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第41話 絡繰りはまだありました




「私は誰にも口外しておりません」


店から受け取ったお金を、王宮の私専用の宝物庫に入れて戻ってきたライトとカゲロウ。

そしてライトの開口一番が冒頭の言葉。


「………何も言ってないけど」

「目は口ほどに物を言う、でしたっけ?」

「………ぁぁ、言ったような言わなかったような…」


ライトの口からことわざ出るなんてビックリして一瞬固まってしまった。

私、無意識に言葉出てるらしいから、何処かで言ったのかもしれないから、言ったことがないなんて断言できない。


「まぁ、でも……ライトの口の堅さは信頼してるよ」


主を馬鹿にするけど。

本当に口外してはいけないことは言わない。

私にさえ言ってこないからね。


「ライトじゃないとすると、知らないところで動いてたんだと思うよ。ラファエルが」


レオポルドは最初から私の店は知っている。

でも、レオポルドはあの時何故店が繁盛しているのか疑問視していたことを思い出す。

レオポルドからラファエルに情報が行ったとは考えにくいだろう。

そして――サンチェス国の人間が、テイラー国の人間を連れてこられるはずはない。

従って、ラファエルだけが動いた結果だと推測される。


「………しかし、王宮から出たことはないはずですが」

「ラファエルは、でしょ?」


私が言うと、ハッとするライト。


「自分と同じ職の人間が他にもいるんだから、ちゃんとそのことも考えなさいよ? 私の頭脳かげは優秀なはずでしょ」

「………はい」


ライトの沈黙が、私には違和感以外に感じられなかった。

………ぁぁ、成る程。

少し考えて、ライトの表情の意味が分かった。


「………ライト、お腹減ってる?」


目を見開いて私を見てくるライト。


「減ってるー!」


それに答えるのはカゲロウ。


「じゃあカゲロウはテイラー国に行ってきてくれる?」

「いいよ~! 何するの?」

「テイラー国の人間を引っ張って来れたって事は、ラファエルの政策が機械提供の他に何かやってるかもしれない。探ってきて」

「はぁい!」


カゲロウが姿を消した。


「ライトはどうする?」

「………やります」

「そ。じゃあ、甘味店の状況を探ってきて。どういう売り方をしているのか、従業員は何人いるのか。利益は。材料の調達方法は」

「それは――」


常に真っ直ぐ見てくるライトの視線が泳ぐ。

………やっぱりね……


「喋る? 喋らない?」

「………」

「別に喋らなくたって罰しないわよ」


ライトは知ってる。

私が知りたいことを。

まぁ、ラファエルにライトを常に付かせているのは私の指示だしね。

なんで今まで気づかなかったかな。

よっぽど無力な私に酔ってたのかしら。

私らしくない。


「………婚約者様から直接お聞きになった方が宜しいかと」


ライトが食事ほうしゅうより、ラファエルを――ラファエルの秘め事を優先したか。

ラファエルはいつの間に私の影を懐柔したのやら……


「分かった」


そう言って私はソファーに座ると、ライトはいつもの通り天井に――戻らなかった。


「まだ何かあるの?」

「………いえ…」


ライトは何かいいたそうな顔をしていたけれど、私は無視した。

影の仕事は無心で主の命令を聞くこと。

それが出来ないような出来事でもあったのだろうか。

ラファエルとの間で。

………まったく……

私の影になんてことしてくれるのよ……ラファエルは……

ジッとライトが私を見続けてる。


「………別に怒ってないわよ? いつも通りしてくれないと調子狂う」

「………はい」


漸くライトは天井に戻った。

ふぅっと息を吐き出す。

蚊帳の外って、ホント………寂しいね。

私だけ何も知らないって。

そんな事を考えていると、バンッと部屋のドアが開かれた。

何事!?

ドアを見ると……


「はぁ……はぁ……や…やっと、見つけた………」


………ぜーハー言ってるラファエルがいました。

………えっと……何故息切れしてるのだろうか……


「ソフィア!!」

「は、はい?」

「あの店が出来る前にこの国の店の情報を影に探らせて、食べ物関係の店じゃない装飾品の店見つけたんだ! で、その店リメイクも受け付けてるっていう情報だったから、テイラー国からリメイクに興味ある人間を見つけ出してきて交渉してこっちに来てもらったんだ! で、俺の店で貴族用に販売する包装鞄を作ってもらって、使い捨てにならないようにその店で買い取ってもらえるようにして、鞄を循環させるようにしたんだ! で、肝心の甘味の売り方だけど、平民には貧相な袋に入れて経費削減し、一人二つまでに制限! 貴族には甘味一つで鞄一つにし、料金固定で売ってるんだ!!」

「………は、はぁ……」


一気にまくし立てられ、私は固まったままラファエルを見続けるしかなかった。

どっちみち私が座っているソファーに、正面から私を逃がさぬように両側からラファエルが背もたれに手をついているから動けないんだけど…


「しかも貴族も平民も、中身を見られないようにしている!」

「………へ?」

「何が入っているか分からないんだ! 最初から詰めた状態で封をして店頭に並べているから! で、貴族は鞄もしくは甘味目当てで買っていく! 平民は勿論甘味目当てだが。今作ってる甘味は全部で貴族用も平民用も30種類! どうやっても全部食べてみるには30日以上来ないと食べられない仕組みなんだ!!」

「な、成る程……」


そんな売り方しているなら、レジ要員は2人ずついれば回るし……

人員は最小限で良いな……

でも、最初から詰めているなら詰める要員は必要だし、大変な作業だろう。


「職人は追加で呼び寄せて20人になってるし、城下で職に困っている人間も呼び寄せて詰める作業をさせている!」

「そ、そう、なのね……」

「これで全部! 何か他に疑問は!?」

「あ、ありません……」


利益関係は聞かない方が良いだろう……

レオポルドに早々に返済したと聞いた時点で、それだけの利益以上出ていると分かっているから。


「………はぁ……」


グッタリとラファエルが私に寄りかかってくる。

何故こんなになっているのか、私には分からなかった。


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