第404話 一緒に散歩しながら
王宮の雰囲気が変わった。
侍女を精霊と入れ替え、王宮内を散歩していると、所々で変化が起きていた。
通路には色とりどりの花が飾られていたり、濁っていたガラス窓もピカピカだ。
「………気持ちがいいわね」
「そうだね」
………何故か今日の散歩にラファエルがついてきているけれども。
仕事の空き時間が増え、こうして一緒に歩けている。
嬉しい変化だ。
「ラファエル今日も時間あるんだね」
「うん。楽させてもらってるよ。任せられる人材がいるとこれ程楽になるんだね」
………ワーカーホリックかと思うほどに、仕事人間だったしね…
「………実はラファエルって、サボり魔だよね」
「当たり前じゃないか」
………いや、胸を張ってそんな自慢げに言われても…
「俺はソフィアとデートの時間が一番大事なんだ」
良い笑顔で言うことじゃないよね?
これ、他の人に聞かれたらマズいよ…
特にルイスに…
「これで学園にも普通に通えるだろうし、ソフィアと放課後デートも出来るだろうし、普通に出かけられるだろうし」
嬉しそうに指折り数えているラファエルに、そんな事を言えるはずもなく…
「じゃあ、今度のデートは西がいいな」
「西?」
「ちゃんと出来てるか見たくない?」
首を傾げると、ラファエルは暫く考えてハッとする。
そして頷こうとして止まった。
………どうしたの?
「ダメじゃん」
「何が?」
「それじゃあ視察でデートじゃない」
………そうですね…
エイデン公爵の道整備具合を見たかったのだけれど。
「あ、ソフィアが言ってたお祭りの件だけどさ」
「え? あ、うん」
「日付決めて温泉街の店先に屋台を並べてやろうかってなってるんだけど。店先ならその店の従業員がそのまま屋台運営できるでしょ?」
「そうだね。その方が接客に慣れている人達がやれるから、混乱はないだろうけれど……それなら2日か3日続けた方が良いね」
「え? なんで?」
ラファエルが首を傾げるので、私は苦笑する。
お金は稼げるけれどね…
「その店の人はお祭り楽しめないじゃない」
「………ぁ」
「せっかくのお祭りなんだから、みんなが楽しめるお祭りにして欲しいな」
「そうだね。俺のソフィアはやっぱり可愛いな」
………へ!?
不意打ちの言葉にカァッと赤くなってしまうじゃない!!
「優しいし、可愛いし、愛しいし」
………ちょっと!?
こ、こんな所で何言ってるの!?
知らぬ顔をしてついてきている騎士達が気になりすぎる!!
「お祭りは3日間にしよう。そうすればソフィアとのデートの時間も堂々と確保できるしね」
ちゃ、ちゃっかりしている…
で、でもラファエルからの言葉責めからは開放されたようで、内心ホッとする。
「あ、そういえば空に浮かぶ花とやらは、出来そうなの?」
「………ぁ」
そ、そういえば提案しておいて、忘れてた!!
「………ソフィア?」
「ご、ごめんなさいラファエル……忘れてたわ……」
「そうなの? 珍しいねソフィアが忘れるなんて」
ええ……
なにせトラブルだらけでしたからね……
「ちゃ、ちゃんと間に合うように精霊と一緒に練習するわ」
「じゃあ、俺も一緒にする」
「え……」
「だってそれじゃあ精霊にソフィア取られちゃうでしょ」
………本当に、ぶれないラファエルさん、さすがです…
私は微笑みながら、内心感心していたのだった。




