第403話 役割は誰でもあります
「「「お前はバカか」」」
フィーアを送らせ、戻ってきたアルバートが珍しく沈んでいて…
どうしたと声をかければ、フィーアを泣かしたという。
一部始終説明させれば、私の騎士ら全員から突っ込まれていた。
………ジェラルドにも言われるとは。
「な、なんでだ!?」
「女心が分かっていない」
「いや、この場合、フィーアのプライドの問題ではないか?」
「とにかく、ソフィア様の世話だけ、って。お前そりゃないわ」
アルバートはこれだけ言われても首を傾げるだけ。
いやいや。
アルバートの頭でその言葉のみで納得しろという方が無茶だ。
「………フィーアの仕事はそれだけじゃないわよアルバート」
見かねて声をかけると、え……という顔を向けられる。
因みに私は今現在、ベッドから起き上がれない状態だ。
ラファエルに腰砕けにされたから。
まさかの2日連続で。
その事は突っ込まないでね!
「フィーアには薬物に関しての知識があるから、今後薬関係の勉強を更にしてもらって、新事業の一端を担ってもらおうと思ってるし」
「はぁ!?」
分析室の人にロードが作った薬の分析をしてもらっている。
それが終わったら、改良していい薬にしてもらおうと思っている。
その改良にフィーアも加われば、より薬の知識が得られると思う。
更に化粧品の開発して欲しいし。
薬草の使い方が勿体ないんだよね。
「もぅ……フィーアあんまり虐めないでよアルバート。私の侍女の役割をアルバートが決めるものじゃないでしょ」
「う……」
アルバートが言葉を詰まらせる。
「ソフィーにしたって、アマリリスにしたって、役割を決めるのは私。他者に指図される謂われはないわよ」
「………すまん…」
「勿論、貴方達騎士の役割を決めるのも私。私に無断で他者を責めることは許さないわよ」
そう言って私は不意にラファエルを見上げる。
「………そういえばラファエルも私の騎士勝手に使うよね」
私の言葉にニッコリ笑顔を返される。
「俺の騎士でもあるからね。ソフィアが絡んでいる件に関しては動かせるよ」
「………もぅ……」
ラファエルの言葉は間違ってはいないんだけれども…
ランドルフ国籍の騎士全員、ラファエルは命令できる権利がある。
「………今度から許可は取ってよ?」
「ソフィアが意識あるときは聞いてるでしょ?」
「うっ……」
今度は私が言葉を詰まらせる番になった。
「………姫様」
「どうしたのアマリリス」
「私の役割とは……?」
あ、そこ聞いちゃうんだ?
怒ると思うけど。
「アマリリスは料理だよ。新商品とかの開発をして欲しいから、厨房に入り浸ってもらう時間が増加するよ」
「………そ、れなら…大丈夫です」
………いいんだ?
ちょっと悩んでたみたいだけど…
「専属侍女から外されなければ」
………だからね?
アマリリスのその忠誠心は、何処から来ているのかな?
最初は敵だったし、嫌々だと思っていたのに。
「アマリリス」
「はい」
「和食食堂とか作ってよ」
「無理ですね」
即答されました。
「なんでよ!?」
「材料がありません」
………そうですね…
「姫様とラファエル様の分でしたら何とか出来るでしょうが、食堂と決められてしまいますと、その分材料が膨らみますからね。今もたまにしか出せてませんし…似たり寄ったりでしか出せていませんでしょう?」
「………はぁ……毎日食べたいよ…」
ポフッとクッションに顔を埋める。
「何年かかるか分かりませんが…取りあえず検討しますね」
見かねたアマリリスにそう言われ、苦笑する。
駄々こねる子供か私は。
何故かラファエルは私とアマリリスの言葉を聞いて、考え込んでいるけれど。
「よろしく。気長に待ってるよ」
「はい」
話が一段落したところで…
「とにかくアルバートは今後余計なこと言わない!」
「また来た!?」
「またって何よ! フィーア傷つけたら許さないわよ! 今度フィーア泣かせたら、あの男爵令嬢に返品するわよ!」
「言いません!!」
直立不動になるアルバート。
よっぽどあの令嬢の件が堪えているらしい。
………それかその後の仕置きが、かな?
私は苦笑して、そのままベッドの中で目を閉じたのだった。




