第418話 バレました
「「ただいま戻りました」」
「おかえり」
私は手元に視線を落としたまま、帰ってきた2人に声をかけた。
これはこっちで……これはあっち……っと。
「出来た!」
「………何をなさっておいでですか?」
手元が暗くなり、顔を上げるとソフィーが覗き込んでいた。
ヒューバートも不思議そうな顔で見ている。
私は重ねてある紙の山から、1枚の書類を手に取った。
「ソフィーのいない間に本性を現した者達の解雇と、ラファエルに進言する全員の配置変え案のリストを作ったの」
「………ああ、やはり出ましたか……」
「出たねぇ」
クスクス笑う。
厳しい監視者がいなければ、相手も油断するしねぇ。
「………で、姫様は何処でその情報を?」
「精霊からだけど?」
ソフィーを見上げ、ニッコリ笑う。
じーっと見られ、不意にソフィーは壁に並んでいるオーフェス達に視線を向けた。
瞬時に1人、アルバートが視線を反らした。
オーフェスとジェラルドは普通だ。
………おおい。
アルバート、ちゃんと誤魔化せるようになれ。
「………姫様」
「精霊からだよ」
「………ご自分でいかれましたね?」
「まさか」
「………ならそこの侍女服は何ですか」
ソフィーが指差した先には、トルソーに着せられている侍女服が。
「フィーアかアマリリスのじゃない?」
「体格違いますよね!? 明らかに姫様の為に作られているものですよね!?」
「そんなすぐに出来るわけないでしょう? 洗濯物だよきっと」
「侍女が主の部屋に洗濯物を干さないですよ!!」
「飾りじゃない?」
「苦しい言い訳しないで下さい!!」
「………チッ」
アルバートとフィーアのせいでバレたじゃん。
フィーアは絶対わざとだろうけど。
クローゼットに隠しておいてよ。
「取りあえず把握するために書類をわたくしにも見せて下さい」
「勿論。ヒューバートは、騎士の方お願いできる?」
「………騎士、ですか?」
「そう。王宮内を見回っていたとき気になった者達の配置変え案もあるの」
「………私で良いんですか?」
「一応ね。ヒューバートはオーフェス達より騎士歴長いから」
「分かりました」
「2人共着替えておいで」
2人が頭を下げ、それぞれ出て行った。
その間にアルバートを説教だ。
「………アルバート」
「なんだ?」
「貴方が視線を反らしたせいで、バレちゃったじゃない」
「俺のせいか!?」
「当たり前でしょ。ソフィーの疑惑のきっかけになったんだよ。私の騎士ならちゃんと繕えるようになりなさい。公爵家に入るんだし。腹芸も出来なきゃフィーアと別れさせて男爵令嬢に突き出す」
「止めてくれ!!」
真っ青になって首を振るアルバート。
どっちみち、訓練させなきゃな…
「跡を継がなくて、跡取りだけ作れば良いってものじゃないのよ? 公式の場では公爵家の一員として出るんだからね」
「聞いてねぇよ!?」
「「「当たり前でしょ(だろ)!」」」
私だけでなく、オーフェスとジェラルドにまで突っ込まれる。
………ああ、2人も公爵家だもんね。
ちょうどいいや。
空き時間は2人に教育してもらおう。
「オーフェス、ジェラルド、頼んだ」
「「了解」」
「は!? な、何がだ!?」
分かってないのは本人だけ。
そうこうしていると、ソフィーとヒューバートが戻ってくる。
それぞれが書類を手に取り、確認していく。
「あ、ソフィー」
「………はい」
「王宮内の人事が落ち着いたら、そろそろ動かないといけないかも」
「………そうですね。今の状態でも、精霊の協力があれば何とかなるでしょうが、やはり人の手で大半はやりたいですからね…」
「なるべく早く、よろしくね」
「はい」
ソフィーとヒューバートに確認してもらった書類に特に問題なく、私はそれをラファエルに見せるためにオーフェスにお使いを頼んだのだった。




