第411話 何の用だろう?
授業では問題なくついていけた。
ラファエルに教えてもらったおかげか、ついていけなくて落ち込むことはなかった。
ユーリア・カイヨウはあれから大人しくしている。
何度もラファエルの顔色を窺っているようだけれど。
あれからすぐにラファエルがカイヨウ国に文書を送ってしまっているから、もう彼女がこれから何をしようが、評価が良くなることはないけれど。
「ソフィア様」
教室で帰る準備をしていると、マーガレットが近づいてきた。
「マーガレット嬢。そういえば今日初めてですね」
「ようやくお話が出来る時間が出来て嬉しいです。お身体は大丈夫そうで、良かったです」
「ありがとうございます。ご心配をおかけしました」
「いえ、わたくしが勝手に心配していただけですから」
マーガレットが私を気にかけてくれることは、純粋に嬉しい。
「あ、あの……少し静かなところでお話させていただいても……?」
「ラファエル様もご一緒でもよろしければ」
「勿論です!」
暫くは1人にならないようにと言われている。
朝はラファエルが教師に呼ばれたから、仕方なく先に教室へ行ったけれど。
スティーヴンも交え、4人で教室を移動した。
王族しか入れない所の一室。
椅子に腰掛け、マーガレットを見る。
彼女は何処か緊張している。
「マーガレット嬢?」
「あ、す、すみません。……無理だとは思っているのですが…」
言い淀むマーガレットに首を傾げる。
無理って何がだろうか。
「あ、兄に……ヒューバート・ガルシアとソフィー様に会わせていただけませんか!?」
顔を赤くしてマーガレットはそう言った。
………あれかな?
ヒューバートからマーガレットにか、父親経由で婚約のことが伝わったのだろう。
………随分時間かかったのね…
「ソフィア、2人の非番は?」
「………重なる日は当分先かな。ソフィーも忙しくなってるから」
「そうか……」
ラファエルが考え込む。
王宮に来るには入宮許可が要るし、休憩中に会うとしても時間が足りないよね…
「あの、近々ヒューバート義兄上――ヒューバートは、ガルシア公爵家へ足を向けることになると思うのですが…」
スティーヴンが怖ず怖ずと言う。
え?
そんな予定あったっけ……?
「………ああ、ミルンクとコッコの飼育作業監査に何名か派遣する件か?」
「はい」
「あれは私の部下を行かせるんだよ。ヒューバートはソフィア専属騎士だから、ソフィアから離れないよ」
「ぁ、そうなんですか…」
へぇ、そんなのあるんだ…
………私も行きたいって言ったら、流石に怒られるよね……
「でしたら、その任務にヒューバートを付けられませんか? ソフィーも同行させます」
「………でもそうすると、ソフィアの護衛が……それに筆頭侍女の仕事が止まるでしょ?」
「そんな切羽詰まってピリピリしているわけでもありませんし、わたくしの護衛は他にいます。ソフィーの仕事も溜まっているわけではございませんし、代行を用意すればいい話です」
「そう?」
「はい。大丈夫です」
「なら、手配するよ。マーガレット嬢もスティーヴン殿もそれでいい?」
「「あ、ありがとうございます!」」
2人は頭を下げた。
………でも、一体2人に何の用なのだろうか。
私は2人に見られてない間、首を傾げた。




