表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/740

第408話 2人目の




「お待ち下さい!!」


まだ追ってきた…

ユーリア・カイヨウがラファエルに手ひどく言われたのにも関わらず、諦めずに来る。

周りの野次馬も、眉を潜めヒソヒソ囁く。

この分なら、私の方がマシだと思ってくれるかしら…

なんて、他力本願的な思考は止め、改めてユーリア・カイヨウと対峙する。

ラファエルが何か言おうとしたのを止める。

そろそろ本気でラファエルがキレそうだ。

私はともかく、ラファエルがランドルフ国民の前で下手なことは出来ない。

さっきまでのラファエルの言葉に耳を貸さないなら、これ以上ラファエルの言葉は無意味だ。


「………しつこいですわよ。貴女は王女でしょう。これ以上ラファエル様に詰め寄ることは、外交問題に発展致しますよ」

「わたくしも言っているわ! 貴女と話しているのではないと!」

「いいえ。婚約者がいらっしゃる、ましてや他国王子に詰め寄るなど、誰にも許されることではありません。これ以上ラファエル様にご迷惑な行為をされるのであれば、正式に抗議致します」

「何故貴女にそんな事を言われなければなりませんの! 貴女もここではわたくしと同じ立場でしょう!」


………え?

こいつ何言ってんの?

………ごほん……失礼しました。

他国王女という立場では、確かに私は彼女と同じ立ち位置だろう。

けれど私はラファエルの婚約者で、同盟国のサンチェス国王女で、ランドルフ国の改国に大いに(多分)貢献している実績を持っている。

彼女と立場は天と地の差があるはずだ。


「ラファエル様の婚約者はわたくしです!」


………え?

本気でこいつ何言ってんの?

………ぁ……いや、もういいや…

口が悪いのはもうスルーしてもらおう。

………誰に言い訳してるのだろうか…


「モブ王女は黙ってなさい!」


………ぁ、はい。

ピンときました。

アマリリスよりバカだこいつ。

あ、ごめん。

こいつじゃなくて、この王女、だね。

婚約者と主張するなら、この王女は続編してる女だと分かる。

いらっしゃいませ、同じ転生者。

でもね。

ここはゲームじゃないんだよ。


「………貴様……」


あ……ヤバいよ。

ラファエルが本気でキレた。

後ろでぼそりと呟かれた言葉は、他国王女に対して使っていい言葉じゃないからね。

っていうか、王女も王女で、ちょっとは繕うことしなさいよ。

あっさり転生者だってバラしてどうするの。

略奪したくて正々堂々と対決するなら、受けて立つけれど。

でも一方的に、こっちとの会話を切って引っ込んでいろは可笑しいだろう。

現実いまは私が正式な婚約者なんですからね。

ラファエルは渡しません。


「ラファエル様」

「だってソフィア!」

「大丈夫ですから」


目付きが悪くなるラファエルを抑え、私は改めて王女を見る。


「王女としても、1人の女としても、今のお言葉は許容するには少々無理がありますわ」

「関係ないでしょ!」

「はい? 関係ないとは? わたくしは正式なラファエル・ランドルフ様の婚約者です。ランドルフ国とサンチェス国で正式な文書を交わしているのです。いくら貴女が否定されようともその事実は変わりありません」


本当に頭悪――ごほんっ。


「なによ偉そうに! そんなもの!!」

「そしてわたくしを侮辱することは、同時にラファエル様を侮辱していることに他ならないことは、当然ご存じの上で仰っているのですよね?」

「なんですって……? わたくしは貴女を!」

「婚約者を侮辱するということは、わたくしを選んだラファエル様をも侮辱するということ。貴方は今、ラファエル様を侮辱しているのですよ。サンチェス国王女などを選ぶラファエル様は頭が可笑しい、と」


私が言った途端、王女からではなく私の後ろから殺気が……

あ、ヤバい。

私も後から説教コースかもしれない…

ごめんなさい!

本気で頭可笑しいなんて思ってませんから!!


「………聞き捨てならないなソフィア。私は心底君に惚れてプロポーズして、婚約してもらったのに」


してもらった、を強調して言うラファエルの言葉は耳に入ったのか、王女が大きく目を見開いた。


「ソフィア以外何も要らない私は、確かに頭が可笑しくなってるのかもしれないかもね? ソフィアがいなくなるなら、私は国を捨てて命をも捨てるよ」


ラファエルの宣言は、王女だけでなく、野次馬も固まらせてしまった。

ラファエルがこの国からいなくなる。

後に残るのは…

野次馬が次々と焦ってラファエルに声をかけたそうにするが、ラファエルの許可がなければ喋れない。

………っていうか、私は別の意味で焦っていた。

ラファエルを怒らせてしまった、と。

どうやったら機嫌が直せるか、必死だった。

勿論、笑みはそのままですとも。


「ダメですわラファエル様。それではランドルフ国の皆様が困ってしまいます」

「困ればいいんじゃない? だって、ランドルフ国民はソフィアを虐めるんだし」


ラファエルが困ったように笑えば、野次馬達の顔色が悪くなっていく…

ああ……ラファエルが本気で怒って、本音がダダ漏れに…


「他国王女もソフィアに対しても私にも失礼だし。一緒に駆け落ちしない?」

「あら、面白そうですわね」


面白そうでついつられてしまうと、野次馬達がブルブルと首を横に振っている。

最近私の味方増えてるからね。

いなくならないでくれと、必死で首を振っている。

………あれ、頸椎捻挫とかにならないかな……と本気で心配してしまうぐらいに必死で振ってる…


「あら、わたくしったらつい。ダメですわよラファエル様」

「………ダメ?」

「ダメですわ。放って置いても大丈夫、ぐらいにならなくては。それに、駆け落ちでは落ち着いて眠れないではないですか。どうせ国を出るのでしたら、新婚旅行で行きたいですわ」

「いいね。何処でも連れて行ってあげるよ」

「ありがとうございます」


ラファエルの機嫌が直った。

同時に野次馬達がホッとし、中にはその場に崩れ落ちる者まで。

………そんなに……?

苦笑しそうになるけれど、笑顔は崩せない。


「カイヨウ国王女。ソフィアを侮辱し、他国での傍若無人。正式に抗議させてもらう」


呆然とラファエルの言葉を聞いていたユーリア・カイヨウは、ハッとして顔を真っ青にさせた。


「お、お待ち下さい!!」

「散々チャンスはあげてた。それでも聞かなかった。自業自得でしょ」


ラファエルは冷たく言い放ち、私を連れてその場を今度こそ立ち去った。

ユーリア・カイヨウはその場に崩れ落ちていた。

………どうでもいいけれど、まともな転生者が見たい、と思った私は悪くないはずだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ