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第407話 イラつく女 ―R side―




教師との打ち合わせが終わり、学園内を歩いている時だった。


「ラファエル様」

「………君は…」


前から歩いてきた女。

確かカイヨウ国の…


「ユーリア・カイヨウですわラファエル様」

「そうだったね。何か用?」

「大丈夫ですか? 暫く学園へいらっしゃらなかったので、心配致しました。お仕事がお忙しいのですか?」


………イラッとした。

俺に聞くことではないだろう。

それにこの女もソフィアが毒に倒れたことを知っているはずだ。

なのにソフィアの事など頭にないのだろう。

それが1番、俺が嫌悪することを知らないのか。


「仕事云々は、君に関係ないよね?」

「え……」

「ランドルフ国のことはランドルフの問題で、君に聞かれることは筋違いだと思うけど?」


俺にこういう返しをされるとは思っていなかったのだろう。

彼女は目を見開いた。


「で、ですが、わたくしはラファエル様が心配で……」

「心配される謂われはないね。君は私的来国の留学生。カイヨウ国から正式にランドルフ国来賓として申請されていない。学園内で学園のことを聞くのはいいけれど、ランドルフ国や俺の仕事に首を突っ込むことは、例え正式来賓でも許されることじゃない」

「っ…」


冷ややかに見ると、彼女が口を噤む。

はぁ……

面倒くさい。

キッパリと突き放してしまいたいけれど、彼女は他国王女。

蔑ろに出来ないのが辛いところだ。


「で、ですが、サンチェス国王女はランドルフ国の事に口を出しているそうではないですか! でしたらわたくしも!」

「は?」

「っ!?」


あ、ヤバい。

つい凄んでしまった。


「君がソフィアと同格だと? そんなはずないはずだけど? ソフィアは俺の婚約者で将来ランドルフ国の国母になる王女だ」


話していると、徐々に野次馬が集まってくる。

ああ…これはまた噂になるな、と何処か他人事だった。


「ソフィアがいたからこそランドルフ国は立ち直ってきている。ソフィアの能力は計り知れない。そんなソフィアと同格だと?」

「わ、わたくしもご協力できることがあるはずですわ!」

「ランドルフ国とカイヨウ国は同盟を結んでいない。そんな状態で君がランドルフ国で何かをすると、国同士の問題になる自覚はあるのかな?」

「ぇ……」


目を見開く女は、やはり気付いていなかった。

………これだから国政の教育がない王女は困るんだ。

自分勝手に好き勝手に動く。

ソフィアみたいに知識でもあれば…


「この学園内のことで自由に動くことに、私は関与しないよ。問題さえ起こさなければね」

「………」

「けれど、それ以上のことにまで干渉するのなら、強制送還させてもらうよ」

「そ、そんな……」


涙目になる女に何の感情もわかない。


「それに君は、ランドルフ国学園のことを知りたくて、お父上が反対するのを押し切って、ここに来たんだろう。なのに、何故ランドルフ国の国政にも踏み込んでこようとする」

「っ……」

「嘘をついて来たのなら、カイヨウ国に正式な抗議文を送らせてもらうよ」

「そ、そんなっ!?」

「当然でしょ。犯罪でも犯されたら困るからね。他国で問題を起こしたらどうなるかなんて、王族なら知っているよね」

「え……」


………こいつも、ダメ貴族と同類かよ。

なんでそこで驚かれなきゃいけないんだよ。


「共通規約の中に当然その項目はございますよ」


突然女の後ろから知った声が聞こえてくる。


「あ、ソフィア」


教室にいると思っていたソフィアが歩いてくる。


「ラファエル様が遅れているようでしたので、様子を見に行こうと思っていたのですが、親切な方々がラファエル様がお困りだと呼びに来てくれまして、こちらにいらっしゃると聞きましたので」

「そう。ごめんね。ちょっと足止めされちゃって」


スッと女の隣を通り、ソフィアの元へ行こうとする。

すると腕を掴まれた。


「お、お待ち下さいラファエル様!」


俺が眉を潜めるのと、ソフィアの目付きが鋭くなるのは同時だった。


「ユーリアカイヨウ国王女。今すぐラファエル様の腕から手をお離し下さい」

「貴女は黙ってらして! わたくしが今ラファエル様とお話しておりましたのよ!」


は?

なんでソフィアに命令してるわけ?

バッと俺は女の腕を振り払った。


「………触るな」

「え……」

「私に触れていいのは、婚約者であるソフィアだけだ」


冷たく言い放ち、俺はソフィアの腰を抱く。


「これ以上私やソフィアに対してあるまじき行為を行うと、すぐに強制的にカイヨウ国に帰国してもらうよ」

「ら、ラファエル様……」


泣きそうになっても、俺は何も感じないよ。

泣き落としなど効かない。


「行こうソフィア」

「はい」


俺はソフィアと共にその場を去った。

………まだ、諦めないだろうね。

ため息をつきたいが人目があるため、心の中でため息をついた。


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