第410話 上手くいきません
私がランドルフ学園に来てから、唯一受けられてなかった授業に今日から参加する。
着替えてその場所へラファエルと共に向かった。
ローズとも一緒に行こうとしたら、
『馬に蹴られたくないですわ』
と、良い笑顔で言われてしまった。
先に行っていると、さっさと行ってしまった。
「ソフィアはやったことあるの?」
「ありませんわ」
「じゃあ、私が教えてあげるよ。最初は一緒に乗ろう」
「………それ、よろしいんですか?」
集合場所に到着。
独特の臭いがする、馬の放牧場に。
こっちの体育は乗馬などのお上品な貴族の遊びのことで、身体を激しく動かすスポーツと言えない。
「私にダメと言える教師はいないよ」
ニッコリと笑って言われました。
………ダメじゃん!?
それ、許可されてないって事だよね!?
私の感情などお構いなしに、ラファエルは馬に鞍をつけはじめる。
身体が大きい馬に、しっかりと2人用のを。
………あれ?
2人用があるなら、許容されているの……?
首を傾げると視界に鞍の紋章が目に入った。
目立つところではなかったのだけれど…
………ランドルフ国紋……
つまり、ラファエルの私物ってことかもしれない…
ちらりと視界に入った教師の目は……あ、死んでる。
ラファエルに何も言えないって顔だ。
………すみません…
心の中で謝る。
やっぱり私も初めて馬に乗るから、ラファエルと一緒で心強いから、反対できないんです…
他の生徒は教師や、乗馬に詳しい生徒から初心者への鞍付け講義が開始されている。
「ソフィア。見てる?」
「………え?」
「付け方知らなかったら、次は1人で出来ないよ。まぁ、教えるけどね」
ハッとして私はラファエルの所へ早足で向かう。
元々走っちゃダメだけど、馬を驚かさないように。
それだけは分かる。
ラファエルの手元を覗き込み、付け方を覚える。
流れだけは分かったけれど、次も自分で付けられる自信はない。
「さぁ、乗ってみようソフィア」
「え……ですが……」
教師の合図を待たなくていいのだろうか…
そう思って顔を向けると…
………うん。
貴族らはもうすでに馬に乗って、思い思いに過ごしている。
教師はもう完全に見物モードだった。
………いいのかそれで。
「ソフィア」
「は、はい…」
怖くはないが緊張する。
ドキドキしながらラファエルが差し出している手に自分のを乗せる。
「ここ持って」
ラファエルは私が重ねた手を鞍の突起部分に誘導する。
握ると次は足をかけるように言われ、その通りにする。
「一気に身体を乗せるように、力強く地を蹴ってね。弱くても強すぎても失敗して馬が驚くから」
………初心者に難しいこと言わないで下さい!!
「俺も手伝うから」
「は、はい……」
………手伝うって……
疑問に思いながら私は勢いよく地を蹴った。
同時にお尻に何かが触れ、力強く押された。
………どういう事ですか!!
セクハラで訴えるよ!?
無事に1発で馬に乗れたのだけれど、私は顔を真っ赤にしながらラファエルを睨む。
ラファエルはいつも通りだ。
「押し上げるのはそこしかなかったんだし、やらしい思いは一切ないよ」
そうですけれども!!
何も言えないですけれども!!
恥ずかしいものは恥ずかしいんです!!
「よっ…」
ラファエルは身軽に私の後ろに座った。
やっぱり慣れてるな…
「ソフィア様」
周りに影’sが集まってくる。
慣れた風に馬に乗って。
………くっ…!
当たり前だけれど、私だけ1人で颯爽と乗れないのが、悔しいっ!!
絶対乗りこなしてやるっ!!
と、悔しいながらも顔には出さず、集まってきた者達に微笑む。
「 ……って…貴方達のお名前、どうすれば……」
私は彼らの名前を呼ぼうとして、名乗られなかったのを思い出した。
「我らの名前は1つだけですよソフィア様」
………あ、そこはいいんだ…
「我らが周りを固めますので、気軽にどうぞ」
「私はソフィアを落としたりすると思う?」
「あり得ませんが、不測の事態もございますので。ご容赦を」
影一の言うとおりのことがないとは限らない。
ラファエルも渋々頷いた。
「さ、ソフィア。手綱を握って――」
私はラファエルに教えてもらいながら、体育の授業を過ごした。




