ない。
足の間に彼の膝を入れられているから動けないっ。
部屋に入る前に全速力で逃げるんだった!
「………やっぱりあるね」
「っ……」
隠し持っていたナイフをいとも簡単に取り上げられた。
ギリッと歯を食いしばり、睨みつける。
「お願いがあるんだよね」
「………」
「言うことを聞いてくれれば、君にもラファエル・ランドルフにも手は出さない。協力、してくれるよね?」
ピタッと私から奪ったナイフが首筋に当てられた。
やっぱり裏があったっ!
私を口説くなんて可笑しいと思ってたのよ!!
っていうかなんで王族ってこう行動が早いのよ!!
もっとこう、信頼関係を築いてから裏切る、って事を普通はするでしょう!?
私は彼を睨みながら、ラファエルか影’sが助けてくれる時間を稼ぐため、口を開いた。




